今回は、ボストンキャンパスで行われている講義「Food Production and Culture」の様子をご紹介したいと思います。この講義は、後期15週留学の際に履修できる科目になります。先日、ボストンキャンパスのスタッフより、そのフィールドトリップのレポートが送られてきました。その中より一部を抜粋してご紹介します。
管理栄養学科では2年後期から「公衆栄養学(Public Health Nutrition)」の中で、食環境(Food environment)について学びます。講義の中で「食の砂漠(Food desert)」1)について、先進諸国や日本の事例についても学んでいます。今回のフィールドトリップでは、まさにその「食の砂漠」についてボストンの状況を学んでおり、日本よりも格差の大きい米国の深刻な食環境の状況と、その対策についてリアルに学んだようです。
以下、スタッフのレポートより(抜粋)
イースティー・ファームは、空き地を利用してオーガニックの野菜を育て、無料または低料金の生鮮食品、食事、コミュニティ支援を提供することで、東ボストンのコミュニティが暮らしやすくなるよう取り組んでいるNPO団体のひとつです。
イースティー・ファームのスタッフであるロベルトさんは、「”食砂漠 “という言葉を知っている人はいますか」と学生たちに尋ねます。
「食料品店がない?」と学生が答えます。
「そうです!」ロベルトは答えると、つい最近まで、東ボストンでは4万人の人口に対して1軒しか食料品店がなかったことを説明してくれました。それを聞いた学生たちは大変ショックを受けていました。ロベルトは、「食の砂漠」1)、つまり「食のアパルトヘイト」2)中で暮らすことがいかに困難であるか、さらに東ボストンに住む人々の多くが不法移民で、住居や生活必需品を買うのに苦労していることを説明しました。
農園に入ると、ロベルトはこの空間が自由で誰にでも開かれていることを説明しました。なんと、ロックの暗証番号は0000だそうです。「厳重なセキュリティでしょ?」と ロベルトは笑ってました。週末には地域の人々が集まって土を耕し、新しい作物を植え、収穫を手伝うのだそうです。 (中略)
東ボストンは、人口に対して緑地が1%しかなく、もっと木を植えれば涼しく、より住みやすい街になるとロベルトは説明します。そして、イースティー・ファームのような取り組みが、地元産の健康的な農産物を東ボストンの地元レストランやビジネスを通じて、住民に提供されることに役立つという話をしてくれました。
サルバドール料理のレストランを経営する彼の友人は、イースティー・ファームの野菜が提供されたおかげで、低価格のベジタリアン・タコスメニューを加えることができるようになったそうです。 (中略)
そして、最後に引率したスタッフのレポートは、「街中の小さな空き地を利用した地域農園の役割や貢献について、学生たちはたくさんのことを学んだフィールドトリップでした。」と締めくくっています。
日本で「食の砂漠」の言葉を知っていても、なかなかリアルにその現実を感じることはできません。また、ボストンに観光で行ったとしても、東ボストンに足を踏み入れる日本人観光客はそう多くないと思います。講義「Food Production and Culture」内で学び、現地スタッフが案内をしてくれるからこそ、知ることのできるリアルな食の現実だと思います。学生たちはこの現状を目の当たりにして、何を感じ、何を目に焼き付けて帰ってきたのか、得難い学びを得ているだろうことは確かです。
1)食の砂漠
スーパーや食料品店が少なく、新鮮な野菜や果物を手に入れるのが難しい地域のこと。また、食の砂漠はファーストフード店が比較的多く、貧困層の多いエリアに集中しており、事実、富裕層が集まる西カリフォルニアにはファーストフード店が16%なのに対し、貧困に苦しむ南カリフォルニアではその数は45%にまでのぼる。
2)フードアパルトヘイト
新鮮で体に良い食べ物の値段がファーストフードや加工食品より高いため、経済的に恵まれていない人々は体に悪いものしか食べられない状況。