2021年2月2日学長ブログ [2021年02月02日(Tue)]

■学長会議に参加して

 先日、私立大学連盟の会議で、慶應義塾大学の中室牧子教授の講演を聴きました。主旨は、日本では教育政策を経験や特定の事例から論じることが多いが、科学的な根拠に基づいて考えるべきであるということです。講演では、科学的根拠すなわち、社会実験等による客観的データの比較に基づいて、教育効果の測定や検証が行われた例が説明されていました。そのなかで、
・埼玉県学力学習状況調査から、コロナ禍での小学校の休校の影響により、低学年で国語より算数で学力が低下した可能性が指摘された
・米国の公立小中学校の臨時休校はコロナ感染の抑止に効果はなかった
・大学でオンライン授業のみ、対面授業のみ、オンライン+対面のハイブリッド授業の3種を比較実験した結果、オンライン授業のみは対面のみの場合より期末試験で4~5ポイント低く、ハイブリッド授業と対面では差はない
・オンライン教育はもともと成績の悪い学生に負の影響がある。(厳密な比較実験では、対面授業とオンライン授業の教育効果の差は全体的には決して大きくない結果が出ているとのこと)
・成績不振の学生集団の一部に「目標設定を行うオンライン演習(目標を列挙し、目標達成に生じうる課題を解決するための具体的な戦略も考えさせる)」を予め受けさせてからオンライン授業を実施し、この演習を受けずにオンライン授業を受けた同集団の学生と比較すると、前者の学生のGPAが大幅に高かったという実験結果が示された、などの多くの興味ある研究報告が引用されていました。

 さて、本学においては、今年度は全教員がオンライン授業のメリット、デメリットを実感した年でしたが、次年度からは、オンラインを活用しつつ対面授業も効果的に展開できるような状況になっていることを願っています。どのような状況でも本学の教育をストップさせないように、構内のネット環境の強化やオンライン授業に関わる設備の充実について段階的にではありますが、可能な限りの改善が進められようとしています。コロナ禍でも、昭和女子大学は前進あるのみです。


↑ 学園本部館の梅の木
既にたくさんのつぼみを膨らませています。春は近いです。

2021年1月15日 学長ブログ [2021年01月15日(Fri)]

<SHOWAトピックスの紹介>

■学生の「キャリアインカレ2020」へのチャレンジ
 ビジネスデザイン学科3年生の3名の学生たちがマイナビの「キャリアインカレ2020」に出場しました。キャリアインカレは、企業5社が出した課題に対してビジネス提案をするコンテストで、今年は全体で720チームが出場し、本学のチーム(チーム名:「よしこ」)がセコムの部で優勝しました。1月9日に、5社それぞれの優勝者の中から最優秀を選ぶ決勝大会がありましたが、この決勝で惜しくも敗れました。チーム「よしこ」の提案は、10代20代を対象にした、SNSでのいじめや炎上から身を守るためのビジネスアイデアでした。セコムからは、SNSを安心して使える空間にすべきだと提言する公共性と、表現の自由とプライバシーのバランスをAI等のデジタル技術で克服しようとしている点、ビジネスとしての持続性と実現性が高く評価されたとのことです。私もPCで決勝大会を視聴していましたが、チーム「よしこ」は優勝チームに劣らず堂々とした素晴らしい発表で善戦したと思います。最優秀こそ獲得できませんでしたが、チームメンバーはそれ以上に大きな学びや気づきを得、成長できたことと思います。メンバーには悔しかったことをバネにして、ここで得たことを次のチャレンジに活かしてほしいと思います。
 他の学科の学生でもこのようなチャレンジャーが多数いると思いますが、学生のみなさんには大学内の活動に留まらず。是非、学外のコンペやコンテストなどの他流試合に臨んでほしいと思います。もちろん、賞をいただいたり、勝つことは素晴らしいことですが、これに挑戦する過程で得られるもののほうがより重要と思います。失敗してもこの経験を次に活かすという気持ちで、色々なことにチャレンジしてみてほしいと思います。
 大人の私たちも学生の皆さんと同じです。私の場合、コンテストに出場するわけではないですが、事の大小に関わらずチャレンジ精神でやってみること、これが日々の生活や人生に刺激を与え、楽しくするコツだと思っています。


決勝大会:セコムの部の扉画面

次回も、気になるトピックスを取り上げて紹介していきます。是非、ご期待ください。

2020年12月21日 学長ブログ [2020年12月21日(Mon)]

<SHOWAトピックスの紹介>
今回からは、学内イベントや学生プロジェクトなど、様々なトピックスをいくつか取り上げて紹介していきます。初回は、昭和女子大学創立100周年記念となるオリジナル和菓子の製作に挑戦した「和菓子100th Anniversary Sweets」プロジェクト、またテンプル大学ジャパンキャンパス(以下、TUJ)と本学との共同開設科目である「コミュニティアート」の活動報告会の様子を紹介します。

■「和菓子100th Anniversary Sweets」プロジェクト
少し前になりますが、11月末に「輝け☆健康『美』プロジェクト」、通称H&B(Health&Beauty)のメンバーが指導教員とともに学長室を訪れてくれました。

本学附属高等部のOGの店でもある三軒茶屋の大黒屋さんとのコラボで、本学創立100周年記念バージョンのあられ・おかきの詰め合わせを企画して製品化されたことを報告してくれました。本学の校章にもなっている桜の形の2色あられと、100周年記念ロゴで描かれている船や学寮研修の「灯の集い」、そして建学の精神の「世の光となろう」を連想させるロウソクなど本学ゆかりの絵が描かれている丸形の煎餅などが入っています。デザインだけでなく、使用された色素や素材も吟味されているようです。わたしもいただきましたが、形がかわいいだけでなく味もなかなかおいしいです。この商品は、本学ではプレリュードで販売され、キャロットタワー地下1階の大黒屋さんでも販売中だそうです。冬休みに帰省する皆さんのお土産にお勧めしたいと思います。このコラボに関わった学生のみなさんの感想を聞き損ねたのですが、このようなプロジェクトを通して、大学で学んだ知識を実際に使ったり、企画を練ったり、学外の人たちと交渉するなかで学ぶことは多かったのではないでしょうか。

■TUJとの初の合同授業「コミュニティアート」の活動報告会
11月30日(月)に、TUJと本学との共同開設科目の「コミュニティアート」の活動報告会が開催され、参観しました。コミュニティ(地域住民)にアートに近づき親しんでもらうことを目的として、芸術普及・教育活動のイベントを企画し開催するまでを行うPBL形式の授業です。

