<授業風景>
上代文学ゼミでは、今からおよそ1300年前に成立した『古事記』や『日本書紀』、『万葉集』を読んでいます。どのゼミよりも少ない人数ですが、3年生の5人のゼミ生は前・後期の2回の発表に取り組む中で、卒業論文のテーマを決めて行きます。
後期授業の2回目、『万葉集』巻5・892、893番、山上憶良が詠んだ「貧窮問答の歌」の長歌と短歌の発表でした。「貧窮」が歌の主題になることは珍しく、憶良は歌には通常用いられない言葉、孤語を多用して「貧窮」の実態をリアルに描いています。憶良が筑前国司の任を終え、帰京後の天平四年(732)冬の作とみられ、73歳ぐらいに詠まれた作品です。「我をおきて 人はあらじ」と自負心をもちながらも、「世間(よのなか)」にあることによってもたらされる苦を受け入れるしかない定めを「すべなし」と嘆いています。
ゼミでは歌が詠まれた背景や、歌に出てくることばの解釈を通して、理解を深めていきます。
以下は所属するゼミ生の感想です。
MYさん
上代文学ゼミの3年生は現在、『古事記』や『万葉集』の中から好きな伝承や歌を選んで各自がテーマに設定し、各々が調べたことや考察したことをゼミの皆で共有しています。自分が興味を持たなかった話でも、他のゼミ生が調べた発表を聞くと意外なおもしろさがあり、発見があります。一つの目標に向かって皆で学習していく過程はゼミならではですし、特に上代文学ゼミは人数が少ないからか、わからないことは自然に教え合う雰囲気があります。学習するには持ってこいの環境だと感じています。
MKさん
前期に2回、後期に2回発表があり、レジュメを作成します。発表後は質問に関して補足資料を作成します。
私は万葉集を選びました。前期は柿本人麻呂の石見相聞歌、泣血哀働歌を、後期は山上憶良の貧窮問答歌をやっています。
上代と聞いて難しそう、自分にはできないと思っていましたが、学んでみると、共感する表現が多くあり、歌のおもしろさがわかり楽しいです。
AYさん
このゼミはとにかく先生と学生、そしてゼミ生の距離が近いことが魅力のひとつだと思います。上代の文学は中高の古典でも詳しく触れることはなく、身近ではなかったし、内容や表現も古典として馴染み深い「竹取物語」や「源氏物語」とは全く違った難しさがあります。しかし、授業後すぐに質問できたり、お昼休みや期末前にみんなで集まって復習したりと、少人数だからこそ、先生と距離が近いからこその和気あいあいとしておりとても楽しいです。
AIさん
私は今、古事記の中・下巻について学びを深めています。
難しいこともありますが、先生に助言をいただいたり、同期と助け合ったり、討論したり、勉強会をしながら、日々考えている毎日です。発表の資料作りなどは大変ですが、楽しく学ぶことができています。
古事記の人物に扮してみました。
(烏谷)