〈日文便り〉
村上春樹など日本現代文学の研究者であるLaura Emily Clark(ローラ・エミリー・クラク)先生を
招き、「日本文学Ⅱ(近代A) 中・短編小説を読む」(7月7日)内において特別授業を行った。
クイーンズランド大学人文科学学術院(オーストラリア)所属で、
現在は昭和女子大学女性文化研究所の特別研究員でもあるクラク先生は、先述のように
村上春樹作品などを対象にジェンダー表象の研究をされており、今回の特別授業では
村田沙耶香「コンビニ人間」(「文学界」二〇一六・六)の分析を通じ、改めて現代の
ジェンダーや「普通」という概念をめぐる問題についての考察がなされた。
受講生においても身近なテーマであり、強く興味を惹かれたようである。
そのため、最後の30分に行われた質疑応答は非常に活発であった。
「コンビニ人間」やジェンダーに関する議論に加え、クラク先生が日本文学、日本文化に
関心を持ったきっかけなどについても、話題に上がった。
授業後には
「恵子がなろうとしていたのは『人間』なのに、周囲が期待しているのは
『女性』になることであった」という視点が非常に興味深かった。
ジェンダー、世の中の「普通」「当たり前」、「大人になる」道筋、
フリーター(非正規雇用)、などの社会問題について幅広く解釈がされていて非常に興味深かった。
一番印象に残っているのは「性別威圧」という言葉で、
今まで聞いたことのない単語であるのに、説得力のある言葉だと感じた。
「一般的」「普通」「マジョリティー」といった概念を無意識に何の反発もなく身につけた人間と、
そうできなかった少数派のずれを明らかにしたような作品だと思った。
といった声も聞かれ、受講者は大いに刺激を受けたようである。
更には
タイトルの「コンビニ人間」が翻訳版では「Convenience Store Woman」になっている
ことに関して、どのようにお考えでしょうか?
といった質問が授業後にも提出されるなど、その後も盛んに応答がなされ、
非常に貴重な機会となった。また、次のような感想もあがったため、最後に記しておきたい。
今回の授業は、中々得ることができない機会であったので、参加することができて光栄でした。
日本人の作品について外国の方の意見を実際に聴くことがあまりなかったので、新鮮でした。
また、このような機会が可能なのであれば、是非参加したいと思います。
(山田夏樹)