2021年度 方法論「心理実験法実習B」:学会発表報告

心理実験法実習は、その名の通り心理学実験を実習する授業で3年生を対象にしています。

そのうち、心理実験法実習Bは、「社会心理学」に関わる心理学実験を実習しています。知覚系の実験と異なり、社会心理学領域では自己認識対人関係を扱うことがあるので、倫理的配慮の重要性がより高くなります。その点も考慮しながら実習を進めています。

目に見えない「心」を実験により明らかにし
研究としてまとめていきます

心理実験法実習Bでは、以下に示す2種類の実験を行います。

直接的追試

関心のある先行研究の手続きを可能な限り忠実に実施して先行研究と同様の結果が得られるかを確認する実験です。

直接的追試を通じて、統制(control)交絡(confound)排除など、心理学実験が常に留意している工夫を習得します。また、科学では再現性(replicability)が重要になることも学びます。

テーマ設定型

自分たちでテーマを設定し、教員と相談しながら実験計画立案、実施、分析を行う実験です。

直接的追試で学んだ手法、ノウハウを活かして進めていきます。実験計画の立案はとても頭を悩ませる作業で、心理学の理論を参照し精緻な予測を立てる必要があります。

さらには、その予測を検証できる実験手続きを考えなければなりません。国内外問わず先行研究を読み込む作業が求められます。

 

今年度の直接的追試は、幸福感評価に関わるDiener, Wirtz, & Oishi (2001)の研究を追試しました。この追試は前年度の実習でも実施したのですが、先行研究を支持しない結果でした。

今年度の実習では先行研究により忠実に実施し、先行研究を支持する結果を得ました。年度による追試結果の違いを考察し、その成果を日本心理学会で発表しました。

藤島喜嗣・石井萌波・白石まどか・宮本祐里 (2021). 結末情報の付加が人生幸福度評価に及ぼす影響:異なる要因配置によるDiener, Wirtz, & Oishi (2001)の追試 日本心理学会第85回大会 ポスター発表

自分たちで立案する実験については、Krueger & Clement(1994)を参考にし、帰納推論に関わる研究を実施しました。この昨今の問題意識から感染症感染可能性推測に関する研究を実施しました。残念ながら予測と異なる結果が得られたのですが、興味深い結果でした。

そこで、急遽その成果を日本グループ・ダイナミックス学会で発表することとしました。

藤島喜嗣・石井萌波・白石まどか・宮本祐里 (2021). 感染可能性判断に対する同一結果観測の影響 日本グループ・ダイナミックス学会第67回大会 ポスター発表

学会発表は学会正会員でなければできないので第一発表者が教員になっていますが、第二発表者以降は心理実験法実習Bを受講した心理学科生です。学部生が学会発表に名を連ねるのは珍しいことですが、それが実現したのは、受講生が意欲的に取り組んだからです

この実習が終わったら次は卒業論文です。卒業論文は、基本自分ひとりで研究立案、実施、分析を行います。この実習で学んだことを活かして充実した研究にしてほしいと思います。

藤島 喜嗣


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