文献史学のフィールドワーク [2011年04月21日(木)]

みなさまこんにちは。日本近現代史を担当している松田忍です。

「博物館・美術館での資料実見」「発掘作業」「文化財修復」……と足や身体を使ってのフィールドワークが盛んな歴史文化学科。そういった華やかな活動と比べると、いわゆる日本史って文献史学だから地味だなぁと思っている人いませんか?ふふふ、そんなことはありません。実は日本史にもちゃんとフィールドワークがあるのです。それは史料発掘です。ただし実際に地面を掘り返すわけではなく、自分が興味を持った人物のご遺族にお手紙をさしあげ、お父様やお祖父さまの生前の活動に興味があることを伝えたうえで、「なにか受け継いでいる書簡や書類はないですか?」ということをうかがって回るのです。

「たくさんの書き付けがあったのですが、引越しの時に捨ててしまいました」とか「おやじはあんまり筆まめじゃなかったからねぇ」というお返事を頂くことが多いのですが、時にはとんでもないお宝にめぐり合うことがあります。このあたりはまさに発掘(=掘り当てた)ということばがしっくりします。

そんなお宝の1つであり、いま私が取り組んでいるのが、安積得也の書き残した史料群です。安積は、戦前期に内務省というお役所で役人をつとめ、戦後には社会教育に奔走した人物です。私は2007年にダンボール箱40箱ほどにつめられた安積の史料に出会いました。その後、安積のご長男が国際基督教大学(ICU)の先生だった関係もあり、ICUの部屋をお借りして、史料整理会を継続開催中です。整理会では、多くの仲間たちが月1回程度集まって、史料を整理しながら読みつづけております。安積が数十年にわたって書き続けた日記帳だけでも、大学ノート200冊を超えるくらいはありますから、なかなかの分量でしょう?それでも日本近現代史の史料群としては中規模だと思います。史料の森というのは凄まじく深いものがあります。

この写真は安積文書調査会の風景をとったものです。ここに写っているダンボール箱は安積史料のほんの一部です。でも、ひと箱ひと箱には、数十年前の人々の生活やものの考え方を伝える大事な史料が詰まっています。箱をあけるごとに上がる歓声と新しい発見。「そうはいっても、中にはつまんない史料もあるでしょ?」という質問には「つまらない史料などない!」と私は答えたいと思います。時を超えて史料が残って来たこと自体の尊さとか、それにめぐり合えた幸運というものを心にしっかりと刻みながら、ダンボール箱を開けて行くとき、やはりそこに詰められている一点一点の史料はどれも貴重なのだと心から感じることができます。

そんな文献史学の「フィールドワーク」を体験したい方は授業やゼミなどの機会を通じて、是非松田にお声掛けください。安積の史料調査会にお越しいただくことは全くもって可能ですし、大歓迎です。実際に調査を体験してもらうこともできますよ。