2020年5月

コロナ新時代の展覧会 [2020年05月26日(火)]

西洋美術史担当の木下亮です。

昨年4月このブログで、私が関わりました「奇蹟の芸術都市バルセロナ展」の紹介をさせていただきました。ご記憶の方がいらっしゃれば嬉しいのですが。

 この展覧会は20194月から長崎県美術館を皮切りに、姫路市立美術館、札幌芸術の森美術館、静岡市美術館と全国を巡回した後、2020年2月8日に最後の会場にあたる東京ステーションギャラリーで開幕しました。
ところが展覧会は18日間一般公開されてから、新型コロナのために美術館が臨時休館となり、その後再開することなく45日に観客のいないまま閉幕を迎えました。

休館のまま最終日を迎えた東京ステーションギャラリー

とても残念な幕切れだったのですが、それでもひとつ喜ばしいことがありました。「バルセロナ展」でご一緒した企画会社の皆さんが、東京ステーションギャラリーの展示を記録した動画を制作してくださったのです。

「奇蹟の芸術都市バルセロナ展」 動画URLhttps://curators.jp/barcelona/

展覧会を見逃したという方がいらっしゃいましたら、ぜひ視聴してみてください。

ちなみにバルセロナの美術館からお借りしている多くの作品は、契約していた航空会社の貨物便が運航しないため、いまだ都内の倉庫に保管されたままだそうです。
これまでに私たちが経験したことのなかった、コロナ×アートの話題でした。

オンラインでも「手で考え、足で見る」? [2020年05月23日(土)]

西洋史の山本です。こんにちは。

ホームページでご存知の方も多いと思いますが、昭和女子大学では緊急事態宣言が発せられる前に、オンラインによる授業が開始されております。歴文でも先生方が智慧を絞り、学生の学びを止めないための努力を払っておられます。

ただし、問題となるのは歴文の特色である実践的な授業です。歴史文化の「実物」に触れ、そこから様々なことを学んでいく授業は、現在の状況ではどのようにおこなえばいいのでしょうか。ここでは私が担当しております「原典講読」という授業から、オンラインによる「手で考え、足で見る」の実践例を紹介したいと思います。

ZOOMでの授業風景

このブログでも何度か取り上げていますが、「原典講読」は3年次以降に西洋史の専攻を希望する学生を対象とした、いわばプレゼミ的な授業です。授業の名称からは、ひたすら史料や研究書を輪読している印象を受けるかもしれませんが、実際は幅広く、史料をめぐるコンテクストからICT技術の活用まで様々な活動をおこなっています。実践的な授業にも力を入れており、羊皮紙工房さんのご協力による羊皮紙の作成や、印刷博物館等の博物館・美術館の見学案やワークショップなどもおこなっています。

具体的には、以下のリンクをご参照ください。

「原典講読」で羊皮紙実習を行いました。(2019年05月17日)

「原点講読」で印刷博物館実習を行いました(2019年7月21日)

今期も、もちろんそれらの企画を実施する予定でしたが、新型コロナウイルス問題で、難しい現状です。それでも西洋史を深く学びたい学生たちに「原典」を直に感じ取って欲しいため、次のような授業をおこないました。

まず、YouTubeでも公開されているBBCの動画「中世写本の神秘の中へ」Inside the Mystery of Medieval Manuscriptを視聴します。これはクリストファー・デ・ハメルという作家を特集した動画です。彼は少年の頃より中世写本に魅せられ、ケンブリッジ大学コルピュス・クリスティ・カレッジの「パーカー図書館」の司書を長らく務めていた人物です。

BBC「中世写本の神秘の中へ」

その上で、動画内で紹介されていた「聖アウグスティヌスの福音書」(CCCC, ms. 286)という史料に注目します。これは6世紀末にイングランドへのキリスト教の布教をおこなったカンタベリーのアウグスティヌスに由来するとされる、非常に貴重な写本です。実はこの写本はデジタル化がなされており、スタンフォード図書館が提供するパーカー図書館のデジタル・コレクションから、高画質の画像を閲覧することが可能です。

Stanford Libraries – Parker Library On the Web

このデジタル・リソースを使って、学生たちにいくつかの課題を出しました。まずは上記の動画内でも紹介されていた、聖書の場面を描いた全面の挿絵が、写本のどの場所にあるか探すというものです。これはいささか簡単なものですが、学生自身でデジタルDBを操作し、写本はページではなく「葉」(folio) で数え、「表」(recto)と「裏」(verso)があることを知るためにおこないます。

この絵の「場所」を探せ!

次に、DB上に記されている「写本概要」の英文を各自で訳してもらいました。分量としてさほど多くはありませんが、専門的な言い回しがあり、なかなか難しいテクストです。しかし、さすが昭和女子大学歴史文化学科の学生たちです。全員が訳文を完成させてくれました。とはいえやはり間違いがいくつか含まれておりますので、私が解説しながら添削し、中世写本のもつ複雑な性格を確認しました。その後、写本に記されているテクストの検討に移ります――。

長くなりましたのでこの辺にしておきますが、近年目覚しく増加したオンラインにおける歴史史料のリソースと、向学心に満ちた歴文学生のおかげで、なんとか「手で考え、足で見る」を実践できたかなと自負しております。なお、昭和女子大学では6月より、オンラインによるオープンキャンパスが実施される予定です。受験生の皆さんは、コロナに負けずに進路に向けて頑張っていただきたいと思います。