国語教材研究:思い出のおかし~サロン・ド・テで記憶にダイブ~ [2019年10月29日(火)]

〈授業風景〉

今日の授業のご紹介の前に、まず、学生たちのリアルな声をお聞きください。

~学生達に聞きました、思い出す国語の授業って?~

毎年4月、私が教職を希望する学生たちに聞くのが次の質問
「あなたの思い出に残る中学校高等学校の国語の授業って?」
その反応、ザ・ディープインパクトです。

「う~ん、思い出せない、国語の授業って何やってたんだろう?」
「教科書の作品を自分で読んでるときは、めっちゃ面白かったのに、授業やってるうちにだんだんつまらなくなった。」
「グループ活動が、すごーくイヤだった。一人ですぐわかることをみんなで話し合う意味ってないし」
「自分の意見を自由に言ってと言いながら、必ず先生は最後自分の答えを板書するから考えるの無駄って思った」
「先生の言う正解がいつもぼんやりしてモヤモヤした」
「漱石のこころで、Kはこの時どんな気持ちだったと思うと聞かれ、隣の席の子が、Kじゃないからわかりません。って言ったら、先生がキレて『たとえ、あなたがKじゃなくても、気持ちを想像しなさい。人の気持ちが分からない人は苦労します。相手の気持ちを思いやる、想像力がない人はだめです。』と、涙ぐみながら言ったのでクラスがシーンっとなって。なんだかわかるような、わからないような気がしました。」

「国語の授業」に対するコメントは、すこぶるシビア。
もちろん、ご心配いりません、国語の授業にワクワクした学生も沢山いますから。

「私は本を読むのが好きなので、先生の語る文学の話が大好きでした。内容はよく覚えてないけど先生が嬉しそうに好きな作品について語るのを聞くのが好きでした。」
「先生が自分の体験と絡めながら本文を解釈してくれたので、難しい評論文がよくわかった。具体的な例を示してもらえることで、抽象的な文章が少し理解できるような気がした。」
「先生が、ここは試験にでる、受験にでる、と毎時間本気で受験対策授業をやってくれたので国語の模試の成績が上がり嬉しかった」

ポジティブな「国語の授業」は、先生の話術による素敵な一人舞台的授業、もしくは、ザ・予備校型授業、どちらも、生徒達はギャラリー的なポジションにいたことは明らかです。

そこで私は考えました、
「学生の興味にスイッチが入り、仲間と一緒に協力し、よりよいアイディアが生まれ、
新たなものをつくりだすため本気度がアップする、そんな<国語の冒険>を目指そうと」
私の国語科教育法はこんな言葉で始まります。
「このレッスンのワークを通して世界の見方が変わることを目指します。あなたの経験・直感を全て取り込み<感じ・考え・動く>こと。皆が自由に発言し真剣に耳を傾けること。クリエイティビティを高めるためには、【一つの正解を求めない】【いろんな意見を取り入れ新しいモノを生み出す】が大切です。それがみんなでこれから旅立つ、国語教育法の冒険です」と。

 

思い出のおかし~サロン・ド・テで記憶にダイブしよう~

 

ということで、今日の授業テーマは「思い出のおかし~記憶に深くダイブせよ」です。
具体的ワークは「絵手紙の作成」。
今、国語の授業でプッシュされている「表現する力」を育てるため、先生方は、ミニ評論・エッセーをかかせることに必死です。テンプレを作ったり、ワークシートを作ったり、でも、どうしても書くことアレルギーの生徒が多くて困っているとの相談を受けます。そのときに、ぜひ、おすすめなのが、「思い出ダイブ作戦」

今日の授業のスタートは、かつて勤務していた農業高校の生徒たちの「緩和ケア病棟」をめぐるエピソードから。日赤緩和ケア病棟から絵手紙の講師として、農業高校の司書の先生が招かれたことを契機に、私と生徒は患者さんに出会い、そして、気づいたのです。みなさんの絵手紙に描かれる「おやつ」が語る物語の深さを。おやつを食べた時の、風のそよぎ、空気の匂い、聞こえてきた音、おかあさんの笑顔、うれしそうに語られる「おやつ」の思い出、そして、「おやつ」の絵手紙は、語り手そのものを表現するものだったのです。

私は学生たちに語ります
「自分の経験の中に深くダイブするとき、人は、はっとする思いに出会うことができます、そのはっとした心をキャッチするものをさがしてみましょう。ということで、今日のテーマは思い出のおやつ、さあ、記憶の海にダイブです。あなたがそのとき、何に出会い・何を経験し・何を感じてきたか、あなたしかわからない、あなただけの記憶にダイブして、じっくり目を耳をこらしてください。そのときの、ふわっとした気持ちを突き詰める、そんな気持ちで、心に、頭に浮かんだ、思い出のおやつ、そのふわっとしたイメージを絵手紙に描いてみましょう。目に見える形でかいたあとは、隣の人と<サロン・ド・テでおやつトーク>を行いましょう。トークの中で、思いが何かと化学反応を起こし、ステキな発見があるかもです」




<国語科教育法>のレッスンの中で、私は、ダイアローグ<対話>を大切にしています。
対話を通し、メンバー同士のワクワクが、新しい気づき、新たな認識につながるからです。
今日の授業で「おやつをめぐる」対話を通し、
気づいたこと、感じたこと、学生たちのコメントをいくつか紹介しましょう。

「話を聴いてもらい、いろいろなことを質問してもらうことで、忘れていた小さなことも、どんどんクリアーになっていきました。あのとき、妹と一緒に話した言葉まで、思い出しました」

「おやつ・・・とはじめは、ぼんやりしていたのですが、クッキーのことを思い出した時、どんな味だった?とか、どんな形だったときいてもらうことで、作っていた時の光景まで、くっきりと思い出しました。はかりにのせて、砂糖やバターの分量をはかることが、とっても大きな仕事をしているようで得意にならずにいられなかった、幼稚園のころの私の思いが、今ここで、はっきり思い出せたような気がしました」

「映像が具体的に浮かぶことで、言葉がうまれること、そして、友人の一つの絵から、新たな物語が生まれる瞬間を共有できたことがうれしかった」

 

「経験を言葉に変えるマッスルトレーニング」
思い出にダイブすることで言葉のインナーマッスルを鍛えよう、
そんなレッスンでした。それでは。

(AO)