現代教養学科ブログリレー -粕谷先生-

<希望>をもって学ぶということ

 

先週金曜日からオンライン授業が始まりましたが、皆さんいかがでしょうか。

教員も試行錯誤を重ねながら授業運営に取り組んでいます。このような深刻な局面の中で様々な課題もありますが、一緒にこの新しい取り組みを構築していきたいと思います。

 

さて、今日は、私が昨年「学ぶ」ということを再確認することができた体験をご紹介します。

 

2019年9月10日~17日の8日間に亘り、ロシア・モンゴル・中国三ヶ国の5大学・研究機関を訪問し、学術研究交流を行いました。金曜日に学科Blogをアップしてくださったフフバートル先生が企画をしてくださり、現代教養学科教員の瀬沼頼子先生、福田淳子先生、粕谷美砂子の4名が参加しました。

 

まず最初に、北京経由でロシア連邦ブリヤート共和国ウラン・ウデ市に向かい、ブリヤート国立大学アジア学院に行きました。そこで日本語学科を中心とする学部学生と大学院生約60名に対して、私たち各自の研究内容について講義を行いました。いずれの講義も、学生・大学院生から次々に質問が出て、活発な質疑・応答がなされました。ロシアの学生たちが日本について熱心に学ぶ様子に、私はこれだけの多くの学生が「日本」について学ぶ意欲があることに深く感銘を受けました。

その後、バイカル湖の農家民宿を見学し、女性経営者が小さいながらも地域資源をうまく活用し、6次産業化の事例をみることができました。この時にとても流暢な日本語で通訳をしてくださった女子学生は、私たちのためにノートに説明内容を記載し、バイカル湖にまつわる伝説を紹介してくれました。私たちの質問や話を聞き漏らさないようにしている姿に、改めて「学ぶ」ことについて考えさせられました。彼女は日本のホテルに就職が決まっているととても嬉しそうに話してくれました。彼女はこの大変な中で、どうしているでしょう。

 

(写真:上の3枚は、ブリヤート国立大学アジア学院での講義の様子)

 

(チベット仏教寺院)

 

次に、同じウラン・ウデ市にあるアジア研究としてロシア連邦内最大の規模であるロシア科学アカデミー・シベリア支部を訪問しました。6つある研究所の中の、モンゴル・チベット・アジア研究所の所員の方々を中心に、モンゴル研究、遊牧民族文化、歴史学、社会学、仏教と宗教等の研究者らと意見交換を行いました。隣接するブリヤート科学センターでは、生物多様性、考古学、生物学、チベット医学、地震学、地質学、モンゴル学、仏教学、チベット学等の研究内容に関する展示を視察し、自然科学及び社会科学両分野からの学際的な研究内容とその展開を把握することができました。

まさに、現代教養学科で学こととの関係を考えることができたひとときでした。

 

 

 

 

 

 

 

(ブリヤート科学センターで貴重な資料の説明を受ける)

 

9月14日には、ウラン・ウデから鉄道で国境を越え、車窓から、大草原に落ちる夕日や走る馬の群れといった壮大な風景を眺めながら、翌草朝モンゴル国ウランバートル市に到着。モンゴル国立教育大学 メディア学科を訪れました。モンゴル国にメディア学科のある大学は10数校あるそうですが、その中でも最上位の大学です。教員は、意欲的に研究・教育活動を行っており、刺激を受けました。

その後、日本企業に就職した息子をもつという、放牧地でゲルに住む家族を訪れ、遊牧民の生活文化について調査を行いました。

 

(写真:上の2枚は、モンゴル国立教育大学 メディア学科での情報発信)

 

(写真:上の2枚は、ゲルでの生活と馬乳酒(アイラグ))

 

9月16日には、中国北京市の、中国少数民族教育の最高学府として人材を養成している中央民族大学メディア学院を訪問しました。若手教員の主な研究テーマは、中国の少数民族のメディア史、グローバル化における国境を跨る民族のメディア、華僑によるメディアの多様化、河西回廊と民族文化に関する研究等でした。「柘榴」と表現される中国の多民族の研究とメディアとの関連について多くの示唆を得ました。

(写真:中央民族大学メディア学院での学術交流の様子)

 

続いて、北京大学 外国語学院 日本文化研究所、日本常民文化研究所の教授らと学術交流を行いました。アジア言語文学、モンゴル文学、近現代文学研究を話題に、研究の学際性を確認することができました。福田淳子先生が昭和女子大学の近代文庫を紹介し、加藤周一、柳田邦男、金子みすずなどの翻訳研究についても意見交換をしました。

その後、歴史史跡を数多く有している自然豊かな北京大学の広大なキャンパスを案内していただきました。

 

(北京大学のキャンパス内)

 

以上、私が昨年「学ぶ」ということを再確認することができた体験をご紹介しました。

私たち教員も、このようにして教育・研究にかかわる知識・情報・新たな知見をインプットし、その成果を学生の皆さんにアウトプットする努力をしています。

 

最後に、「学ぶ」ことに関する有名な詩のご紹介をします。

 

「教えるとは、希望を語ること

学ぶとは、誠実を胸に刻むこと」

 

これは、フランスの詩人 ルイ・アラゴンの-ストラスブール大学の歌-(大島博光変編『フランスの起床ラッパ』1951年、三一書房、所収)の一節です。アラゴンがこの詩を書いた背景も調べてみてください。

 

この一節の中に出てくる<誠実>という言葉は、皆さんよく知っていると思います。

再度意味を見てみると、「他人や仕事に対して、まじめで真心がこもっていること」(『広辞苑』第六版)とあります。新型コロナウイルス感染症の影響を考え、私たち一人ひとりの行動が試されている今、この<誠実>の重要性を痛感します。

 

山口裕之『「大学改革」という病』(2017年、明石書店)の中で、学問の本質とは「調べ、知り、考察し、話し合い、共有できる知識を作っていくこと」、「考える」ためには、「まず関係する事実をよく調べ、問題を可能な限り多面的かつ具体的に考察し、論理的に整合的な議論をする必要がある。意見が対立する相手とは話し合いを重ね、お互いに納得できる地点を探していくこと、あるいはそうした地点を共に作り上げていくことが大切。」と述べています。現代教養学科で皆さんが学ぶということは、こういうことかなと思います。

 

新型コロナウイルス感染症が世界的に蔓延している今、この困難をどう乗り越えるか。

なかなか<希望>を語るのは難しいのですが、一緒に学び、考えていきましょう。

リアルでお会いできる日を楽しみに。

Stay Home, Stay Safe, and Stay Positive!

粕谷 美砂子