2021年7月に,立川市教育委員会教育支援課から講演会講師の依頼をいただき,心理学科助教・岩山 孝幸が講演会講師を務めました。
当日は「ワーキングメモリに困難を抱える子どもへの指導法~心理検査に頼らずに明日からできる工夫~」と題し,ワーキングメモリの基礎知識と具体的な指導上の工夫について,体験的なワークも盛り込みながら講義を行いました。
講演会は感染症対策を徹底し,オンラインも併用したハイフレックス(同時中継)型として実施され,約60名の教職員の方々にご参加いただきました。
講演会のメインテーマである「ワーキングメモリ」ですが,皆さんご存知でしょうか?
「ワーキングメモリ」(working memory)とは,「メモリ」から分かるように記憶に関する心理学用語です。しかし,単に何かを覚えるだけを意味するものではありません。
たとえば,「りんご…ねずみ…たいこ」という単語を聞いて👂,それを逆の順番で答えるという問題が出されたとします💡
このとき,頭の中では「りんご・ねずみ・たいこ」という単語を覚えておきながら,同時に「こ,い,た…み,ず,ね…」と逆順に並び替えるという作業をしなければなりません。
つまり,単なる記憶ではなく,記憶した情報をもとに頭の中で一定の作業をする際に働くのが「ワーキングメモリ」なのです。
当日もワークを通じて,ワーキングメモリの働きを体験してもらいました。
このワーキングメモリには個人差があるため,ワーキングメモリに困難を抱える児童や生徒が教育現場には一定数存在することになります。
具体的には,
- うわの空
- 忘れ物が多い
- 挙手が少ない
- 指示通りにできない
などの行動上に,ワーキングメモリの困難が表れることがあります。
こういった場合,すぐに医療機関の受診やあるいは心理検査などが提案されることもあります。
しかし,講演会を通じて一番伝えたかったことは「現場でできるちょっとした工夫こそが大きな支援となり得る」ということでした。
例えば,一度に複数の情報を頭に留めておくことが難しければ,そもそも覚えておかなくても良いように教室の環境を整える(=環境調整)といった工夫が考えられます。
このような支援方法について,就学前から小学校までをメインに,学びの姿勢づくりから国語・算数といった教科指導まで含めできる限り紹介しました。
2時間で盛りだくさんの内容となったため,やや駆け足となった部分があったことは反省点です💦
しかし,参加いただいた先生方からは,
- わかりやすかった
- 自分の学校にも伝えたい
- 希望となる話だった
- 保育園でも取り入れられそう
などご好評いただき,ほっとしております。
多忙を極める現場の先生方の負担にならずに,「明日からやってみたいと思える指導上のヒント」を少しでもお伝えできていれば幸いです。
このように,大学教員は大学内で授業を行うだけでなく,学外のニーズに合わせて地域貢献を行うことも重要な役割となっています。
学内の知的資源や研究成果などを,少しでも多くの方に役立ててもらえるよう,今後も積極的に活動をしていきたいと思っています💡
(心理学科助教・岩山)