孫たちにキュウリの話をするトルストイ

本学の創立者記念講堂内の学園記念室に、下の写真のような銅製の像があります。特に題名はついていないのですが、孫達にキュウリの話をするトルストイの写真をもとに、ロシアで制作され、本学に寄贈されたものではないかと思います。

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レフ・トルストイは、とても子ども好きで、どんなに長い時間でも子どもと話をしていたそうです。子どもたちが特に好きだった話の一つが、キュウリの話でした。以下のお話は田中泰子著「L.トルストイとキュウリの話」『カスチョール 31』(2013)を参考にしました。

 あるとき男の子が畑で小ちゃな小ちゃなキュウリを見つけました。男の子は、それをパクッと一口で食べてしまいました。(ここでトルストイが本当にキュウリを噛んでいるようにポリツ、ポリツ、パリツと音を立てると、孫達は本当にキュウリを食べているのかと不思議そうな顔になったのだそうです。そこでトルストイが口の中のキュウリをゴクリと飲み込む音を出すと、子どもは本物のキュウリだ!と喜びます)さて、男の子がもっと先に歩くと、今度はもう少し大きなキュウリを見つけました。(お話の中の男の子が次々と少しずつ大きなキュウリを見つける度に、トルストイはその大きさを両手の指と指の間隔を広げながら示し、また、あたかもその男の子がキュウリを食べているように音を立てながら、口をモゴモゴさせます)男の子は、食べても食べて次にはもっと大きなキュウリを見つけて、(4本目のキュウリは90センチの大きさに、7本目はその男の子の大きさ位までになってしまします)とうとう畑のキュウリは全部なくなってしまいました。

孫達は、おじいちゃんのお話と、キュウリを食べる音と、キュウリが大きくなりすぎて、とうとう最後には指と指の間隔でその大きさを示すことが出来なくなってしまったことが面白くて、お話が終わった後も、家族や出合った人みんなに身振り手振りで、キュウリのお話をしたそうです。おじいちゃんがやったようにキュウリを噛む音をまねしようと、頬を膨らませ、ポリツ、ガリツとやってみるのですが、とうとうおじいちゃんのようにはうまくはできなかったそうです。

田中泰子氏によれば、アレクセイ・セルギエンコ著『L.トルストイはどのようにキュウリの話を語ったか』(1907)という小冊子で、セルギエンコ氏は、「どうしてこの話が子ども達に気に入られたのだろう?それはトルストイの話し方がとても面白かったからだ。(中略) つまり、何でもないような、つまらない話でも意味があるということだ。トルストイはいつも言っていた。真面目な大作だけでなく、どんな話や遊び歌でも、それを聞いた子どもたちが楽しげで気持ちよさそうにしていたらそれは役に立ったということだ、と。」と書いています。

2020年度から小学校3,4年生で英語活動が導入され、5、6年生は正課としての英語授業が始まります。英語の導入期に、子ども達がこんな風に英語のお話を聞くことが出来るといいですね。