指導は、本学の歴史文化学科の教員とTUJのアート学科の教員の協働でなされました。「アートドキュメンテーション 授業の軌跡」「世田谷美術館へのワークショップ提案」「チョークアート制作とアートマネジメント」の3つのプロジェクトは、TUJと本学の学生の合同で編成され、それぞれのグループがパワーポイント資料や動画を使って報告しました。発表は、学生が分担して英語と日本語で、司会の英語コミュニケーション学科の学生は2か国語で説明していました。どれも通り一遍でなく、オリジナルの楽しそうな企画であり、また多くの学生が分担しながら発表し、みんなが協働できている感じが大変よかったと思います。今回のように、英語が得意でなくても学生は十分に授業内容を学ぶことができ、協働作業を通してTUJも本学の学生も互いに刺激を受けたのではないでしょうか。
初めての企画なのでご指導の先生方には色々ご苦労があったかと思いますが、学生にとっては大変貴重な経験だったと思います。今後もこのような企画が他の学科でも実施されることを期待します。

次回も、学内イベントや学生プロジェクトなど、気になるトピックスを取り上げて紹介していきます。是非、ご期待ください。

2020年12月4日 学長ブログ [2020年12月04日(Fri)]

<総合教育センター長インタビュー>
先回は、学生のプロジェクトを取り上げる予告をしていたのですが、その前に学部長シリーズの番外編として、総合教育センター長の井原奉明先生に話を聴くことにしました。総合教育センターは一般教養科目、語学、教職科目を管轄し、全学生が必ずお世話になっているところです。

■プロフィール
小原: 恒例になっていますが、まず先生の専門分野と研究について教えてください。
井原: 私は哲学のなかでも、言語哲学を専門に研究しています。日本の哲学研究では、一般的には過去の高名な哲学者について研究することが多いのですが、一方で過去の哲学者を師として、その人の追究した道をたどりながら、自分も思考し研究を進める手法もあります。私は後者の手法によって研究を進めています。私の場合、哲学者のウィトゲンシュタインを師としています。この人は元来、「素人」哲学者として独自な研究を進めた人ですが、その説は多くの研究者に影響を与えています。
私は、昔から「私」「他者」「世界」「言語」などに関心があったのですが、現在は「私」についてウィトゲンシュタインの考えた道をたどりなら、研究しています。今まで、言語学、現象学、日本の哲学、そして仏教思想など色々なものに関心を持ってきましたが、現在の研究対象にこれらの異なる知見をぶつけるとまた新しいものが見えてくることがあり、これまでずっとこの研究手法を続けています。

小原: 私はウィトゲンシュタインの名前を聞いたことがある程度の知識しかないのですが、哲学にも色々あるのですね。論文や著書を読み、それについて深く思索するというスタイルの研究ですね。先生の研究の醍醐味はどういったところにありますか。
井原: 研究のなかで色々考えたり、調べたりしているうちに、ふっと気づく、わかった!と実感することが時々あります。突然サーッと靄が晴れていく感じなのですが、そこがおもしろいところです。一生懸命考えている時に何気なく手に取った本を読むと、思いがけないヒントに出会う瞬間があります。「天使が降りてくる」や「天使のご褒美」という表現をすることもありますが、これが研究の醍醐味です。また、世界に同じ手法で研究している人がいますが、同じ部分を基に考察しながら異なる結論を出すことがあります。若い頃にはこういうこともよいなと思いました。
小原: わかる気がします。科学の分野でも、似たようなことがあります。いずれにしても、あることを一生懸命に深く考えたり、真剣に取り組んでいないと天使はご褒美をくれないですね。
 先生がこの言語哲学の分野を選ばれたきっかけはどのようなことでしょうか。
井原: 小さい時から言葉、詩、小説、まんが、作曲など自分の気持ちを創造的に表現することが好きでした。英語も好きな科目でしたので、上智大学で英語学科を選びました。それと、学生時代のアルバイト先で、現代思想のトップランナーの研究者の弟子であった二人が先輩にいて、その二人の話を聴いて哲学に興味をもつようになりました。そして、自分の大学にもこの分野の立派な先生がいることを知り、大学院では言語学課程で言語哲学を学びました。
小原: 井原先生は特技や趣味をたくさんもっていそうですが、これについて教えてください。
井原: 趣味はたくさんありますが、いくつか選ぶとすれば、まず、旅行と旅先での食べ歩きです。知らないところに行ってその土地の名物を食べるのが好きです。あと、海外でも国内でも旅先では必ずコーヒーを飲み、コーヒー豆を買って帰る程のコーヒー好きです。次に体を動かすことが昔から好きですが、今ではジムに行く程度で、もっぱらスポーツ観戦を好んでいます。スポーツは球技でもスキーでも何でも観ます。読書も小さいころから好きなので、本を読みながらテレビでスポーツ観戦をすることもあります。どちらかにすれば?と言われますが、どちらも並行してやれます。また、高校、大学生のころからロックバンドを組んでいまして、今でも時々当時の仲間と演奏します。ギターやキーボードを弾きます。オリジナルの曲も演奏していました。特技は、この楽器演奏と、かつては人のものまねも得意でした。
小原: 井原先生がロックバンドとは・・・楽しいですね。そういえば、井原先生が「X先生が・・・とおっしゃった」と、X先生にそっくりの言い方で再現されているのを聞いたことがあります。確かに、ものまねがうまいと思います。
 先生の好きな言葉や座右の銘があれば教えてください。
井原: 自分の転換期に「意志あるところに道はある」という言葉によく思い至ることがあります。もう一つはサルトルの「約束は言葉ではなく、行動だ」という言葉です。何かトラブルがあったり、みんなで何かに向かってやらなければならない場面にぶつかった時、自分も口だけでなく誠実に行動する、関わることが大事だと自分自身に言い聞かせています。

■総合教育センターについて
小原: 本学の総合教育センターの特徴はどのようなことでしょうか。
井原: グローバル教育には外国語教育がもちろん必須ですが、一方でグローバルマインドや国際的に通用する思考力を育てることも必要です。今は、一般教養科目では理系科目はやや少ないですが、数学などの理系科目も充実させようとしています。数学をはじめとしてロジック(論理)を学ぶ学問は言語に関係なく、高い国際通用性をもち、このようなロジックおよび論理の展開を学ぶことは国際的に共通する武器となるものです。従って、自分の専門分野以外でも体系だった考え方や論理を学ぶことはグローバルな力をつけることにつながります。今の一般教養のカリキュラムは、この方向性で再編成しようとしています。学生には色々な科目を履修し、それらを自分のなかでつなげて理解してほしいと思っています。また、それができる教育環境を整えていきたいと思っています。

