高校生や大学生にお薦めの本 2冊目

こんにちは、松田忍です。

高校生や大学生にお薦めの本、2冊目です!

ルイス・ダートネル著・東郷えりか訳『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』(河出書房新社、2015年)を紹介します。

「僕らの知っていた世界は終わりを遂げた。

格別に強毒型の鳥インフルエンザがついに異種間の障壁を越えて人間の宿主に取りつくことに成功したか、あるいは生物テロ行為で意図的に放出されたのかもしれない。都市の人口密度が高く、大陸をまたぐ空の旅が盛んな現代においては、感染症は破壊力をもってたちまち拡散する。そのため効力のある予防接種を施す間もなく、検疫体制さえ敷かれる前に地球の人口の大多数を死に至らしめたのだ。」(7ページ)

こんな出だしからこの本は始まります。そして次のように続くのです。

「僕らの知っていた世界は終わりを遂げた。

生存者が自分の置かれた窮状―それまで彼らの暮らしを支えていたインフラストラクチャー全体の崩壊―を受け入れたあと、廃墟から立ちあがって長期にわたり確実に生き延びようとした場合、彼らに何ができるだろうか?可能な限り早く復興するには、どんな知識が必要となるのか?

本書は生存者のための手引き書だ。」(8ページ)

人類社会崩壊後のサバイバルを思考実験することによって、私たちが生きる「この世界」がいかに多くの学知や技術によって、精緻に組み立てられ、絶妙のバランスを保ちながら成り立っているかを考えさせてくれる本です。

また一方で、この本からは文明崩壊リスクを避けるための多くの予防線が張り巡らされていることを知ることもできます。

たとえばみなさんは種子バンクってご存じですか?以下のように書かれていますよ。

「種子バンクは世界各地に数百はあり、後世のために生物の多様性を守りつづけている。その最大のバンクは、ロンドンのすぐ郊外にあるウエストサセックス州のミレニアム・シード・バンクだ。ここには何十億もの種子が、核爆弾にも耐える地下複数階の倉庫に格納されており、大破局後には不可欠となる図書館の役割をはたす。」

現在に至るまで受け継がれてきた命は動物だけではなく、植物も含まれます。そのなかには、私たちの食糧となる貴重な作物の遺伝子もあるわけです。そうした生物の多様性は、一度失われたら二度と復活することはありません。そうした命を人知れず守り続けている人がいる事実に深く感動させられますね。

考察好きな人、SF好きな人、人類の未来を考えたい人(?)、いろいろな人にお薦めの本です!

話は変わりますが、一度失われたら不可逆的に永久に失われてしまうものは、命だけではありません。歴史史料や文化財など私たち歴文のメンバーが大事に考えているものもその1つです。「1点しか存在しない物」と「コピー可能な物」の価値は全く違う次元にあります。1点物に対する愛惜の情を養うことが高等教育の役割の一つなのかななどとも思いました。