どうして英語が話せないのだろう [2017年07月21日(金)]

 グローバル人材育成の推進に力を入れている日本。しかし、随分長い間、学校で勉強しているのに、どうして英語が話せないのだろう、と聞くことがよくあります。
 小学校は2020年度から、中学校は2021年度から新学習指導要領で学ぶことになり、外国語(英語)は、小学校では現在、5年生から行っている「聞く」「話す」を中心に英語に親しむ外国語活動を、3年生に前倒し、5、6年生では新教科「英語」を置き、「読む」「書く」を加え、教科書を使い成績もつけることになります。そして、授業は現在の週1コマから2コマに増やして行われます。CEFR(Common European Framework of Reference for Languages;ヨーロッパ言語共通参照枠)で示される、どのような機能が果たせるかという標準に従って、小学校ではPre-Aレベルを、中学校ではA1レベル、そして高等学校では、A2以上、B1レベルまでの力を付けることを狙っています。B1レベルで、ビジネス英語の入門程度が使える程度と考えて良いでしょう。
 これまで小学校での英語活動が、クラス担任が中心となって、英語話者の補助を得るなどしながら、主に英語で指導されてきたことや、高等学校では現行の学習指導要領から、英語で指導することが基本となっていることから、中学校の外国語(英語)新学習指導要領では、「授業は英語で行うことを基本とする」と明示されました。
 中学・高校の英語の授業が英語のみで行われてきたという現役大学生の数はそう多くはないと思いますが、特に英語に力を入れている学校では、それが普通だったかもしれません。そもそも、どうして英語で指導することが必要なのかは、「文法は知っているのに、どうして英語が話せないのだろう」という疑問への答えに直結しています。
 私も含めて、日本のほとんどの学校では「意図的」に英語を学んできました。教科書に出てくる単語の意味を理解し、読めて、言えるようにし、文法事項も、ルールを学びます。これらの事項を勉強して繰り返し練習し、英語が使えるようになろうと努力してきました。先生も英語を使って教えてくださり、典型的な教室英語と言われるような、少々パターン化した英語を駆使して教えていただいという方もあるでしょう。このような学びを「意図的学習」と呼びます。暗記、練習を繰り返し、暫く使わないと忘れてしまうことが多い学び方です。
 「意図的学習」に対して、「偶発的学習」というタイプの学習があります。これは、特に学ぼうと思っていなくても、はじめは、「何のことを言っているかな」程度しかわからなくても、何回も耳にしたり、目にしたりすると、つまりインプットが繰り返されるうちに、「だいたい~ということかな」と思うようになり、さらには「あっそうか、きっと~ということだ」と推測できるようになり、そのうちに自分でもその語彙や表現を使うようになって、相手が理解してくれると、「ああ、こう言えばいいんだ、わかったぞ」と確信を持つというプロセスを通る、学習です。母語である日本語の学習でも、特に小さい子供は、ほとんどをこうして学ぶのだと思います。
 小学生でも高学年になると、偶発的学習だけでなく、意図的な学習も得意になります。一方、大人になっても、偶発的学習は続いています。教科として英語を勉強する環境にあると、指導者も学習者もどうしても意図的学習のみに偏重し、偶発的学習を忘れがちです。言葉を学習するうえで、特に年齢が低いうちは、この偶発的学習が効果的だと言われています。英語という言葉を学ぶことよりも、コミュニケーションを取ることに専念して、相手が伝えようとしていることを理解し、それについて、なんとか、自分の思っていることを伝えようとするからです。英語の教師が英語を使って指導するのは、意図的な学びが中心となりがちな授業の中で、偶発的な学びの機会をできるだけ作りたいという目的があります。これからの、日本の英語教育で一番大切にしなければならないのは、日本語を介さないで、英語で考えをまとめ、伝えることが出来る力の育成ではないでしょうか。どうして英語が話せないのか、それは、偶発的な学習が起こるような、何とかして英語の話し手や書き手の気持ちや考えを理解しようとしたりすることや、とにかく聞き手や読み手に自分の気持ちや考えを理解してもらおうとしたりするような、“必死になる”環境にほとんどいることがないからです。留学することは、こうした意味でも、とても大切な経験になりますよね。
 とにかく、あらゆるチャンスをみつけて、英語を使ってみること。できれば、相手がいて、コミュニケーションがとれたかどうかを確認できる環境がいいのですが・・・。技術が発達して、定型文ではない英語で対話をしてくれるロボットなどが登場するといいですね。

(「英語学習用の絵本」 金子学長のホームページより)
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