【イベント】昭和女子大学でカルチュラル・スタディーズ学会の全国大会「Cultural Typhoon 2026」が開催されました

昭和女子大学でカルチュラル・スタディーズ学会の全国大会「Cultural Typhoon 2026」が開催されました✨

2026年9月26日(土)・27日(日)の2日間、昭和女子大学を会場に、カルチュラル・スタディーズ学会の全国大会「Cultural Typhoon 2026(カルチュラル・タイフーン2026)」が開催されました。本大会は昭和女子大学の後援を受けて開催され、文化や社会、歴史、ジェンダー、マイノリティなどをめぐる多様な研究発表や議論が行われました。

今大会のテーマは、「誰が語り、何が不可視化されてきたのか」です。

大会実行委員長は、本学国際学部国際学科の金泰植准教授が務め、現代教養学科の髙橋かおり先生も実行委員として大会の企画・運営に携わりました。

また金准教授自身も研究発表を行い、在日朝鮮人の歴史や記憶、文化表象をめぐる問題について報告しました。歴史的な出来事が、誰によって、どのような立場から語られるのかという問題を取り上げ、現代社会における歴史認識や表象のあり方について考察しました。

芸術や音楽を通じて、歴史と社会を問い直す

メインシンポジウム「語ること、語らないこと――在日コリアンのアートと映画をめぐって」では、現代美術家の李晶玉さんと映画『トロフィー』の孫明雅監督をお迎えし、映像や美術におけるマイノリティの表象、歴史や経験を「語ること」「語らないこと」の意味について議論が交わされました。

金准教授は同シンポジウムの企画・司会を担当しました。


また、ヒップホップ文化をテーマとしたグループ発表「ヒップホップ文化と極私的表現のポリティクス」では、川崎を拠点に活動する在日コリアンのラッパー、FUNI(郭正勲)さんが参加しました。
この企画では、研究者による報告に加え、FUNIさん自身がトークとラップのパフォーマンスを通じて応答するという、ユニークな形式が採用されました。
ヒップホップは、1970年代のニューヨークで生まれ、社会的に周縁化された人々が自らの経験や思いを表現する文化として、世界各地に広がってきました。

FUNIさんの表現や活動を手がかりに、個人の経験から生まれた言葉や音楽が、どのように他者の共感を生み出し、差別や排外主義に向き合う力となり得るのかが問い直されました。

チョゴリに関するシンポジウム
チョゴリの展示

さらに、クロージングシンポジウム「チョゴリを感じる―民族の装いから始まる新しい可能性と課題―」では、デザイナーの黄優鮮さんらを迎え、チマチョゴリをテーマにしたファッションショーや音楽を交えながら、民族衣装の持つ文化的・社会的な意味や新たな可能性について考えました。

研究者が文化を分析するだけでなく、実際に文化を生み出している表現者と対話することも、カルチュラル・スタディーズの特徴の一つです。

歴史や社会問題からK-POPまで、多彩な研究発表

カルチュラル・スタディーズ(文化研究)は、映画、音楽、メディア、ジェンダー、エスニシティなど、私たちの日常生活に関わる文化現象を、社会や歴史、政治との関係から考える学問領域です。
今回の大会でも、幅広いテーマについて研究発表が行われました。

研究発表の様子
松原徳和(璃寛)先生から頂いたスケッチ

例えば、歴史や社会問題に関する研究では、「朝鮮戦争をめぐる諸実践の系譜」「在日コリアンという表象」「石川における『日常の東アジア』」など、戦争の記憶やマイノリティの表象、地域社会と東アジアのつながりを考える発表がありました。また、企業におけるダイバーシティ推進や、東アジアのフェミニズムと植民地主義の関係を問い直す研究も行われました。

また、本学で非常勤講師を務める松原徳和(璃寛)先生も、「『#先畫再去』―『畫』を持って、旅に出よう」の実践――Googleスケッチ、旅行、ZINE」と題して研究発表を行いました。Googleストリートビューを活用した風景画の制作や、描いた場所を実際に訪れる活動を通じて、デジタル技術と創作、旅の新たな関係について考察しました。

