「歓」の像は今どこに

 正門を入って左手に小さな木陰とベンチがあったのを覚えていますか。そこに1メートル程の像が据えられていました。この一画は、大学9号館が完成して246号沿いの土地の一部も本学が購入したため、正門あたりがより広く使えるようになり、現在改装中です。

 そこにあった像は「歓」と名付けられたもので、現在は大学5号館の中高部よりのグランドの植込みに移動しています。

(大学5号館の中高部よりのグランドに移動した「歓びの像」)
  

 作者は奥田小由女(おくだ さゆめ)氏。旧姓は川井小由女です。1936年の11月26日に大阪に生まれ、ほどなく現在の広島県三次市に移りました。年代は違いますが、たまたま誕生日が私と同じです。東京に展覧会を見に来てそこで人形と出会ったのがきっかけで、創造的な人形作品の制作に取り組みはじめたとのこと。それ以来、数々の美術展や人形展などで受賞や入選を重ね、1972年の第4回、1974年の第6回日展で特選にも選ばれました。その後、銀閣寺の東求堂とつながる弄清亭(ろうせいてい)の襖絵を描いたことで有名で、また、本学の創立者記念講堂に掲げられている「秋嶽晩照」の作者でもある、奥田玄宋画伯と結婚。その後も日展で文部大臣賞や日本芸術院賞を受賞し、1998年には日本芸術員会委員、2008年には文化勲章に次ぐ栄誉である文化功労者に選ばれました。日展常務理事から、2014年には日展理事長となり、現在に至っています。

 「歓」の像は、川井氏の作による木彫の像を拡大してブロンズ像にしたものだそうで、本学の創立50周年(1970年)を記念して、中高の卒業生から贈られました。

(中高部にある「歓」の像の説明書き)

 11月中旬を過ぎると5号館や中高部前の銀杏の葉が黄色に輝き始めます。ぜひ、若い女性のはつらつとした姿を現した「歓」の像を見ながら、学園の秋をお楽しみください。