日本美術史担当の植松勇介です。
小生、静岡県浜松市に住んでいます。昭和女子大学には関東在住の学生が多いため、静岡県や浜松市は縁遠い土地でしょう。折にふれ、静岡県西部地域の歴史・文化を紹介していきたいと思います。
拙宅の近くに「中島銃砲火薬店」という狩猟用や競技用の銃器を扱う店があります。創業者は中島登(なかじま・のぼり)。新撰組の隊士だった人物です。
中島登は天保9年(1838)に武蔵国八王子で生まれ、元治2年(1865)に新撰組入隊。戊辰戦争を最後まで戦い抜き、箱館で降伏、静岡藩預かりとなります。放免後、浜松宿で旧友と再会し、そのまま浜松に居を構えました。浜松では意外にも葉蘭の栽培を手がけ、「金玉簾」という品種を世に出して一財産を築いたとか。明治17年(1884)に中島銃砲火薬店を開業し、その三年後、50歳で亡くなりました。
新撰組はなぜか若い女性に人気があります。新撰組を研究したくて歴文を志望した学生もいるはず。しかし、新撰組に関しては真偽不明の逸話が独り歩きし、また、フィクションにおける脚色も著しく、研究対象にするのは難しいと聞きます。特に、近藤勇や土方歳三、沖田総司のような幹部ではその傾向が強いようです。それでも新撰組を研究したいという学生は維新後まで生き残った一介の隊士に注目してみてはいかがでしょうか。地方の史料を丹念に調べていけば、思わぬ発見があるかもしれません。