公認心理師カリキュラムでは,公認心理師に必要な知識や技能について,「講義」→「演習」→「実習」と段階的に,そして体験的に学びを深めていく構成となっています。
その中でも,「心理演習」では,授業の前半に心理検査や模擬カウンセリングなどの演習を通じて,次の段階の「心理実習」において,実習を行う際に必要な基本的な知識や技能を体験的に学んでいます。
そして,授業の後半では,前半の演習で学んだことをもとに,架空の事例(相談ケースなど)を用いた事例検討を行っています。
事例検討では,架空の事例を通じて,
- 心理的アセスメント
- 支援計画の作成
- 多職種連携および関係機関との連携
といった具体的な心理的支援のプロセスを模擬的にではありますが学んでいきます。
?心理的アセスメント…観察や面接,心理検査などを通じて,支援の対象となる人が抱えている問題だけでなく,その人の強みなども含めた全体像を理解すること。支援の方向性を決める上で重要なプロセス。 |
学生たちは事前に自分が公認心理師になった前提で架空事例を読み,どのように理解し,どのように支援するか考えた上で授業に参加します。そして,授業ではグループでミニ事例検討会を行ってもらいます。その後,グループで出た意見を全体でシェアし解説をする流れで授業は進んでいきます。
保健医療分野の事例検討では,精神疾患と身体疾患の事例を扱いました。
精神疾患に関しては主にうつ病を題材に,診断と心理的アセスメントの違いや,症状だけでなくその背景となるストーリー(症状が出るようになった経緯)まで含めた理解が重要であることを学んでもらいました。
身体疾患に関しては,精神科に所属する公認心理師が直接カウンセリングをするのではなく,患者さんへの対応について他科から意見を求められた事例を題材にしました。
具体的には,がんの手術後に医療スタッフへの攻撃的な言動を表すようになった患者さんの対応に困った診療科からアドバイスを求められるという,精神科コンサルテーション・リエゾンについて学んでもらいました。
?精神科コンサルテーション・リエゾン…身体疾患に伴う不安,抑うつ,不眠などの精神症状に対して,精神科医や看護師,公認心理師,精神保健福祉士などが専門性を活かして他科のスタッフと連携しながらコンサルテーション(助言)を行ったり,リエゾン(スタッフ同士やスタッフと家族をつなぐ橋渡役)機能を担うこと。 |
これまであまり学んだことのない役割に学生たちは最初はやや戸惑っていましたが,公認心理師として期待されている多職種連携の重要性を学んでもらえたようです。
以上のように,「心理演習」における事例検討は,あくまで架空事例を通じたものですが,これまで学んだ知識を支援に活かすプロセスを体験する重要な位置づけとなっています。
(「心理演習」担当教員)