2008年12月

直向きに穏やかに  [2008年12月16日(火)]

 最近あることをきっかけに岡倉天心が英文で書いた『茶の本』 (原題はThe Book of Tea)の一部を読み直す気になりました。岡倉は「いつになったら西洋は東洋を理解するのか、あるいは理解しようとするのか。(略) インドの霊性は無知、中国の穏健さは愚鈍、日本人の愛国心は宿命論と嘲られた」と記して「大陸間で激しい言葉を浴びせ合うのはやめ、お互いが半球の半分ずつを手に入れることでより賢くはなくとも真剣になろうではないか。我々は異なる線の上を歩んで来たが、相互に補完することが望ましい。西洋は膨張するために安らぎを失った。東洋は攻撃に弱い調和を作り出した。西洋の人々は信じるだろうか―東洋がある点では西洋より優れていることを」と主張しました。厳然として揺るぎない東洋人の姿勢を天心に見ることができると思います。『茶の本』の刊行は1906年でした。因みに上記の引用箇所は私が和訳しました。
 岡倉天心が生きたころから今日までに東洋と西洋の間の理解がどの程度深まったかは容易に判断しかねますが、岡倉の書いたとおりだとすると今の日本には西洋的な人が増えているのではないかと感じます。ない袖は振れないと言います。粗暴で意図が不明な言動に走り他者に抑圧を加える人は実際には持っていない力を誇示しようと躍起になっているのかも知れません。
 私は26歳のときとある短期大学に専任講師として採用され40歳になるまでそちらにおりましたが、30歳そこそこのころ緩衝地帯という渾名を付けられていたようです。退職前の3年は全学に4人しかいない専攻主任のひとりでした。決して組織を運営する手腕に長けている訳ではないのに大過なく務められたのは、極力ほかの先生や職員の方のお気持ちを尊重して学生からも学ぼうとしたからではないでしょうか。国際化する社会でときに文化的衝撃の緩和が必要なように、小規模な人間関係においても和みの空間を作ろうとする者がいなくてはならないのだろうかなどと考えながら、直向きに努力する一方で周囲の方々とは穏やかに接して教えを受けるよう心掛けたいと願う昨今です。

森本 真一

学科教員自己紹介 第9弾!!  [2008年12月03日(水)]

はじめまして
国際協力と国際社会関連の科目を担当する予定の米倉雪子です。

大学を卒業して一度、就職したものの、
どうしても国際協力の仕事がしたくて、
イギリスのサセックス大学の開発研究所(IDS)に留学しました。
大学は、ロンドンから南下すると行き当る海岸の近くにあり、海峡を越えればフランス。
アフリカやアジアだけでなく、ヨーロッパ、アメリカ、中南米から
学生や研究者が集まり、講義だけでなく、いろいろなセミナーや研修が開かれていました。
毎日のように開かれる国際機関や他大学からの訪問者によるランチ・セミナーに、
各人、お弁当を持って気軽に参加し、
自分が関心のある分野の先生や研究者、国際機関やNGOワーカーと
直接、知り合い、それぞれの研究や実践について話し合えるのです。
学生も20代から50代、既に国連機関やNGOの現場で働いた人もいました。
先生方も、大学 ⇄ 国際機関 ⇄ NGOと行き来して、
国際協力について教え、研究し、実践しているので、
年齢も経験も関係なく、学びあい議論できる自由で開かれた雰囲気でした。

この経験は、大学院を終え、国際NGOに勤めたり、
カンボジアで国際協力の活動をした時、非常に役に立ちました。
カンボジアはインドシナ半島のベトナムとタイの間にあり、
中国、ベトナム、タイなど人が移住して代々、住んでいて、
元フランス植民地ですので、年配の人はフランス語が話せますし、
多文化が混在し、共存しています。
ある時、お父さんが中国から移住してきたカンボジア人と、
私達NGOが支援する職業訓練校の仕事で知り合いました。
その人は一生懸命働いて成功した実業家で億万長者でした。
彼は中国語とカンボジア語が話せました。
ある日、彼の家族が「カンボジア人は、内戦後の苦しい時に、
日本からいただいたご支援は忘れません。」と言って
「忘恩不義」と紙に書きました。
彼の家族は、中国のルーツを大事にしながらも、
カンボジアに根付き、内戦を乗り越えてきたのです。
彼はビジネスマン、私達はNGOで、
バックグラウンドも仕事の内容も違うのですが、
お互いについて理解を深め、尊重し合いながら話し合い、
最後は職業訓練校の存続を確保することができました。

これから、国際協力の活動に限らず、国内でも海外でも、
異なる国や文化の人々と知り合い、学び合い、協力して仕事をし、
生活する機会が、多くなると思います。
将来、そのような機会を生かせるよう、学生と共に
学び、考え、力をつけていけたら良いと思います。

【写真:12月10日人権の日を祝うイベントでNGOリーダー達と(中央が筆者)】