■大学について
小原: 最後に、昭和女子大学のセールスポイントはどんなところでしょうか。
井原: たとえば、女性教養講座や文化研究講座などのように、在学中に面倒くさいと思っている人がいるようなものでも、即効性というよりむしろ卒業してから効いてくるプログラムが本学には多くあります。自分に関心のない類の講演や芸術鑑賞でも、それに触れることよって自分の世界を拡げる機会になることもあります。この他、留学、学寮研修、プロジェクト活動など、自分の視野や器を広げ、感性のアンテナを磨く機会が多くあり、 それらの経験が後々の役に立つと思います。自分の枠を一回り大きくするための土壌作りをするものが、本学ではたくさん提供されています。
さらに、教員と学生の距離が近いところが良い点です。クラスアドバイザー制をとり、クラスの人数が少ないので、学生と教員が話す機会がたくさんあり、教員が学生の背中を押しやすい環境がここにあります。そのため、 他の大学に比べて卒業後もOGと長く関係を保っている教員も多いです。

小原の感想:
井原先生に楽しく話を聞かせていただきました。私の場合、実験が主体の研究をしているので、実験しながら得られた結果を考えるという研究手法ですが、先生のように論文を読んで深く思索するという、まさに学者らしい手法を取る方とは脳の使い方が少し違っているのではないかと感じました(実際はどうなのでしょうか?)。そして、先生はなんとなくマニアックな雰囲気を醸し出されているので趣味が多いことは予想していましたが、ロックバンドとは私の予想を超えていました。先生が一番気に入った食べ物はどこのどんな食べ物だったのかが後になってから気になりお聞きしたところ、ウィーンの「シンケンフレッカール」という料理だそうです。ハムとパスタで作るオーストリアの郷土料理のようですが、気になる人は調べてみては如何でしょうか。

次回からは、学内イベントや学生プロジェクトなど、様々なトピックスの中から1つを取り上げて紹介していきます。初回は、昭和女子大学創立100周年記念となるオリジナル和菓子の製作に挑戦した「和菓子100th Anniversary Sweets」プロジェクトを紹介する予定です。ご期待ください。

<関連リンク>
井原奉明教授の教員紹介ページ
総合教育センターの紹介ページ

2020年11月20日 学長ブログ [2020年11月20日(Fri)]

<学部長インタビュー>
今回は、生活科学部長の高尾哲也教授に話を伺います。なお、生活科学部は2021年度から「食健康科学部」に名称が変わります。

■プロフィール
小原: まず、先生がどんな研究をされているのか伺いたいと思います。
高尾: 研究テーマは二つあります。一つ目は「唾液を出したい」がキーワードです。唾液を適度に出すために、まずは唾液を出せる食品成分や唾液を出す方法を探すための指標をつくろうとしています。現段階は、指標そのものを検証してより良い指標をつくる、もしくは評価法を探ることから始めています。現在、指標には細胞を利用しようとしています。
小原: そもそもなぜ「唾液を出したい」なのでしょうか?
高尾: 高齢者は唾液が少なくなりがちですが、唾液が少なくなると食べるのが苦痛になります。そうすると、低栄養になることもあります。また、唾液が少なくなると、虫歯や歯周病にもなりやすくなります。ですから唾液が出しやすくすることは、特に高齢者にとって生活の質(QOL:Quality of life)の向上につながります。
小原: なるほど、梅干しを食べるとか、そんな単純な話ではないのですね。
高尾: もう一つのテーマは、「炎症を抑える食品成分を探る」です。たとえば、腸の炎症を抑えられれば、下痢などを軽減することができます。炎症を抑える食品成分を見つけられば、これもQOLの向上につながるだろうと思います。近年、医学や薬学ばかりでなく、食品や栄養の分野でも、主に装置や試薬の価格の問題ですが、細胞の利用や細胞内の情報伝達、遺伝子発現の測定や解析ができるようになってきました。ゴールははっきりしていますが、その道のりはまだ長いです。
小原: 両方の研究は、ともにQOLの改善につながるのですね。

小原: 次に、先生の研究のなかでおもしろいと思う点はどんなところでしょうか。
高尾: まず、自分の研究で他の人が知らないような、初めてのことを知ることができるのはおもしろく楽しいです。たとえば、学生は自分の卒業研究で今までになかった初めてのデータを得ることになります。そのデータから得られる知見は小さな一歩ですが、卒業研究を進める上でのおもしろさにつながります。
小原: 研究は、今までに明らかにされていないオリジナルなことを追求するのでなければならないですが、確かに誰も知らなかったことを明らかにするのはワクワクしますね。
小原: 次に、先生が食品加工学でこの様な研究の分野を選んだきっかけを教えてください。
高尾: 私は食品会社で食品の研究開発をしていましたが、私の教授から昭和女子大学を紹介されて本学の教員になりました。ちょうどその2000年ごろ、味覚を分子生物学的に追及する研究の成果が上がり始めたのです。私は食品の大きな機能の一つに「味」があると思っています。そして当時はこの分野の研究者は少なく、世界に100人もいませんでした。ということは、この分野では私は世界で100位以内の研究者になれるかもしれない・・・そうだったらやろう!と思って、この分野を研究テーマとしました。その後、あっという間にこの分野の研究者は増えてしまいましたが(笑)。
小原: 私の高校生の頃は生物学と化学の境界領域の「生化学」という学問分野が始まったばかりの時代でしたので、私もこれに憧れて化学科に進学しました。少し似ていますね。
小原: ところで、先生の趣味や座右の銘にしている言葉があれば教えてください。
高尾: 趣味はぶらぶら歩きです。途中で写真を撮ることもあります。ちょっとした風景や身近なものを撮るのが好きで、おもしろいマンホールとかを見つけたら撮ったりします。座右の銘は「楽」です。「楽しい」とか「らく」なのは好きです。ですが、「らくをする」のはなかなか大変です。「らく」をしたいけれども、「らく」に至るには苦労します。「らく」は探さないと「らく」になれないわけです。
小原: なるほど、確かに。簡単には「らく」になれないということですか・・・肝に銘じます。

■学部について
小原: 先生の学部は来年度から名称を変更して食健康科学部になりますが、この学部の特徴・強みを教えてください。
高尾: 当学部では、食品の川上から川下まで、つまり食品の製造、供給、流通、食事の設計などまで総合的に扱っているところが、他にはない特長です。食安全マネジメント学科が開設されて、それまで欠けていた流通マネジメント分野も学べることになり、食をトータルに捉え、学部全体でFood Systemを考え、理解することができるようになったと思います。また、食安全マネジメント学科では2022年度から卒業に必要な専門の単位数を現在の76から90程度に増やして科目を充実させる予定であり、健康デザイン学科でも特色を生かしたカリキュラムで教員が学生の能力をより伸ばせるようになります。今後も各学科の強みをもっと強化していく計画です。
小原: 学部ではどのような人材を育成したいですか。
高尾: 学生にはどんな分野に進んでも、大学で得た知識や技術を使って様々な場で応用・展開できる力を身につけてほしいと思います。そのために、在学中は自分の分野と違う分野も学んでほしいと思います。大学時代は、受動的であっても情報が降ってくる、最後の期間です。この期間を活用してほしいと思います。大学2年生の前期までは、学んだことを信じなさいと言いますが、それ以降は安易に信じるばかりでなく、むしろ情報や学んだことを疑え、信じないでと言いたいです。
小原: 知識・理論を一方的に理解するだけでなく、疑ったり批判的な捉え方をしてみると新しい事が見えてくるかもしれませんね。