一方、K-POPや映画、漫画、キャラクターといった身近な大衆文化も、重要な研究対象となっています。
例えば、中国のK-POPファンとナショナリズムの関係を考察する「『辱華』をめぐる攻防――中国のK-POPファンダムのデジタル・エスノグラフィ」や、
東アジアのポップカルチャーの歴史から韓流の広がりを捉え直す「『韓流』前史の再編成」といった発表がありました。

さらに、台湾とタイのBLドラマのファン文化を分析する研究や、ハローキティをフェミニズムの視点から読み解く研究なども行われました。

ジェンダーやアイデンティティに関しても、同性間恋愛を扱ったリアリティショー、タイの女子サッカー選手のエンパワーメント、漫画を通じたアロマンティックの不可視化、メディアが描く「学び直し」とジェンダーの関係など、多様なテーマが取り上げられました。

K-POPや漫画、ドラマ、スポーツなど、私たちが普段親しんでいる文化も、視点を変えれば社会や国際関係を理解するための研究対象になります。

こうした研究の幅広さも、カルチュラル・スタディーズの大きな魅力の一つです。

昭和女子大学の足元にある、知られざる歴史

今回の大会では、昭和女子大学が位置する下馬地域の歴史に注目した展示も行われました。

プロジェクト・ワークス「下馬兵舎時代の思い出プロジェクト―記憶の中の兵舎住宅の生活景―」(阿部健一氏)です。


下馬の歴史
ミートアップの様子

実は、現在の昭和女子大学や都営下馬二丁目アパートがある一帯には、かつて旧日本陸軍の兵舎や厩舎、練兵場などの軍事施設がありました。

第二次世界大戦後、深刻な住宅不足のなかで、空き家となった木造兵舎は戦災者や海外からの引揚者の住居として利用されました。一帯は「外地引揚者定着寮・世田谷郷」と呼ばれ、多くの人々が暮らしていました。昭和女子大学も、現在の場所に移転した当初は、旧兵舎を教室として使用していたそうです。

しかし、当時の建物はほとんど残っておらず、現在の街並みからその歴史を知ることは容易ではありません。

このプロジェクトでは、かつて兵舎で子ども時代を過ごした人々への聞き取りを通じて、当時の暮らしや街並みの記憶を記録してきました。展示では、そうした活動から生まれた絵地図や間取り図、聞き書き冊子などが紹介されました。

私たちが普段何気なく歩いている大学のキャンパスやその周辺にも、戦争や敗戦、引揚げ、戦後復興といった日本の近現代史が刻まれています。

この展示は、身近な場所に残された歴史を掘り起こすとともに、これまで十分に語られてこなかった人々の経験に目を向ける機会となりました。

国際学科の学生も大会運営に参加

今回の大会では、国際学科の学生たちも運営スタッフとしてアルバイトに参加し、受付や会場運営などを通じて大会の円滑な進行を支えました。

また、研究発表やシンポジウムを聴講した学生もおり、普段の授業とは異なる形で、研究者や文化実践者による議論に触れる機会となりました。

大学での学びは、授業で知識を身につけることだけではありません。研究者がどのような問いを立て、どのように社会や文化を分析しているのかを実際に知ることも、学問への理解を深める貴重な経験となります.

身近な文化から、世界と社会を読み解く

今回の大会で取り上げられた研究テーマは、昭和女子大学国際学科での学びとも深くつながっています。

国際学とは、外国語を学んだり、海外の政治や経済について知識を身につけたりするだけの学問ではありません。

K-POPのファン文化から東アジアの国際関係を考えること。映画や漫画からジェンダーやマイノリティの問題を読み解くこと。地域に残された人々の記憶から、戦争や移民の歴史を問い直すこと。

こうした多様な視点から、私たちが暮らす社会と世界とのつながりを考えることも、国際学の重要な学びの一つです。

身近な文化や日常生活のなかに、社会を理解するためのさまざまな問いが隠されています。

今回のカルチュラル・タイフーンは、学術研究の成果を共有する場であると同時に、学生たちが大学における研究活動を身近に感じ、文化や社会を新たな視点から見つめ直す機会にもなりました。

 

関連リンク

カルチュラル・スタディーズ学会
https://cultural-typhoon.com/

Cultural Typhoon 2026 パンフレット
https://drive.google.com/file/d/18gsKC7Y1V74et6-sYLXo4g_DN7XF31cA/view?usp=drive_link

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金泰植先生

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