シム チュン・キャット先生による「社会問題概観」という授業は、生徒が自由に選んだ社会問題のテーマについて調査し考察をまとめたうえで、毎回の授業に2人ずつが発表して、それについて全員で意見を交換するという参加型授業です。『社会問題』と名前にはあるものの、ニュースで取り上げられるような堅いテーマだけではなく日常の中で感じる「違和感」を取り上げるユニークなものもあって、毎回興味を惹かれるものばかりでした。多種多様なテーマについて、クラスメイトと真剣に議論できることが、この授業の魅力です。
そして第14回となる特別授業では、外部講師として獨協大学の特任講師であるアメリ先生にお越しいただきました。アメリ先生はフランスのご出身で、今回は「女性の政界進出」について日本とフランスを比較し、一緒に考えようという内容で講義をしていただきました。
日本のジェンダーギャップ問題については今まで様々な授業で触れられてきましたが、詳細なデータをもって日本と外国について比較するというのは、新たな視点を得る貴重な機会となりました。とりわけフランスにおける政治制度ができあがってきた歴史や現行政治制度での女性の政界進出にまつわる問題と取り組みなど、事細かに教えていただきました。
フランスではパリテの原則をもとに、ジェンダークオータ制が取り入れられています。パリテ(parité)は「男女同数」という意味を持ち、代表職や意思決定機関の権力を男女間で平等に分かち合うための基本原則として、左派・右派関係なく幅広い支持を得ています。政治に参加する男女を同数にするために、比例代表制の選挙では名簿順を男女交互にする、小選挙区制の選挙では候補者数が男女同数でない政党に罰金制裁が科される、などの適用方法が実施されています。これらの影響もあって、2022年のフランスのジェンダーギャップ指数・政治の分野では、議会における女性の割合が39.5%でした。日本の9.7%に比べると、その差は歴然です。ただフランスでも、比例代表制の名簿の一番目はどこも男性であったり、小選挙区制選挙では意図的に激戦区に女性を配属したりするなど、いわゆる「抜け穴」が存在することで、50%には達していないそうです。このような「抜け穴」を突くような戦術が考案されている現状から、数値には表れない部分に、男女格差の是正にまだまだ課題が残っているのだと感じました。
普段と異なる授業形態ということもあり、クラスメイトの授業中の様子はいつもとは違ってよりやや緊張気味という感じがしましたが、アメリ先生のお話を聞いて、幾つかの質問も出て、各々自身の考えを深めているという印象でした。アメリ先生のお話をもとに、日本で女性の政界進出を推し進めていくためには何をしていくべきか、深く考察するための材料を得ることができました。貴重なお話を聞けてうれしく思います。アメリ先生、ありがとうございました!
(記事:2年・野村)