学科ブログではこれまで学生の研究や教員の論文などをご紹介してきました。
今回は、本学科准教授の榊原良太先生が翻訳に携わった書籍をご紹介します📕
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『科学を否定する人たちーーなぜ否定するのか?我々はいかに向き合うべきか?』(2025)
著:ゲイル・M. シナトラ/バーバラ・K. ホファー、訳:榊原良太、ちとせプレス
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本書の魅力や背景について榊原先生に紙上インタビューを行いました🎤
「科学否定(science denial)」は昔から世界中で見られる現象ですが、コロナ禍をきっかけに社会的にも注目を集めるようになりました。
本書は、「なぜ科学を否定するのか?」という問いについて、主に心理学的な視点から説明を試みるとともに、問題への具体的な解決策を提案する内容となっています。

コロナ禍でマスク着用や陰謀論に関する研究を行ったこと、また以前から取り組んでいる野球に関する研究で、たびたび科学否定的な意見を見聞きしていたことがきっかけです。
科学否定の心理学的なメカニズムをわかりやすく解説している本を探していたところ、原書である「Science Denial: Why It Happens and What to Do About It」を見つけ、ぜひ日本でも多くの方に読んでもらいたいと思い、翻訳することにしました。
2024年12月21ー22日に東北福祉大学で開催された「日本野球学会」第2回大会において、 本学心理学科准教授の榊原良太先生が大会特別賞を受賞しました👏 「ブランコはフランコよりもぶつけられやすい?:外国人打者の名前における濁音と死球・[…]
本書は主にアメリカにおける科学否定の事例が取り上げられていますが、日本では考えられないようなエピソードが数多く紹介されています。
例えば、現職の大統領が地球温暖化を公然と否定していますが、日本で総理大臣が同じことをしたら大変なことになるでしょう。
客観的な事実よりも「いかに人々の感情に訴えかけるか」が重視されるポスト・トゥルース(post-truth)という社会状況が反映された、とても印象的なエピソードでした。
地球温暖化の否定や「地球平面説」(地球は球体ではなく平面であるという主張)のような話を聞くと、科学否定は一部の特殊な人たちの問題だと考えてしまいがちです。
しかし、科学否定は認知バイアスをはじめとした、誰もが持っている心の性質に起因するものであり、それゆえに誰もが陥る可能性のあるものです。
本書を通じて、科学否定の心理学的なメカニズムを知ってもらうだけでなく、科学否定という問題に対して個人や社会に何ができるかを考えてもらえると嬉しいです。