授業紹介~近現代文学を読む「演習Ⅱ」~

〈授業紹介〉

今回は、演習形式で近現代文学の作品を読み解いていく授業「演習Ⅱ」をご紹介いたします。
演習とは、教員が講義をする授業とは形式が異なり、学生が主体となるもので、
対象の作品について調べ、考察した成果を発表する場となります。
前期は、有島武郎、芥川龍之介、梶井基次郎、太宰治、梅崎春生、三島由紀夫、小川洋子
といった作家の作品を扱っております。
文学(小説)など、自然にすなおに読んだらそれで良い、などというような声を
世間(?)で聞くこともありますが、それは、あくまでもその当人にとっての
〈自然〉〈すなお〉でしかないということを、まず自覚する必要が出てきます。
〈すなおに読んだら、〇〇と読めるでしょ〉
〈誰がなんと言おうと、私は△△と読んだ〉
という態度では、傲慢で独善的です。
そのため、その作品に対し、他者の読解(先行研究)がこれまでに
どのように為されてきたかということを踏まえる必要が出てきます。
それは時代の流れの中での、価値観の移り変わりを読み取ることともなります
(例えば、教科書でも有名な太宰治「走れメロス」なども、
ずいぶんと読み取り方が変化しております)。
それを踏まえた上で、改めて〈現在〉の視点から、どのようにその作品を
読み取ることができるのか、ということを熟考していきます。
もう少し正確に言えば、〈いま〉その作品の読解を考えていくこと自体が、
結果的に我々が〈現在〉どのような価値観を持っているのか、ということを
浮き彫りにしていくことになるのだと思います。
ただ、〈現在〉の価値観と一言でいっても、当然かんたんに
導き出せるものではありません。
そのため、グループ内において徹底的に話し合った上で発表者たちは本番に臨み、
更に発表後、それを聴いていた他の学生たちとの間で再び話し合っていき、
より説得的な読解を導き出していくこととなります。
時に思いもよらない新しい視点が生まれることもあり、
とてもスリリングな時間となっています。
また、そうした場を共有することで連帯感のようなものも改めて生まれていきます。
写真の当日は、このあと大学のキャンパス内にある「光葉博物館」に、
春の特別展「ことばのいろ ことばのおと~人見東明と白秋・露風の詩の世界~」
(6月1日~30日)をみるために行きました。
ちいさな文学散歩のようなものですが、少しのびのびとした時間の中で、
改めて詩の世界に触れることができました。
またこうした文学散歩のような機会をつくり、改めて学生間での交流も
深めていきたいと思っております。
〈YN〉