西洋史関連の授業で取り上げた映画ベスト7(前編)

こんにちは!
西洋史担当の小野寺拓也です。

さて早いもので、そろそろ一年もおしまい。もうすぐ冬休みですね。
4年生や3年生の皆さんは卒論や就活でそれどころではない、という感じ
かもしれませんが、せっかくの冬休みです。とくに2年生や1年生の皆さんは、
普段時間がなくてあまり見られないような映画に触れてみてはいかがでしょうか?

ということで今回は、私が今年西洋史関連の授業で取り上げた映画のうち、
「是非きちんと見てほしい!」というものを7点、授業紹介がてらピックアップしてみたいと思います。
(順番はテキトーです)
長くなりそうなので、前後編二回でお届けします。

1.「レ・ミゼラブル」

「西洋史概説」で、フランス革命の導入として触れました。
貧しい人びとへの同情や共感からはじまったフランス革命が、最終的に
独裁や恐怖政治になってしまったのはなぜなのか、そのスタート地点として
「ミリエル司教はなぜやさしかったのか」という、遅塚忠躬さんが『フランス革命
歴史における劇薬』(岩波ジュニア新書)で投げかけた問いを取り上げました。

授業では冒頭10分くらいを紹介したのですが、見終わった後学生たちから
「ざわざわざわ・・・」
という、得も言われぬどよめきというか興奮が起こったのをよく覚えています。
「ミュージカルって、なんだか不自然だし、好きになれないな」
と思っている人もいるかもしれませんが、そんなあなたは確実に人生を損しています!

「なぜこの人は瀕死の重傷を負っているのに、堂々と歌っているのだろう?」
「そもそも今は、歌を歌っている場合なのか?」

などといった、心に浮かぶ(もっともな)疑問はとりあえず忘れ、とにかくミュージカル映画の
世界に浸ってみましょう!
セリフではなく音楽だからこそ伝わる何かがある、ということに気づいた瞬間から、
あなたはもうミュージカル(あるいはオペラ)の立派な理解者です。
とくに、アン・ハサウェイが歌う名曲「夢破れて」のシーンが圧巻(ちょっと前に
スーザン・ボイルが歌って、一躍スターに上り詰めたあの曲です)。

2.「ベン・ハー」

古代ローマ社会を表現する大変有名な言葉として「パンとサーカス」というものが
あります。
皇帝、元老院議員、地方の名士などが、きそって娯楽や食料を無料で提供することで、
(1)富と威信を示し、大衆の人気を獲得する
(2)為政者としての権威・尊厳を得る
(3)よき為政者として、永く記憶にとどめてもらう
といった目的を達成しようとしたと言われています。
というわけで、この映画で最も有名な十数分にわたる手に汗握る戦車競争シーンを、
授業では紹介しました。

ですがこの映画、別に戦車競争(競馬)の映画というわけではありません。メインは、
・復讐心は人を幸せにするのか
・赦しとは何か
・キリスト教は当時なぜ人びとの間に広まったのか
・病ゆえに差別された人びとの存在
・・・といった、とても重くて深いテーマと真っ正面から向き合う映画なのです。

ですので、というわけでもありませんがこの映画、上映時間が3時間半!もあります。
あまりに長いので、途中に「休憩」時間も設けられています。
ほかにも、「序曲」とか「間奏曲」とか、画面はまったく変わらないのに(かっこいい)音楽が
延々と流れたりします。
こういうのを見ると、昔の映画ってすごく贅沢な時間の使い方をしていたんだな、という
ことを改めて実感します。
現代の映画は、短い時間にいろいろ詰め込みすぎていて、ちょっと気ぜわしいつくりに
なっているのかも、と反省モードになってみたり。
とにかく、時間がある冬休みにじっくりと見るべき映画と言えましょう!

3.「戦艦ポチョムキン」

「ベン・ハー」も1959年という大変古い映画ですが、「戦艦ポチョムキン」に至っては
1925年制作という、今から90年近く前のいわば「古典」とも言える作品です。
白黒なのはもちろん、音声すらない時代ですから、サイレント映画です
(一応音楽はついていますが、これは第二次世界大戦後しばらくたってから、
つけられたものです。ただこのショスタコーヴィチ作曲の音楽が映像と絶妙にリンクしていて、
本当に素晴らしい)。

白黒で音声なし、なのですから、今の映画と比べれば格段のハンディキャップを背負って
いるはずなのですが、実際に見てみると、これがもう何とも言えない迫力&切迫感&表現力!
白黒でも、サイレントでも、映画はここまでのことが表現できるのか!という驚きの連続。

授業で紹介したのは、最も有名な「オデッサの階段」の6分間のシーンでしたが、
他にも見所あるシーンばかり。
食事として出された肉にウジ虫がわいていて、兵士たちが怒りをあらわにするシーンとか、
ショスタコーヴィチの音楽に乗って、戦艦がエンジンをかけてぐいぐい加速していくシーンとか。
そして何度見ても最高なのがラストですよ。
これがプロパガンダ映画であることも忘れ、ただただ感動。
ナチス・ドイツで宣伝大臣をつとめ、本来だったらソ連を徹底的に攻撃する立場のゲッベルスですら、
この映画は絶賛していたということですから、この作品の影響力もわかるというものです。

白黒だから、昔の映画だからと言って見ないのは損!
ぜひ休み中に見てほしい映画のひとつです。

それでは、のこり4本は「後編」ということでまたいずれ・・・。