Learning by Doing 「模擬授業」から学ぶこと

<授業風景>

私の担当は教職課程の科目です。中学校や高等学校の教諭、あるいは栄養教諭の免許を取得しようとする人のための科目のいくつかの授業をしています。
「免許を取得する」ことは「教師になる」ということと同じではありません。免許を取っても教師にならない人の方がずっと多いのです。しかし「教員免許」を持っているということは、(必要があれば)「教壇に立って授業ができると同時に、生徒を多面的に指導できる」力を持っているということです。
その「力」(の素地)を大学で身に付けていくことになりますが、どのようにしたら身に付けられるかは、なかなか難しい問題です。授業でできることには限りがあります。

私は「教える力」をつける一つの試みとして「特別活動の研究」で模擬授業を実施しています。特別活動は、中高では学級・HR活動、生徒会、学校行事(入学式・卒業式、体育祭、修学旅行など)の「教科外活動」です。
担当する授業では、一通りの説明を終えた後、グループで「学級会・HR」を想定した模擬授業を行います。受講生は1年生から(少数ながら)4年生までいますので、できるだけ同じ学科(同じ教科)の異学年で4~5人のグループを作り、学習指導要領で示されている「学級・HR活動」の中から、自分たちでテーマと内容を決め、20分程度の模擬授業を実施しています。

 

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実際には「授業」にならず、「発表」「プレゼン」になってしまうことが殆どです。またグループでの話し合いを取り入れようとしても、話し合う内容がはっきりせず、生徒役の学生が戸惑うこともよくあります。1年生がいきなり授業をする、というのはそもそも無理な話でしょう。
それでもこれを行っているのは、とにかく経験して欲しいと思うからです。グループで行うため、全員が教師役をすることはできませんが、準備の中でイメージしていた「授業」と実際の結果のギャップを感じることはできます。そして「授業の実施役」と「生徒役」を同時にすることで、いろいろなことを学びます。
各グループの模擬授業については、コメント用紙を配り、意見を書いてそのグループに渡します。直接渡してもらうので、私は見ませんし、口頭でのコメントも行いません。その必要はないと思うからです。
「コメント用紙」とは別に私のほうに出してもらう「出席カード兼リアクションペーパー」に感想が書かれていることがありますが、「このような説明は分かりやすい」「こんな進行が良い」「内容が面白かった」とか「一方的なものだった」「授業としてどうかと思う」など様々な意見が出されています。おそらく「コメント用紙」にはもっと率直なアドバイスが書かれているのではないかと想像します。

学生たちは実践することで自ら学びます。learning by doing あるいはlearning through reflection on doing は教育の一つの原則です。模擬授業のねらいは、授業をお互いに体験することで「教える力」を身につけることと同時に、自分自身がlearning by doing の原則に基づいた授業ができるようになる(とまではいかずとも、そのような授業を目指すことが大切であることに気づく)ことにあります。
collaborative learning(協働学習)の出発点は、学生の学ぶ力を信頼することです。そして目標は、より広い学習の共同体への参加を促すことです。その道を指し示すことが教師の役割です。私自身それができているとは思いませんが、そのような方向を目指したいと考えながら、授業を行っています。私にとっても模擬授業から学ぶことは多いのです。

(TO)