■大学について
小原: 昭和女子大学で学ぶメリットはどんなところにあると考えますか。
高尾: 本学は、100年前に創立した女子大学ですが、創立当初から良妻賢母を掲げていないところが良いなと思います。また、学生と教員の距離が近すぎず、遠すぎずで、教員は学生の話をきちんと聞けるところが良いと思っています。そして、教員は学生のことをよく考える親切な大学だと思います。最後に、学生へのメッセージとして言いたいことがあります。大学や研究室では皆が互いに近しいですが、外の社会では違います。社会に出ると、概ねどこも自分の思っているような環境ではなく、変だなと感じることがあるのが普通です。また、そういうことに驚いてもよいけれど、怖気づかないで力強く進んでほしいです。 

小原の感想:
高尾先生は、生活科学部の健康デザイン学科および食安全マネジメント学科の両方の開設に関わってこられたので、その分、この学部で学ぶ学生たちへの思いや期待する気持ちには熱いものがありました。生活科学部でしっかり、そしてのびのびと学んでいる学生の卒業後の活躍に期待したいと思います。

今回で学部長インタビューは終わります。次回からは、学内イベントや学生プロジェクトなど、様々なトピックスの中から1つを取り上げて紹介していきます。初回は、昭和女子大学創立100周年記念となるオリジナル和菓子の製作に挑戦した「和菓子100th Anniversary Sweets」プロジェクトを紹介します。ご期待ください。

<関連リンク>
高尾哲也教授の教員紹介ページ
学科紹介ページ(健康デザイン学科)
学科紹介ページ(管理栄養学科)
学科紹介ページ(食安全マネジメント学科)

2020年10月13日 学長ブログ [2020年10月13日(Tue)]

<学部長インタビュー>
今回は、環境デザイン学部長の金尾朗教授に話を伺います。

■プロフィール
小原: まず、金尾先生の専門分野を教えてください。
金尾: 本来は建築計画、都市計画で、大学院ではコンピュータを使って研究していました。本学に赴任後もしばらくはコンピュータを自前で購入したりして続けようとしていたのですが、やはり設備的に難しいため断念し、今は教えている内容に合わせて建築デザインや町づくりを対象に研究しています。ここ10年間ぐらい、年に1、2回ヨーロッパを廻って建築物を研究していまして、ここから学ぶことが多く、その蓄積がデザイン、およびデザインを教える上でのベースとなっています。

小原: 先生の研究のなかで、おもしろいあるいは興味深く感じたことを教えてください。
金尾: 大学院では数学をやる研究室で、博士課程時代は研究室で心理学や宇宙論、数学など、様々な分野の本を読みこみ、勉強会をしていました。このなかで幅広い分野に興味をもち、知識を得ました。また、建築物を見ること自体がおもしろいと思います。古い建築物や新しい作品についても、設計者がどれだけのことを考えたか、どれだけ時間をかけて考えたか等を考えながら見るのは楽しいです。そのなかで得たことは学生と一緒にデザインを考えるのに役立つし、学生にもできるだけ伝えていきたいと思います。一方、町つくりの研究では、町つくりを真剣に頑張っている人々と出会い、その人の町への思いを知ることは楽しいし勉強になります。
小原: 違う分野の人や色々な職種の人と出会うことは確かに視野が広がり、学ぶことも多いですね。
金尾: 勉強と言えば、社会的価値観の変化に伴って設計手法も変化しています。だから、今活躍されている非常勤講師のデザイナーの方々と会って、現代のデザインの考え方やコンセプトの作り方を一生懸命吸収しようとしています。
小原: 先生が建築を学ぼうと思ったきっかけは何ですか。
金尾: 最初は東京大学で、数学や物理をやりたかったのですが、学部1、2年の授業が難し過ぎて挫折しました。元々音楽や美術が好きだったので、油絵や彫塑も趣味でやっていました。そこでその芸術の延長線上にあった建築を選びました。
小原: 音楽はどんなジャンルが好きでしょうか?楽器もできますか?
金尾: 聴くのは主にクラシックで、ピアノ、ギター、フルートも演奏しますので、持っています。小さい頃、家に絵画全集があったり、父から小さいレコードプレイヤーを与えられて音楽を聴いていたことが、芸術への興味につながっていると思います。父もマニアックなレコード収集をしていたようで、その影響もあるかもしれません。
小原: 金尾先生は座右の銘や大事にしている言葉などはありますか?
金尾: 特にはないのですが、私はクリスチャンの家庭に育ちました。両親はあまり教会に行くこともなく、そういう点では熱心なクリスチャンではなかったのですが、キリスト教的な倫理観や価値観を持った両親の影響は自分も受けていると思います。

■学部について
小原: 先生が学部長をされている、環境デザイン学部のセールスポイントを教えてください。
金尾: 自由にデザインを考えられるところでしょうか。環境デザイン学部環境デザイン学科では、建築、プロダクト、ファッション、デザインプロデュ―スの分野があり、それぞれが尖った専門性を持っています。幅広く多様なジャンルを見たり、学んだりすることができ、その上で自分の好きな分野をどんどん進められるところが魅力的だと思います。
小原: 環境デザイン学部は、生活科学部から独立した新しい学部ですが、学部の目指すものを教えてください。
金尾: 卒業後の学生のイメージとしてですが、新しい生活をデザインし、提案できる人を育成したいと思います。学科内では多様な教員がいるので、みんなが集まって新しいものを開拓していきたいと思います。

■大学について
小原: 昭和女子大学で学ぶメリットはどこにあると考えますか?
金尾: 学生が実際にここで学んで満足できる大学でありたいと思います。大学生活で学生は色々なものを学び、つかみとれる環境をつくりたいと思います。教員と学生の距離が近いところも本学の良さだと思います。
小原: 今日はいろいろお話しいただき有難うございました。

