授業紹介~創作A(エッセイ・シナリオ)~

<授業紹介>
未来を切り開く発想力・創造力育成のための「創作論」、
それを私は「クリエイティブ・レッスン」と称し、
創造力育成の魅力的トレーニングにチャレンジしています。
レッスンの特徴は「ワクワク楽しく、頭はクタクタ」。
それでは「クリエイティブ・レッスン=創作論」冒険のスタートです。
「どこにもないものを創りたい」学生たちの情熱・モチベーション・
創造的な野心、それをコアに検証実験に挑戦しているのが、
この「クリエイティブ・レッスン=創作論」。
ただこの「クリエイティブになるための思考ツール」というのが難題。
現状の教育システムには存在しないし、
私自身「どこにもない新しいもの」を創り出す方法を教わった経験はないし、
規則もメソッドも、ルールもない。だからこそ、とてつもなくスリリングなのです。
何が起きるかわからないからこそ、「やってみなければわからない」。
つくりながら考えていけば、見えなかったものに出会い、気づくはず。
状況に変化が起きれば、作戦・戦略を変えればよい。
クリエイティブなもの創りの原動力は、「方法」であって、
「才能」ではないからです。柔軟な発想で対処できる「筋力」を磨けば、
ステキなモノは必ず生まれる。そんな「ワクワク・ドキドキ」の授業は、
まずは出会いと交流の場つくり「ウォーミング・アップ」から
毎時間スタートします。

ウォーミング・アップ一つ目は「世界に一つの名刺つくり」。
初めて人と出会うときのお決まりは「自己紹介」。
ところが、大抵の自己紹介はワンパターンで印象に残らない。
フツーにあるモノに、「新しさ」と「面白さ」のスパイスを加えることができたなら、
そこで思いついたのが「世界に一つの名刺つくり」。
私らしさをギュッと凝縮した個性あふれる自分だけの名刺つくりは、
三つの空欄を埋めるところからスタートです。
私は(  )が好きです。私は実は(  )です。私はいつも(  )です。
この三つの空欄を考え、私らしさを表現した名刺。
つづいて、インプロゲームでカラダと心をほぐし、
「面白い」を生み出すクリエイティブ・テストにチャレンジ。
毎回ウォーミングアップの素材を変えることで、「ワクワク・ドキドキ」
の創出を目指します。

メインワーク:<未来へのストーリー>
毎回ミッションとしてメインワークを用意しますが、本格的な執筆活動がスタートしたのは6月。
はじめは「リレー物語」。物語の始まりは同じでも、人それぞれに展開していく新たな物語。
五分後に隣の人からパスされた物語を、響き、つなげ、広げていくなかで、
1人では決して思いつかないストーリー展開に皆が夢中になっていきます。
「ジャズの即興を体感したような気がする」そんなコメントに私はワクワク。
さらに「アイディア」をゆさぶるために、「ショート・ショート」に挑戦。
思いつく名詞を浮かべること、そこから絞った一つのタームから、
さらに連想を広げていくこと、その連想のワードと最初の名詞をドッキング、
不思議なワードつくりのステップで生まれた言葉がショート・ショ―トの素材。
<「面白い」と思う気持ちが私の背中をグイグイと押し続けてくれました。>
とコメントにあるようなステキな「ショート・ショート」を経て、
いろいろな視点から世界を眺めるワークが続きます。
「多様な視点で世界をながめる」と言っても素材は「浦島太郎」
そう、NHKで大人をも夢中にさせた「浦島太郎裁判」を実践することに挑戦。
裁判官・検察官・弁護士そして証人カメ、浦島太郎・乙姫と、
役になった学生は本気で語りはじめます。裁判員になった仲間たちも
メモを片手に必死で参加。評決のためのディスカッションは、ヒートアップ。
<たかが昔話、されど昔話、こんなに私たちを刺激するなんて、思ってもいませんでした。>
<立場が変わると、視点が変わると見える風景が変わります>
そんなコメントを受け、7月4日の挑戦ワークが一人称で語る昔話。

「それは誰のまなざしか」
授業の最初を少しばかり実況中継してみましょう。


私は語ります。
「もし、あの童話の主人公が、昔話の主人公が、自らの口で語ったなら、
どんな物語が生まれるでしょう。さあ、挑戦です。みなさんが、
昔話・童話の主人公になりきって、みなさんの目線で物語を語りなおし、
リメイクしていただきたいのです。視点が変われば、おのずと
浮かび上がるのは、主人公の心のうち、イマジネーションをとばし、
ひろげ、オリジナルな主人公の「心の声」を創り上げてみましょう。」
「えっ~難しい、だってお話がもうあるのに~
先生例えば、どんな感じですか」と学生。
私は答えます。「例えば 浦島太郎が語る<浦島太郎>…乙姫様のごちそうに、
鯛やヒラメの舞い踊り、ただ珍しく、おもしろく、月日のたつのも夢のうち・・
でも正直なところ、おいらはもう竜宮城にあきちゃった。
どうしても故郷に帰りたいんだよう・・・」
「シンデレラが語る<シンデレラ>…そのおばあさんは、私の前で言いました。
「さっ、めをつぶってごらん。
サラガドゥラ メチカブラ ビビディ・バビディ・ブー うたえ 踊れ 楽しく
ビビディ・バビディ・ブーいいよ、ゆっくり目をあげてごらん・・」
私はびっくりしました。かがみにうつっているのは誰?ステキなドレスに
キラキラのティアラ・・・ これ・・本当に私?」
どのお話の主人公になろうかと、学生たちのリサーチがスタート。
決めるや否や一斉にがんがん書き始めます。90分の授業が終了したとき、
そこには35の新たな「昔話」が誕生です。

ほんの少しご紹介しましょう。
「お母さんブタが語る<三匹の子豚>」
「こんなはずじゃなかった」
私はたまにふとそう思います。そして、自分の子どもを思い出します。
私があの時、正しい選択をしていれば誰も失わずに済んだのかもしれないと。
あれは一年前のこと、夫に先立たれた私は女で一つで」

「オオカミが語る<赤ずきん>」
赤と言えば、りんご、赤ワイン、肉、血液…
全部おれのすきなもの、だから、はじめて君をみたとき、一瞬で虜に
なっちまったんだ。真っ白な肌を、どこまでも真っ赤な頭巾で包んだ女の子。
どうしたら、君のそばに近づけるんだろう・・」
「笛吹男が語る<ハーメルンの笛吹>」
「君の持つ笛の音はいつも正しい音をしているね」そういってくれた人がいた。
「どういうこと?」目で訴えた僕に、その人は続きを教えてくれた。
それなのに、今、どうしてもその続きが思い出せない。
目の前でおぼれ死んでいくネズミを見ながら、どうして、
こんなくだらないことを思い出してるんだろう、苦笑した・・

「グッとくる、そう、グッとくる本物をつくるためには、
いろんなモノやコトを体験することが必要だとわかりました」
学生たちのコメントが私背中を押してくれます。

新しい「ワクワク」「面白さ」を創造するクリエイティブ・レッスン、
エネルギーを注げる「テーマ」「素材」「仕掛け」への冒険はこれからも続きます。

〈AO〉