新任の三野行徳先生にインタビューしました!②

皆さん、こんにちは。
今回は歴史文化学科3年生が、三野行徳先生にインタビューをしました。①に引き続き、インタビューの内容を紹介します!

―「三野先生が監修していらっしゃる展示についてお聞きしました。学生に向けて、ご紹介をお願いいたします。」

京都文化博物館・福島県立博物館『新選組展2022 ―史料から辿る足跡』
公式HP     ⇒https://shinsengumiten2022.jp/
チラシ(福島会場)⇒https://shinsengumiten2022.jp/image/flyer_fukushima.pdf

三野先生「ポスターのデザインは、デザインの人と、展示に関わる人の両方で考えています。メインの色は、一般的に新選組だと浅葱色を使うけれど、赤いデザインが描かれた史料も少し残っているので、今回は赤にしました。」

三野先生「この展示は5年くらい前から準備していたものです。一般的に言われているイメージと全然違う新選組の実像が、研究が進んできてわかるようになってきているので、同時代の資料から実像に迫ろうということで、京都文化博物館と福島県立博物館の学芸員の方々と企画しました。今回は新選組の政治活動がメインテーマです。
新選組と政治活動というと、あまり結びつかないと思います。しかし、実際には近藤勇はひたすら政治活動をしていて、その様子をたくさん手紙に書いて遺していました。そこに注目した展示になります。新選組のイメージを変えるためにいろんなことをやってきましたが、そのひとつの集大成がこの展示です。」

―「既存のイメージとはかなり異なるのでしょうか?」
三野先生「フィクションは面白いと思うし、興味を持つきっかけとして良いと思います。ただ、やはり実像がわかる史料が遺されているので、それもちゃんと知ってほしいです。
近藤の政治活動はすごく面白いです。かなり高度なことをしていて、同時代の史料から見ると優秀な政治家でした。加えて、近藤は農村出身なのですが、農村の課題を背負って政治活動をしていたことがよくわかるので、そのへんも知ってほしいと思います。」

―「農村のための政治活動が多かったということですか?」
三野先生「そうですね。近藤の政治目標は攘夷の実現です。なぜ攘夷を目指すかというと、開国で物価が高騰してしまい、特に関東農村は全然暮らしていけない状況になってしまいました。今すぐ攘夷をしないと地域がもたないから、将軍に攘夷をさせるというのが近藤の政治活動でした。だから、将軍や幕府にはたいへん批判的でした。近藤はそういった主張や活動を、多摩地域の仲間や農村の名主に手紙で知らせていました。地域社会の課題を背負って京都で政治的な解決を目指そうとしていたのが、近藤の実際の姿です。」

三野先生「パッと見てよくわからないので、古文書は展示物としてあまり好まれません。しかし、今回は近藤の手紙を見せるのがコンセプトなので、ポスターの文字も近藤の手紙から抜き出しました。この「尽忠報国高下無御座」では、近藤は、自分たちは百姓出身だけど尊王攘夷を目指すのに身分の上下は関係ないだろうと主張しているのですね。」

―「フィクションのイメージが強すぎると思います」
三野先生「少しずつ、政治集団としての新選組のイメージを描いた研究書とかも出ているのですが、それ以上にフィクションが増えているので、あまりイメージは変わらないですね。
実際に展示室に行って近藤の書いた手紙を見て、こういうこと考えていた人なんだと伝わるといいなと思います。
(企画展示が開催される)福島県会津若松市は観光地としても良い場所なので、ぜひ夏休みに行ってほしいなと思います。白虎隊の記念館はいろんな意味で雰囲気があります。」

―「三野先生はどんなゼミを担当されるのでしょうか?」
三野先生「来年度からゼミをやることになっています。基本的にアーカイブズ学の内容にする予定です。史料そのものや、史料を遺していく文書館や博物館、図などに関するゼミという感じで考えています。そもそも何が史料なのか、史料保存はどうするのか、それを歴史的に考えるなど、アーカイブズに軸足を置いたゼミになると思います。
現場のことを知ってもらいたいという思いがあります。実際に文書館や博物館、図書館でどんなことをやっているのか、いまどんなことが課題なのかを考えるきっかけになれば良いと思っています。展示室の先はなかなか外部の人間にはわからないことなので。」

―「博物館は特に学芸員と距離があるように感じられます」
三野先生「学芸員は普段は事務室にいるからですね。ギャラリートークは、特に特別展で展示を説明する機会で、展示を作った学芸員がここを見てほしいと伝える、重要な機会になります。そこで質問を受け、「こうじゃないんですか」と意見を言われると、展示を作った側もいろいろ気づくことができます。その対話ができることがいちばん良い。
学芸員も時間があれば基本的に呼び出しにも応じてくれますし、ギャラリートークはいちばん質問できる機会が多いです。展示室からもう半歩くらい博物館に入っていく機会になります。展示をした側も、キャプションで伝えられることは限られているので、実はいろいろ話したいことがあります。」

―「学芸員ともっと近づけるような仕組みがあればいいですね」
三野先生「それは大きな課題ですね。学芸員は、展示が開く一週間前くらいがいちばん大変で、でも展示が始まると、何かないとなかなか事務室から出てきません。ただ、呼び出して質問をしたり、ギャラリートークに行ってみたりして顔見知りになればけっこう気軽に話せるようになれると思います。お客さんから声をかけられることは珍しいですしね。」

三野先生、貴重なお話をありがとうございました。
先生のご趣味や学生時代の経験をはじめ、アーカイブズの意義と現状の課題に関するお話をいただき、ご専門への理解が深まりました。
昭和女子大学は社会に先駆けてアーキビスト養成課程を取り入れています。私たちも、アーキビスト養成課程を履修しており、アーカイブズやアーキビストの社会的な重要性を実感しています。
アーカイブズ学やアーキビストに興味がある方は、ぜひ一度、三野先生の授業を履修してみてください。