国際文化研究所 30年の業績への表彰 ベトナム文化スポーツ観光省・カンナム省・日本イコモス

11月2日(木)友田博通最終講義に、坂東総長はじめハノイ・ホイアン・ホーチミン・シンガポールを含む150名を超える方々が参加して行われました。レセプションは人見記念講堂ホワイエで開催され、国際文化研究所30年の業績を評価して、カンナム省知事表彰が授与、文化スポーツ観光省からも大臣表彰が授与されることが発表されました。レセプションの後は、人見記念講堂で開催された日越50周年記念事業オペラ「アニオー姫」を鑑賞いたしました。

国際文化研究所は、日本イコモス賞2021 を受賞、3月12日には受賞者講演会が開催されました。講演の中で、文化庁・奈良文化財研究所他を代表し金井健、技術者代表・鳴海祥博+江島明義+佐賀グループ、市民交流代表で前松阪副市長・小林益久+日本橋地域・水戸部孝子、研究者代表で福川裕一・安藤勝洋・向後千里・下村久美子、本学OGでベトナムの大学教授・ファンハイリン+グエンティビクゴク、昭和女子大学を代表して坂東眞理子がご挨拶いたしました。緑のハートを押すと記事が見られます!101:建設工業新聞2月18日 102:建設工業新聞4月22日 103:日本イコモス賞受賞者講演会VIDEO 104:日本イコモ国内委員会information 12期-2号(2022.6.8)

授賞業績と授賞理由
「昭和女子大学 国際文化研究所」
【受賞業績】
「ベトナムの町並み保存支援と日本の町並み保存団体との交流促進等長年にわたる文化財保存国際協力活動」
【授賞理由】
1990 年、ベトナム政府より国際商業港ホイアン歴史地区の保存への協力要請を受けた文化庁は、事業着手に あたり、すでにベトナムとの種々の協力事業を行っていた昭和女子大学に協力を要請した。昭和女子大学はこれに積極的に応え、1992 年に国際文化研究所を設立し、国内の関係機関、専門家との連携や NPO「日本建築」セミナー等の修復技術専門家の参加、国際協力機構(JICA)の支援等を受けて、文化庁とともに本格的に事業を開始、ホイアンの町並みの保存調査や技術移転をかねた修復事業を精力的に行った。これにより、ホイアンの多くの民家等が、文化財建造物としての精密な調査と高度な技術によって修復され、現地技術者・技能者等の知識や技術も大きく発展した。
このホイアンの町並み保存協力事業は、ベトナム国内のみならず国際的にも高く評価され、1999 年に「ホイアンの歴史的町並み」は世界文化遺産に登録された。
同研究所は、さらにベトナム各地の民家調査を開始し、2000 年度から JICA の開発パートナー事業として、6省にわたる民家修復技術協力事業を展開した。ベトナム政府はこれらの成果をもとに、「伝統的集落の保存と活用」を国家目標のひとつとして掲げ、北部のドンラム(ハノイ市内北部)、中部のフクティック、南部のカイベー保存修復事業を計画した。同研究所は 2002 年より文化庁、奈良文化財研究所とともにドンラム村の集落調査を開始し、翌年より民家修復の技術支援等に継続的に協力してきた。これによりドンラム村は 2005 年にベトナムで初めての国家文化財集落(保存地区及び指定文化財群)に指定されている。
これらについての同研究所の貢献は、文化庁等とともに、「ベトナム政府文化功労賞」「日本建築学会賞」数次にわたる「ユネスコアジア太平洋州文化財保存賞」等を受賞するなど、きわめて高く評価されている。
一方、町並み集落保存は、ベトナムにおける地域の経済や生活環境向上への貢献も期待され、同研究所は JICA や国際交流基金等の協力を受け、日本各地の伝建地区等保存団体との経験交流をコーディネートしてきた。具体的には、ホイアンでは 2003 年「第 1 回日本祭り」をプロデュースし、その後この事業は日本大使館に引き継がれて現在まで毎年実施されており、石見銀山、松阪、さらには京都西陣、神戸北野、日本橋地区の住民団体との交流に発展した。
2017 年に 3 番目の国家文化財集落に指定されたカイベーは、2013 年に同研究所のプロデュースで「第1回カイベー祭」を開催し、これには横浜、神戸、長崎の住民団体が加わり、草の根市民交流を行った。以後、カイベーが所在するティエンザン省が 2 年に 1 度の大規模な祭りを継続している。このようなベトナムと日本の町並み保存にかかる市民交流は、両国の町並み保存の相互理解と発展に大きく寄与し、顔の見える国際交流として高く評価されている。
同研究所は、コロナ禍にある現在も、オンライン会議等を駆使してホイアンの重要遺跡である「日本橋」の本格日本イコモス賞的修復事業への技術協力、日本での展覧会開催、ドンラム村の衣食土産物開発、カイベー村の観光スポット開発調査準備等の事業を進めており、継続的な交流関係が構築されている。
以上の国際協力事業については、多くの調査報告書や解説書、映像資料が、同研究所のホームページ上で、ダウンロード可能ファイルとして公開されており、その広範な成果の広報、普及に努めている。
以上、昭和女子大学国際文化研究所の約 30 年にわたるベトナムの町並み保存への学術的、技術的、市民運動的貢 献 と 成果は極めて顕著であり、高く評価される。
日本イコモス国内委員会は、「ベトナムの町並み保存支援と日本の町並み保存団体等との交流促進等長年にわたる文化財保存国際協力活動」におけるすべての人々の努力を讃えるとともに、その中心となって長年積極的な活動を続けられてきた「昭和女子大学国際文化研究所」に「日本イコモス賞 2021」を授与するものである。