前回投稿しました紀要論文の紹介記事に続き,大学院附属の生活心理研究所が発行している研究紀要の最新号に,2019年度修了生・安西絵里さんの修士論文の研究をまとめたものが掲載されましたので紹介致します。
安西 絵里・今城 周造(2021).統合失調症とうつ病に対する潜在的態度の測定ー評価的条件づけによる偏見低減の試みー 23,43-57.
紀要論文の掲載に際して,田中さんに紀要論文の内容や研究で苦労したことなどをインタビューしました。在学生や心理学専攻への進学を考えている方には,大学院における研究活動の紹介となれば幸いです。
現在は精神障害者生活支援センターで、精神障害のある方が地域の中で自分らしく生活できるように支援を行っています。
GNAT(Go/No-go Association Task)と呼ばれる、偏見などの潜在的態度を測定する手法を用いて、統合失調症とうつ病に対する潜在的な偏見について測定しました。そして、偏見があった場合には「評価的条件づけ」と呼ばれる手続きによって、ポジティブな刺激と関連づけることで偏見を低減することができるのか実験的な検討を行いました。
日本においては、精神障害を抱える人の地域社会への移行がなかなか進まず、病院に長期入院したままになる社会的入院が問題となっています。「症状が落ち着き、退院できる状態になっても、地域で生活することがなぜ難しいのか」。その要因の一つに偏見があるのではないかと思い、関心を持つようになりました。
偏見に関するさまざまな文献に触れるうちに、偏見はないように見えても、当事者の方々から見れば偏見があると感じられるのはなぜなのか知りたいと思い、研究テーマに選びました。
授業や実習と並行しながら、限られた時間の中で実験を実施するというのが大変でした。
しかしながら、統合失調症への評価的条件づけによってうつ病への偏見が低減したという結果から、ある疾患に対する評価的条件づけが、関連する精神疾患にも啓発的な影響をもたらす可能性が示唆されたことは意義深かったです。
これらの結果は、研究をしなければ得ることが出来なかったので、研究をしてよかったと思いました。
大学院では、授業だけではなく実習や研究にも取り組むので、忙しい日々になり大変なこともありますが、心理学をより専門的に学ぶことができます。
長いようであっという間の2年間。大学院でたくさんのことを吸収しながら、充実した2年間を過ごしてほしいなと思います。
(2019年度修了生・安西 絵里)