つもりちがい十ヶ条

 本学では『倫理学』とは別に、『実践倫理』という授業があります。大辞林(第3版)によれば、「倫」は「人が守るべき道」、「理」は「物のすじみち」、そして、「倫理」は、「人として守るべき道。道徳。モラル」の意味とあります。また、「実践」は、「理論や理念を行動に移すこと」と書かれています。
 私が、中高部から大学の教員に籍を移した頃は、理事長・学長の『実践倫理』の授業を、該当学年のクラス担任も時間が合えば聴講していました。その頃から、『実践倫理』では、自校教育が行われ、昭和女子大学の教育が目指すものは何か、本学の学生としてどのように生活すべきか、などの話をお聞きしました。
 そのお話の中で、今でも記憶に残っている内容の一つが、「つもりちがい十ヶ条」です。学生席の後ろの方で聞いていて、身が引きしまる思いがしたのを覚えています。それ以来、何か新しいことをスタートする時には、この十ヶ条を読み直します。
 そもそもこの十ヶ条は、長野県飯田市にある元善光寺という寺の住職が書いたものと言われています。元善光寺は、推古天皇10年(602年)からある古いお寺で、この地の住人が大阪で見つけて持ち帰った善光寺如来の本尊が、勅令によって長野県長野市の善光寺に遷座されたため、この寺は元善光寺と呼ばれているとのこと。元善光寺には木彫りの本尊が残されているので、善光寺と元善光寺の両方を参らないと「片参り」と言われるほど由緒あるお寺だそうです。

つもりちがい十ヶ条
高いつもりで低いのが  教養
低いつもりで高いのが  気位
深いつもりで浅いのが  知恵
浅いつもりで深いのが  欲望
厚いつもりで薄いのが  人情
薄いつもりで厚いのが  面皮
強いつもりで弱いのが  根性
弱いつもりで強いのが  自我
多いつもりで少ないのが 分別
少ないつもりで多いのが 無駄

 いくつか耳が痛い言葉はありませんか。いつ読んでも、少なくともどれかひとつは(時には2,3も)「アーッ!気をつけなければ」と思いあたることがあります。後期を迎え、夏の暑さや急激な天候の変化も一段落し、読書の秋、スポーツの秋、芸術の秋、そして食欲の秋となりました。「つもりちがい」を読み直し、新たな気持ちで気を引き締めて、前進を続けましょう。

(初秋を迎えた昭和之泉 手前は萩の花)