小原の感想:
私も同じ環境デザイン学科の所属であり金尾先生とは長い付き合いですが、今回は先生の学科の教育にかける思いや、日ごろの印象とは異なる一面を知ることができました。芸術への深い興味や趣味に加えて、ご両親のキリスト教的な倫理観が先生の心にも根付いていたことが実に印象深かったです。両親の考え方や価値観は自然にそのこどもに受け継がれていきますが、それこそが親から子への大切なギフトだと感じました。

次回で学部長インタビューの最終回となりますが、生活科学部長の高尾先生をブログで紹介する予定です。ご期待ください。

<関連リンク>
金尾朗教授の教員紹介ページ
学科紹介ページ(環境デザイン学科)

2020年8月28日 学長ブログ [2020年08月28日(Fri)]

<学部長インタビュー>
人間社会学部長の藤崎春代先生にお聞きしました。

■プロフィール
小原: 今回は、人間社会学部長の藤崎春代先生においでいただきました。先生は心理学科の教授ですが、まずは専門分野と研究の内容について伺いたいと思います。
藤崎: 心理学のなかに発達心理学という分野があります。この発達心理学と、それをベースとした発達臨床心理学が私の研究領域です。研究の内容は、園(保育園、幼稚園、こども園など)で生活する乳幼児の発達、そして園の先生や保護者の成長についてです。実践的研究としては、発達上「気がかりのある」子どもたちを園でどのように育てていくかということについて、先生方へのサポートを通して検討してきています。
小原: そのような研究テーマを選んだのは、何かきっかけがあったのでしょうか?
藤崎: 学部の卒業論文では大学生を対象として記憶研究をしました。大学院に進学後は、漠然と子どもを対象としたいと思って、保育園で観察をしていました。そのなかで、休みの日の経験を報告する場面に出会いました。子どもたちは普通に話をする時とは違うことば遣いで、先生や仲間の前で、聞き手にとって関心がありそうな情報を含みこみながら一生懸命に報告していました。仲間に報告することに誇りを感じている様子も感じられ、感心するとともに興味をもちました。このことから、「子どもにとって、園は大事な生活の場なのだ!」と思ったのがきっかけです。
小原: 昔は、母親が働いているために子どもを保育園にあずけるのは子どもがかわいそうだという通論がありましたが、本当はそうではないということですね。
藤崎: そうです。子どもにとって園は家庭とは異なる生活の場であり、家庭とは異なる環境があり、育ちがあります。子どもの成長には園と家庭の両方の場が大事です。
小原: 先生が研究を進められる中でおもしろい、楽しいと感じるのはどんな場合ですか?
藤崎: 子どもが育っていくのに立ち会えるのが楽しいです。自分が保育をしているわけではありませんが、何らかの「気がかりのある子ども」の保育について、園の先生方や自治体の保育行政担当者とともに考える中で、子どもの育ちを確認できることが楽しく、やりがいにつながっています。また、入園から卒園まで保護者に継続的なアンケート調査をした時に、回答とともに励ましの声をいただいたこともうれしいことでした。

小原: 先生の特技や趣味、座右の銘があれば教えてください。
藤崎: 研究をずっとやってきたのでいわゆる趣味はないのですが、園に行くことでしょうか。特技は泣いている赤ちゃんと仲良くできることです。発達心理学の観点から赤ちゃんの気持ちに近づくいくつかのポイントを知っているので、そこを探っていくとうまくいきます。座右の銘といえば、研究室のPCの横に「一生勉強、一生青春」(相田みつを)というカードを置いています。

■学部について
小原: 人間社会学部の特徴とは、どのようなところだと考えていますか?
藤崎: 人間社会学部の各学科の特徴を一言でいえば、心理学科は「こころを科学し、社会で活かす」、福祉社会学科は「地域共生社会の実現を目指す」、初等教育学科は「子どもたちの未来をデザインし、未来社会を担う子どもを育てる」、現代教養学科は「教養で人間と社会の未来をつくる」となります。それぞれが、多様な側面から人間と社会の関わりを捉える切り口を示しています。カリキュラムのなかで「人間社会学総論」として、学部内の他学科の授業を履修できるシステムがあるので、学生には是非学んで視野を広げてほしいです。
小原: 学部の目指しているところ、輩出したい人物像はどのようなものでしょうか?
しっかりした理論とともに、問題解決に関わる実践スキルも併せて修得し、主体的に社会貢献できる人材を育成したいと思います。コロナ禍で否応なく生活や学びも影響を受けていますが、一方的に影響を与えられる受け身ではなく、これを機に社会や、社会との関わり方を変えていこうとするのも人間です。社会の変化のなかで様々な視点から問題を理解し、解決策を探ることが求められています。その意味でこのような状況下で、今何をどのように学ぶかということが重要だと思います。人間社会学部の学生たちには、社会と周囲の人々の動きをしっかりと見つつ、学びを通して力を蓄えてほしいです。
小原: 人間社会学部のセールスポイントを教えてください。
藤崎: 人間社会学部の4学科に共通するセールスポイントは、学内で基礎的な理論や方法論をしっかり学ぶことを踏まえて、実際に社会とかかわることが学びに組み込まれていることです。資格を取得して専門職として社会に貢献することに加え、社会をどのように捉え、関わっていくのかを意識した学びの機会―プロジェクト学習や海外研修など―が用意されています。海外研修でも、語学習得よりもむしろ社会システムに関心をもつ学生が多いのが学部の特徴でもあります。現在、4学科とも新カリキュラムに移行したところ、あるいはこれから移行する予定です。

■大学について
小原: 学生にとって、本学で学ぶメリットはどこにあると考えていますか?
藤崎: 昭和女子大学の敷地内にあるTUJ(テンプル大学ジャパンキャンパス)や、海外キャンパス「昭和ボストン」も含めて、様々な経験ができる機会・仕組みが用意されているところが何よりのメリットと考えます。発達心理学においては、大学時代はアイデンティティの形成が課題となる青年期に含まれます。「私とは何か、私は何をしたいのか」と悩んでいる学生も多いと思いますが、悩む一方で少し動いてみることを勧めます。一つの経験が自分らしさに気づくきっかけになったり、将来につながったりすることもあります。
また、本学は「面倒見のよい大学」と言われますが、それはお世話するという意味でなく、学生が少し不安に感じた時に、「やってみたら」という信号を発する教職員がいるということだと思います。発達心理学で「社会的参照」という考え方があります。はいはいや歩行ができ始めた乳児が一歩踏み出そうとする時、信頼する大人を振り返り、大人の表情から自分がどうすればよいのかを読み取ります。これが「社会的参照」です。大学生は乳児ではありませんが、親や教師から離れて新しい大きな世界に船出していく時、乳児と同様不安だと思います。その時振り返ると「やってみたら」というゴーサインを出している人たちがいる、それが昭和女子大学だと思います。そして私もゴーサインを出し続けたいと思っています。

