英語コミュニケーション学科で教えている小西卓三です(コミュニケーション学博士、現在学科長・准教授)。
経営学を学んで社長になるわけでは「ない」。
文学を学んで作家になるわけでは「ない」。
じゃあ、
コミュニケーション学を学んでコミュニケーション上手になるわけでは
「ない」
のか?
コミュニケーション学は、一方では実践を通して、コミュニケーション上手になることを目指しています。私も、Public SpeakingやDebateを教え、高度な英語力・思考力・発信力を育成しています。
その一方で、コミュニケーション学では、コミュニケーション「について」も学びます。社会学が社会のありようを研究するように、(よい・悪い)コミュニケーションとは何なのか、コミュニケーション学という研究は私たちに問いかけます。
実践力の向上を目指し、コミュニケーションについて考える学問、それがコミュニケーション学なのです。
実は古い学問で、古代ギリシアのアリストテレスは『弁論術』を著し、同時代のイソクラテスは「財産交換」なる小論を書いています。いずれでも、「レトリック」、「言論の技術」、「聴衆」、「判断」、「議論」など、現代のコミュニケーション学に連なる、大事なトピックが扱われています。
古典は大事ですね。
「古典を学んで○○になるわけでは『ない』」
とすると、古典学者の先生方にお叱りを受けそうですので、この辺りで。
関連図書
(1) 浅野楢英. 『論証のレトリック:古代ギリシアの言論の技術』. 講談社学術新書, 1996 (ちくま学芸文庫版は2018).
(2) アリストテレス. 『弁論術』. 戸塚七郎訳, 岩波文庫, 1992.
(3) イソクラテス. 「アンティドシス(財産交換).」『イソクラテス 弁論集2』. 小池澄夫訳, 京都大学学術出版会, 2002.
(4) 廣川洋一. 『イソクラテスの修辞学校:西欧的教養の源泉』. 講談社学術新書, 2005.