昭和女子大学では最先端の研究を実践している学外の先生を招いた「特殊研究講座」を各学科ごとに開催しています。
心理学科では今年度10/15(土)に国立障害者リハビリテーションセンター研究所 脳機能系障害研究部 研究員の井手 正和先生をお招きし,「発達障害の脳科学」をテーマにご講演いただきました。
講師:井手 正和先生について
井手先生は実験心理学(experimental psychology),認知神経科学(cognitive neuroscience)がご専門で,発達障害における
- 感覚過敏および感覚鈍麻といった感覚処理障害(Sensory Processing Disorder)
- 発達性協調運動症(Developmental coordination disorder:DCD)
の研究をされておられます。
発達障害というと,対人コミュニケーションの問題や不注意の問題ばかりがクローズアップされがちですが,自閉スペクトラム症(ASD)を抱える人の中には,例えばトイレにあるハンドドライヤーなど特定の音などが苦手な聴覚過敏がある人もいます。
また,ボタンと留めたり字を書くといった微細運動や,机に座り姿勢を保ったりダンスや球技をする際に必要な動作である粗大運動を苦手とする人もいます。
井手先生たちの研究グループでは,このような発達障害の方々が抱える症状や困りごとのメカニズムを脳🧠に関する研究を通じて解明しようとされています。
井手先生の研究室HP
▶https://m-ide.jp/
井手先生のTwitter
▶https://twitter.com/IDEmRes?s=20
「発達障害の脳科学」
当日のご講演ではご自身の研究も含め,
- 感覚処理の問題にはGABA(Gamma Amino Butyric Acid:γアミノ酪酸)の濃度低下が関係している
- 運動の問題にもGABA(Gamma Amino Butyric Acid:γアミノ酪酸)の濃度低下が関係している
- 不安が高いほど,2つの異なる刺激のうちどちらが早く生じたかをより短い時間間隔で見分けられる(時間分解能が高い)
などに関して,学部生にも分かりやすく解説いただきました。
また,「脳の機能の違いだけでは,発達障害を抱えている人の困りごとをすべて説明することはできない。社会の中にどんな障壁があるかを考え,多様な特徴をもった人が生きやすい社会を考えていくことが重要」というメッセージもいただきました。
学生の感想
普段聞き慣れない用語もあったにも関わらず,参加した学生の感想からは,
と,最先端の研究に触れることで多様性についての考えを一層深められたようでした。
特殊研究講座を通して,今後も最先端の研究に触れ学びを深められる機会を提供していきます。
井手正和先生のご著書
今回の講演内容に興味を持たれた方は,当日もご紹介いただきました講師の井手正和先生による以下の書籍をぜひお読みください。
『発達障害の人には世界がどう見えるのか』(SBクリエイティブ)
『科学から理解する 自閉スペクトラム症の感覚世界』(金子書房)
(心理学科・岩山)