小原の感想:
会議などでは、いつも冷静にてきぱきと発言されている藤崎先生ですが、研究活動では乳幼児を観察しつつ、子どもの発達を温かく見守っておられる姿勢が印象的でした。先生は子どもだけでなく、子どもに関わる大人の育ちについても研究されており、研究成果が保育支援や子育て支援に直接つながっているところが臨床研究のやりがいや魅力であると思いました。

次回は、環境デザイン学部長の金尾朗先生をブログで紹介する予定です。ご期待ください。

<関連リンク>
藤崎春代教授の教員紹介ページ
学科紹介ページ(心理学科)
学科紹介ページ(福祉社会学科)
学科紹介ページ(現代教養学科)
学科紹介ページ(初等教育学科)

2020年7月10日 学長ブログ [2020年07月10日(Fri)]

<学部長インタビュー>
グローバルビジネス学部長の武川恵子先生にお聞きしました。

■プロフィール
小原: まずは、武川先生の専門分野やこの大学でどういう分野やテーマで研究や活動をされているのかを教えてください。
武川: 昨年から本学のグローバルビジネス学部ビジネスデザイン学科に勤めています。私は国家公務員出身ですが、ビジネスの分野との関りとしては1989年にアメリカのデューク大学経営大学院で修士号を取得しました。また、内閣府の男女共同参画局にいた2010年に日本でAPECが開催され、「女性と経済」に関するフォーラムが行われて以来、内閣府では女性と経済に関する政策に力を入れ始めました。そして2012年安倍内閣が発足し女性の活躍推進の政策が打ち出され、女性と経済に関する政策を実現してきました。また、現在、2社の社外役員もしており、そういう面では経済やビジネス分野に関係しています。
一方、日本には、21世紀の現代からみるととんでもない政策の枠組みがまだ残っています。これからやりたいことは、政策に携わった者として、そして今は大学教員なので自由な立場で、これらの問題提起を文章でしっかり発信していきたいと思っています。特に家族法に関して問題が多く、考え方の座標軸に明治民法の出来た19世紀当時のものが残っています。たとえば、女性が出産した場合、法律上の夫を父親の欄に記さなければ出生届は受理されません。それを覆す否認権は法律上の夫にしか与えられていません。制定当時は夫のいる女性の婚外の関係は罪とされていました。また、婚外子の父としての認知に母の同意は胎児認知以外は必要ありません。父親の法律上の妻の同意などもちろん必要ありません。さらに、両親が離別した場合、こどもの養育費を支払っている男性は日本では20%であり、取り立てしやすくなるよう制度改正はされてきていますが、基本的には民民で解決すべき問題という位置づけで公的介入はありません。正当な父親を確定し、責任を取らせることは国家の義務という考えに立っている諸外国もありますが、日本ではそうなっていません。これ以外にも、女性に関する様々な問題があります。本学でビジネスの教育に携わりながら、一方でこれらの残された問題を提起していきたいと思っています。

小原: 先生のこれまでの活動のなかで、やりがいがあったと感じていることを教えてください。
武川: 私は、人は社会を少しでも良くして次世代に渡していく責任があると思っています。そのなかでやりがいがあったことの一つは、2016年の女性活躍推進法の施行です。それに付随して、公共調達(公共事業など、政府がサービスやものを購入すること)の入札時に、4兆円程度の予算ですが、女性が活躍している企業に加点することを実現させました。これは女性が活躍できる機会を増やそうとしている企業へのインセンティブになっていると思います。また、政治分野で「候補者男女均等法」が議員立法ですが成立したことも嬉しかったことです。この他、身近な事例ですが、「液体ミルク」の製造販売が実現したことです。液体ミルクを厚生労働省の乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(通称:乳等省令)のリストに加えるための申請を日本乳業協会に提案したところ、当時の日本乳業協会会長である川村氏(現、株式会社 明治 代表取締役社長)が引き受けてくれて実現しました。
小原: 液体ミルクがリストに載ることはどのような具体的なメリットがあるのでしょうか?
武川: このリストに入っていないものは、事実上製造販売は不可能で、当時は粉末ミルクしかなかったのです。液体ミルクが販売されると、夜中でも外出先でもまた、災害時でも、水や湯を準備してミルクを作る手間がいらず、慣れていない父親や他の誰でも手軽にミルクを与えることができ育児が楽になるため、結果的に育児支援となります。
小原: 先生の趣味や特技はどんなことでしょう?
武川: 園芸でしょうか。私は家事の一環と思っていますが、家族には趣味と思われています。これはなかなか奥が深いです。木を植えて、それがなかなか発育しなくても後になってちゃんと育つものもある一方、いくら良い苗でも適所に植えないとうまく育ちません。以前、鉢植えの藤に、冬に水を切らしてしまったところ、春に全く花が咲きませんでした。そこで地面に移したところ、今度は伸びてすごく枝をはったので、翌春棚いっぱいに花が咲くのを楽しみにしていたのですが、咲きませんでした。冬でも世話をし、枝も張り過ぎないようにしないと花は咲きません。また、手間ばかりかかる木でも親の植えた木はなかなか切れないということもあります。ビジネスに通じますね。

■大学について
小原: グローバルビジネス学部ではどのような人材を育成したいとお考えですか?
武川: 社会の責任ある構成員になれる人を育成し、次世代のために少しでも社会をよくしていくことに加わってもらいたいと思います。「世の光になろう」という言葉にも通じますね。人生は長いから、荒波に遭っても強く乗り越えて明るく幸福な人生を、学生には送ってもらいたいと思います。このためには、社会で役に立つ基礎知識を、グローバルビジネス学部では必須のビジネスの力をつけて、臨機応変に変化に対応できる力をつけてもらいたいと思います。
小原: 昭和女子大学のセールスポイントはどんなところだとお考えですか?
武川: こじんまりとして家庭的で面倒見がよいところかなと思います。昭和女子大学では、女子学生に立派な社会人になってもらいたいという、若い女性に対する期待感をもって教育がなされていると思います。人は期待されると伸びると思います。
小原: 今までお聴きしてきましたが、武川先生からおっしゃりたいことがあればお願いします。
武川: 会計ファイナンス学科は資格をしっかり取らせることを重視しています。ビジネスデザイン学科はプロジェクト型教育(PBL)を先駆的に取り組んでいます。グローバルビジネス学部では、以前は一般入試で入学した学生のほうが概して良い成績を取る傾向が見られたのですが、現在は推薦入学してきた学生に成績がよく生きいきと活動している人が多いです。そういう学生がリーダーとなって引っ張ってくれると好循環が生まれると思います。本学は昭和ボストンがあることも強みですが、テンプル大学ジャパンキャンパスとの関係もさらに強化していきたいと思います。このように、本学はダイナミックに活動し、動いています。ますますよりよい大学になっていくと思うので、学生もこの動きに是非参加してほしいと思います。

