「有職故実」って何でしょう

 10月22日(火)に行われた「即位礼正殿の儀」。今上天皇のご即位をお祝いすると共に、平安絵巻のような景観に、日本文化のすばらしさを改めて感じた方も多いでしょう。
 テレビの中継では、高御座に入られる今上天皇と御帳台に入られる皇后陛下のご装束について、天皇陛下は「黄櫨(こうろ)染御袍(ぜんのごほう)」と呼ばれる束帯で、これは天皇のみが着用する装いで、淡く赤みがかった茶色が特徴だという説明がありました。皇后陛下は十二単姿。儀式を見守る皇族の皆様も、男性は束帯、女性は十二単を身にまとわれていらっしゃいましたね。
 朝廷や公家、武家などが行う昔からの行事や儀式・制度・官職・習慣の先例やそれらを研究する学問を有職故実(ゆうそくこじつ)と言います。私が大学に在学していたずっと昔、「有職故実」の授業は、河鰭実英教授がご専門でした。

 私は英米文学科で学んでいたため、残念ながら先生のお授業を受けることは無かったのですが、河鰭先生は、東京帝国大学文学部をご卒業後、大正天皇の侍従をされ、1949年から本学の教授として学生のご指導をして下さいました。そして、1969年の4月から第3代の学長にご就任されました。有職故実をはじめとして、日本や世界の服飾史に関する図書をたくさん世に送り出されています。
 今年の6月に、昭和女子大学人間文化学部歴史文化学科の学生が、久保貴子先生の『有職故実』の授業を次のように紹介しています。

 「授業では、宮中の制度・儀式・装束などの有職全般にわたる平安時代の形成過程を学ぶとともに、それ以降の廃絶、中絶、復活や再興など歴史的変遷にも着目しています。『有職故実』は上級生優先ですが、2年生から履修することができます。開設学科である歴史文化学科や日本語日本文学科の学生だけでなく他学科の学生もたくさん履修しており、文系理系問わず人気の授業です。・・・有職故実というと、私たちには関わりのない昔のことのように思えますが、実は現代に息づいているものも多くあるようです。・・・有職とは、知識があることであり、故実とは古の事実、制度・儀礼上の古例習慣(先例)を指すそうです。・・・毎回の授業の先生の熱のこもった説明は大変聴き応えがあります!興味のある方、ぜひこの授業を履修してみてください!とても楽しいですよ~!」
 有職故実は、国文学、日本史、文化史を始め隣接する研究にまで広がりを持つ大変重要な分野です。そして、今年、「即位礼正殿の儀」をテレビや新聞などを通して見ることができたことは、祖先が育んできた文化の一つである日本の儀式典礼の意味や精神を知ることに繋がり大変幸運でした。