授業風景「中古文学ゼミ」源氏絵貼交屏風

〈授業風景〉

令和最初の年末に、図書館で大型古典作品として購入された六曲一双の「源氏絵貼交屏風」を観覧し、王朝の雅な世界に魅せられました。屏風には豪華な金地に小型源氏絵(約15×13cm)四枚と五枚を交互に配して、六曲一双で、ちょうど『源氏物語』五十四帖から各一図、金銀泥彩色画面の源氏絵五十四枚が貼られています。
このような小画面源氏絵屏風は多くの場合、物語の順序を追って貼り付けられるが、本図書館の屏風は、物語の順に配される場合とそうでない場合があります。例えば、右隻第一扇はまさに「桐壷」「帚木」「空蝉」「夕顔」と並べられていますが、第二扇も「若紫」「末摘花」「紅葉賀」「花宴」「葵」の順につづくはずですが、「若紫」と「紅葉賀」の間に「末摘花」の代りに、「玉鬘」衣配りの場面が挿入されています。また、第四扇には「匂兵部卿」「紅梅」「竹河」、いわゆる「匂宮」三帖が挟まれており、第五扇と第六扇には殆ど宇治十帖で占められているなど、興味深い場面配置を見せています。
五十四帖にも及ぶ長大な物語のなかから、画家がどの場面を選び、文字による情景描写がどのように視覚化されたのか、画面構成と人物描写はもちろん、屏風における場面配置の意図にも画家の様々な思いが込められているはずです。その思いを読み解くのが中古文学ゼミ最大の楽しみとなっています。
(S.H)

中古文学ゼミでは、各自源氏絵を一場面取り上げ、描かれているものを読み解く研究を行っています。まず場面に該当する原文を探し出して精読し、その上で源氏絵の解釈に移ります。源氏絵に描かれているものは本文で語られていることと全て一致するわけではありません。本文に描写があるのに絵に描かれていないもの、という問題がゼミ内で多数ありました。結論から言うと、絵師がわざと描かなかったという解釈に至ったのですが、なぜ描かなかったかを考える時間はとても充実していました。当時の人々にとっては場面を見ればわかることや、暗示させるもののみが描かれていたことに気付いた時、あらためて源氏物語の情趣と源氏絵の奥深さを実感しました。(T.I)

絵を通しての研究は、本文から研究していくよりもその場面においての重要な事柄が見えやすいところがあり、研究をしていて大変面白く感じました。また、同じ場面を描いた源氏絵と比べてみると、人物の配置が左右逆にするなど構図が違うものや、描かれている花の種類が異なったりするところからは、描き手の源氏物語に対する解釈の違いなどが読み取れるところも大変興味深く感じました。大学の図書館で、実際に私達の課題であった屏風絵も見ることができたのは、大変貴重な機会であったと共に、絵の貼り方、貼られている順番について考えることができ、より深い学びへと繋がりました。(H.N)