---小原の感想---
初めて武川先生と直接話を伺いました。このインタビューでは、先生は、女性にとって不平等な政策や法を是正し、社会をより良くして次世代につないでいくことへの責任を強く感じられている点が印象的でしたが、その一方で学生を見る視点には教育者としての慈愛を感じました。現在の民法の問題点は他にももっと指摘されていたのですが、書ききれなかったので、これに興味をもたれた人は是非、武川先生の講義や講演を聴講されることをお勧めします。

次回は、人間社会学部長の藤崎春代先生をブログで紹介する予定です。ご期待ください。

<関連リンク>
武川恵子教授の教員紹介ページ
学科紹介ページ(ビジネスデザイン学科)
学科紹介ページ(会計ファイナンス学科)

2020年6月12日 学長ブログ [2020年06月12日(Fri)]

<学部長インタビュー>
国際学部長の高野恵美子先生にお聞きしました。

■プロフィール
小原: まずは高野先生のプロフィールをご紹介したいと思います。先生の専門分野と研究について教えていただけますか。
高野: 専攻は言語学で、そのなかでも認知言語学に関心を持って研究しています。人は物事をどのように捉えるかで、表現の仕方が変わります。これは、同じ言語の中でも言えることですが、言語が異なると物事の捉え方も異なるので、同じことでも異なる表現で伝えることがあります。つまり、文化・言語・思考が相互に関連し合っているということができます。先日、「Cool Japan」というTV番組で、長年日本に住んでいる外国人が日本には「無言の圧力」があると指摘していました。会議中にメモを取らない後輩に、「メモをとりなさい」と言うのではなく、黙ってノートを差し出すことが、無言の圧力だと感じたようです。日本には「察し」の文化があり、直接的な表現を避けたり、相手の言いたいことを忖度したりします。それに対して英語の話し手は、言いたいことをズバッと言います。また、道に迷った時、日本語では「ここはどこ?」と言うのに対し、英語ではWhere am I?と言います。日本語は話し手自身が事態の中に臨場し、自分からの「見え」を言葉にしているため、「私」は言語化されません。一方英語では、自分を事態の外に置き、道に迷った自分を客観的に表現するので、Iが言語化されます。このように、日本語母語話者と英語母語話者の事態把握の違いが言語化にどのような影響を及ぼしているのか、日英語のデータを用いて分析・研究しています。
小原: なるほど言われてみると確かにそうですね。全く知らなかった世界です。先生の研究でおもしろいと思う点やわくわくすることを教えてください。
高野: 「古池や蛙飛び込む水の音」という松尾芭蕉の俳句がありますが、この俳句には100通り以上の英訳があります。「古い」(old, ancient)や「池」(pond, lake)等の単語の違いもありますが、なかでも面白いのは、蛙がa frogではなく複数のfrogsになっているものがあることです。日本語なら、静寂の中一匹の蛙がポチャッと池に飛び込む様子が想像されます。英語のfrogsの場合、一度に何匹もの蛙が池に飛び込むのではなく、一匹飛び込んで水面がさざめき、しばらくして、次の一匹が飛び込むという解釈ができます。ものの数え方でも、英語では蛙をa frog/ frogsと単数と複数をはっきり区別しますが、日本語でははっきり言わないですね。このような英語と日本語の違いが不思議でおもしろいと思い、日英対照という視点で研究を続けています。英語を学ぶことによって日本語の特徴に気がつくことが多く、驚きます。
小原: 英語に興味を持ち、学ぼうと思ったのはどういうきっかけですか?
高野: 高校1年の時に教わった英語の先生の影響が大きいです。その先生は、通訳もされていて、そのお話をよくしてくださいました。それまでも英語は好きな科目ではありましたが、先生への憧れが、より英語に興味をもつきっかけとなりました。大学卒業後、中学・高校の英語の教員として務めた後、イギリスのノッティンガム大学の大学院に留学しました。そこで指導していただいた先生から、研究者として、そして教育者として多くのことを学びました。当時は教職を離れることも考えていたのですが、教師のあるべき姿や教えることのすばらしさを教えていただき、再び教壇に戻ることになりました。今でもイギリスに行った時はその先生を訪ねていきます。
小原: 先生の趣味は何ですか。
高野: 今は、片付けにはまっています。色々片付けると気持ちがすっきりします。
小原: 好きな言葉や座右の銘はありますか?
高野: 研究室の壁に貼って時々思い出すようにしている言葉があります。When life gives you lemons, make lemonade!(人生がレモンというすっぱい果物をくれるなら、それでレモネードをつくればいい)です。物事がうまくいかない時に自分を励ます言葉です。

■学部について
小原: 国際学部のセールスポイントはどのようなところでしょう。
高野: まずは全員が留学するという点です。今年度後期から、テンプル大学ジャパンキャンパス(TUJ)とのダブルディグリープログラム(DD)第1期生が、いよいよTUJでの学修を開始します。TUJに加え、国際学科では上海交通大学、ソウル女子大学とのDDプログラムが既に実施され、韓国の淑明女子大学とのDDプログラムも今後始まる予定です。これらのDDプログラムはレベルが高く厳しいので、学生たちは切磋琢磨しながら励み、真の実力をつけています。英コミでは 、TUJとのDDプログラムに加え、ボストン校への留学後、さらに世界中にある協定校への認定留学を奨励しています。協定校であるレズリー大学に留学し、さらに上海の華東師範大学で学んだ学生もいます。大学生という若い時期に留学すると、語学力やコミュニケーション力の習得に加え、異文化を直接体験することで、「人間力」が育成されます。留学後の学生たちは、相手を思いやり、自然に助け合う行動がとれるようになります。このように、学生たちが成長する姿を見るのは、教員としての大きな喜びです。
小原: 国際学部はこれからどのようにしていきたいですか。また、どのような人材を輩出したいと考えていますか。
高野: 国際学部は今年度完成年度を迎え、来年度からは新カリキュラムが施行されます。国際学科は国際関係の分野を、英語コミュニケーション学科はコミュニケ―ションの理論と実践を強化していきます。これらの専門性を中心とした独自の教育プログラムを通して「論理的に考え、調べ、発信し、他者を説得する」力を身につけて、社会に羽ばたいてほしいと思います。卒業後は、在学中に磨いた人間力を存分に発揮して、社会やコミュニティの中で活躍する人材となってほしいと願っています。

