渡邊先生のご専攻は臨床心理学で、中でも非行臨床がご専門です。
先生のご経歴を教えてください
30年近く法務省矯正局管轄の少年鑑別所で働いていました。途中、法務総合研究所で、6年間、犯罪白書の作成や研究活動を行っていました。
研究の手法・アプローチを教えてください
目の前の少年の心をとらえるのですが、そのとらえ方には、心理検査や面接を用います。
そのほかに、少年が作成した絵や作文、少年の家庭環境に関する情報などの資料がたくさんあり、それを見たり読んだりもします。これらを集約して少年の心をとらえるのです。
つまり、「言葉を通して心をとらえる」というのが基本にあります。この場合の言葉とは、話し言葉である「面接」と、書き言葉である「作文」ですね。それから生活史もそうです。少年が過去のことを自分の言葉で語るのですから。
先生が研究されている「直観」とはどういったものですか?
言葉に関して言うとわかりやすくなります。
ふつう、心理学では事実関係を重視します。ゆえに、言葉もそのレベルの意味で捉える。それが基本にあると思います。
でもそれだと肝心の少年の心を伝えられない部分があります。普通の日常的に使うレベルである「意味A」と、もっと深いレベルでの「意味B」がある。この意味Bが重要なのです。これが、直観のポイントです。
直観とは、「心のレベルの表層の裏側にあるもの、文章を支えている概念の実態」なのです。単なる意味ではありません。
私は、これを面接でも使います。聴いている時も表面的な意味を理解するだけでなく、その喋っている奥にあるものも同時に見えてなくてはならない。
このような考え方は書き言葉については、すでにあります。文学の方法です。字面だけを追っても作家の心は見えてきませんから。
面接のような話し言葉に対してもこうした文学的な方法が、経験上、有効だと気づきました。それをある時期に「直観」と表しました。
現象学でいうところの「直観」とつながっているのだということに気づいたのです。
▶教職員紹介:渡邊佳明先生・後編