6月のオープンキャンパスの体験授業では、「会話を文字にしたら何が見える?」というタイトルで、日本語教育Ⅰ(会話データ分析)の授業の一部を来場者のみなさんに体験してもらいました。
普段は話した瞬間に消えてしまう会話を文字にするとどのようなことが見えてくるのか、それが日本語教育にどのように関連するのか、についてお話ししました。
具体的には、メイナード先生の日本語とアメリカの英語のあいづちについて取り上げました(メイナード、S. K.(1993)『会話分析』くろしお出版)。これは、日本語のあいづちの多さを数量的に証明した有名な研究で、大学の授業でも学生がとても関心を持つ内容です。
会話には、基本的に、話し手と聞き手がいますが、聞き手は聞いているということを具体的にどのように示すか、習ったことはなくても自然にできていると思います。
ただし、この聞きているということの示し方は言語によって異なり、日本語はあいづちやうなずきが多い傾向あると言われています。
日本人としては、相手の話を聞いていることを示しているつもりでも、異なる言語の外国人には、話の途中で割り込まれてしまうように感じることもあります。
これは、どちらが悪いというのではなく、コミュニケーションのルールが異なるために起こってしまう問題です。
授業後、高校生の保護者で市役所に務めているという方が、体験授業の内容が経験とつながったと話しかけてくれました。
市役所では外国人も多く訪れてくるそうで、その方は、外国人の話をしっかり聞いていることを示そうとあいづちを多く打っていたそうですが、外国人が話の途中で黙ってしまうことがよくあったそうです。
今回の体験授業でその理由がわかり、今後の会話のコツをつかめたようでした。
私としては、後日談をぜひうかがいたいと思っています。
会話データ分析は、実際に撮影した会話データを文字化することにより会話を可視化し、会話の特徴を客観的に分析していきます。
この分析により、言語によるコミュニケーションのルールの違いがわかれば、実際の異文化間コミュニケーションにその特徴を活用していく可能性もあります。
日本語教育Ⅰ(会話データ分析)の授業では、日常生活の多様な会話の特徴を受講生と一緒に考えていきたいと思っています。
(大場美和子)