■大学について
小原: 昭和女子大学で学ぶメリットはどこにあると考えますか。
高野: 今はオンラインで世界中の人々と簡単に繋がることができますが、キャンパス内にTUJがあるメリットは大きいと思います。外国に留学しなくてもアメリカの大学の授業、そして文化を実体験できることは、他大学では経験できないことです。英語を専門としない学部の学生も参加できる交流の機会もたくさんあるので、ぜひ積極的に参加してほしいと思います。
小原: 今日はインタビューにお答えいただいて有難うございました。

小原の感想
今回のインタビューでは「認知言語学」について少しだけお聞きしましたが、言語と、物事の捉え方や文化とは互いに深い関係性があることに気づかされ、興味深かったです。学問の世界は実に多様で広いことを改めて実感しました。また、高野先生が教育者の道を歩むきっかけとなったイギリスの教授の話から、教育者が学生に及ぼす影響は大きく、だからこそやりがいのある職業であることを再認識しました。教育に関わる者として心に留めておきたいと思います。

次回は、グローバルビジネス学部長の武川恵子先生をブログで紹介する予定です。ご期待ください。

<関連リンク>
高野恵美子教授の教員紹介ページ
学科紹介ページ(国際学科)
学科紹介ページ(英語コミュニケーション学科)

2020年5月15日 学長ブログ [2020年05月15日(Fri)]

<学部長インタビュー>
人間文化学部長の山本晶子先生にお聞きしました。

■プロフィール
小原:先生の研究について教えていただけますか?
山本:能楽について、中でも地方に伝承されている狂言を研究しています。今は、伊勢市の馬瀬(まぜ)町に伝わる狂言の台本を中心に研究をしています。
小原:先生の研究でおもしろいと思うところはどんなところですか?
山本:20年以上伊勢に通って門外不出の資料を調査し、それらの資料の位置づけを紹介するとともに、毎年馬瀬町での秋祭りや伊勢の能楽まつりを撮影、記録しています。馬瀬狂言は、その地域の人々の手によって伝承されています。馬瀬狂言が時代を超えてどう伝わり、どう変化しているのか、地域のコミュニティとの関係の中での伝承の実態を明らかにしたいと思い、研究に取り組んでいます。
小原:文学だけではなく、その背景にある文化にもつながっているのですね。興味が湧いてきますね。先生が研究の中で、ワクワクしたり、嬉しかったことはどんなことでしょうか?
山本:何より実物の原本を見せてもらい、当時の人々が遺した筆の跡をたどりながら翻刻する作業は難しいですが、楽しいです。馬瀬狂言の台本の系統を明らかにするために調査をするなかで、全く別の場所で詞章がほぼ一致する台本を見つけた時、自分にとっては一歩前進した感じで嬉しかったです。また、馬瀬狂言の「蜂」という珍しい曲の資料を翻刻・紹介した、わたしの論文を元に、その曲が復元され舞台で実際に演じられたのを見て感激しました(2012年名古屋能楽堂、2019年東京の国立能楽堂)。


(参考)狂言「花子」の台本 ※馬瀬狂言保存会所蔵

小原:先生がこの分野を選んだきっかけを教えてください。
山本:大学2年生の時、学科の研究発表会で発表することになり、説話文学の研究者の戸谷三都江先生にテーマについてご相談したところ、狂言を紹介されたことがきっかけです。「あなたは狂言の中に登場する女性のよう」とのことばをいただき、興味を持って読んだことで、それ以後ずっと、研究テーマとして付き合っています。ただし、先生のおっしゃった狂言の女性は「わわしい女性」(口やかましい、うるさい)ということのようです(笑)。
小原:先生の趣味は何ですか。
山本:今は忙しくてなかなか行けないのですが、「釣り」です。家族全員で釣りが好きです。釣ったものは基本的に全部料理していただきます。
小原:先生の座右の銘があれば教えてください。
山本:能楽では一回毎の講演に演者が集まって演じるので「一期一会」を大事にします。私も常に色々な風景や人に出会っていますが、それぞれがその時しかない出会いとして大切にしたいと思い、「一期一会」という言葉を大事にしています。

■学部について
小原:人間文化学部のセールスポイントはどんなところですか?
山本:人文学は伝統的な学問分野であり、「人間とは何か」を考える、根本的なことを学ぶ学問です。文学や歴史、文化を研究対象として、そこに込められた人々の思い、智恵を学び、豊かな人間性と広い視野を培うことがこの分野の目指すところです。本学創立の出発点は国文学であり、本学のなかでも長い歴史を持っています。図書館には近代文庫など貴重な資料が蓄積されており、また、学芸員を目指す者の実践の場として博物館もあり、この恵まれた教育環境がポイントです。
海外で学ぶプログラムも充実し、また、テンプル大学ジャパンキャンパス(TUJ)との交流も盛んです。専門分野に関連する交流として、歴史文化学科はアート学科と「コミュニティアート」という科目を共同で開設しており、日本語日本文学科もTUJの日本語学科と連携し、互いの授業に学生が参加し合っており、さらに「日本の伝統文化を学ぶ講座」も共同で開催しています。

小原:これからどんな人を育てる学部にしていきたいですか?
山本:情報化社会、またAI技術の進歩等、激変する時代の中で、最後は人間の判断、智恵が求められます。このなかで今後はますます人文学を学ぶことの意義が問われます。まずは専門の学びを通して、深い見識と共に、思考力、洞察力、表現力などを養います。さらにグローバル社会の中で、多様性を理解し、主体的に考え、行動できる人材を輩出する学部を目指したいと思います。

■大学について
小原:学生にとって昭和女子大学で学ぶメリットはどこにあるでしょうか。
山本:様々な年代の園児、児童、生徒、学生が集い、TUJやBST(ブリティッシュ・スクール・イン・トウキョウ昭和)もキャンパスを共有する、正にタイバーシティな教育環境だからこそ、それぞれが連携して様々なプロジェクトやプログラムが生まれていることです。中でもTUJとの連携も大きいでしょう。また、学生と教員の距離の近さ、教員が個々の学生をしっかり見ていることは、学内の学生からだけでなく、オープンキャンパスに訪れた高校生からも聞く感想です。  

インタビューは以上です。研究のことを話される山本先生の顔は熱意に満ち、いかにも楽しそうだったのが印象的でした。「釣り」が趣味とは・・・意外にワイルドな一面も垣間見られました。先生の考えられた学部の目指す教育には私も同感で、分野は異なっても大学教育共通の思いであると思いました。

次回は、国際学部長の高野恵美子先生をブログで紹介する予定です。ご期待ください。

<関連リンク>
山本晶子教授の教員紹介ページ
学科紹介ページ(日本語日本文学科)
学科紹介ページ(歴史文化学科)