<授業風景>
今日は日本語教育を専攻する大学院の様子について少しご紹介します。以前にも<授業風景>で少し紹介しましたが、日本語教育専攻の大学院生は、現在修士課程に8名、博士課程に4名在籍し、他にも研究生や科目等履修生として授業に参加する学生たちがいます(写真は修士課程のメンバー)。さて、日本語教育専攻の大学院で学生たちはどんなことを研究していると思いますか? 日本語教育専攻の大学院生は次の二つのグループに分けることができます。一つは日本語教師として経験を積んできた社会人グループで、こちらは全員日本人です。もう一つは日本語教師になることを目指す新卒のグループで、こちらは全員留学生です。
社会人である日本人グループは、自分の日本語教師としての経験に基づいた問題意識を明確に持っていて、それを解決することを研究課題とします。たとえば、外国籍の高校生に日本語を教える人は、外国籍の高校生たちの母語の力に注目し、彼らが母語ですでに身につけている認知能力や考える力を日本語の習得に活かすことを実証しようとします。
一方、留学生グループは、教師としての経験がないので、問題意識は自分の日本語習得に向きます。つまり、自分が日本語を習得する過程で苦労した文法項目(たとえば、複合動詞の習得、自動詞と他動詞の使い分け、終助詞の習得など)に注目し、どうすれば日本語学習者がそれらの項目を少しでも効果的に学べるかを探ろうとします。一つだけ例をあげて、みなさんにも一緒に考えていただきたいと思います。次の〇印の終助詞「ね」は正しいのですが、×印はなぜ間違いなのでしょうか。「ね」にはどんな意味機能があって、どんな時に使って、どんな時には使えないのでしょうか。
〇 A:今日はいい天気ですね。
B:そうですね。
〇 A:ちょっと郵便局に行ってきますね。
B:うん、わかった。気をつけて。
× A:お国はどちらですか。
B:私は韓国人ですね。
ここでは答は明かしませんが、日本語には学習者が習得に苦労する文法項目がいくつもあります。こうした文法項目の規則を探ること自体も面白いのですが、その複雑な規則を学習者がどのように身につけていくのかは不思議に満ちていて、ダイナミックな研究課題です。
(YO)