今年度第2回の特殊研究講座が開催されました

10月8日に福祉社会学科の今年度第2回特殊研究講座が開催されました。今回は、「医療観察制度における地域処遇の現状と課題」というテーマで、横浜保護観察所の武野興司統括社会復帰調整官にお越しいただき、医療観察制度についてお話しいただきました。

ところで、医療観察制度とは何でしょう?

医療観察制度とは

「精神の障害のために善悪の区別がつかないなど,通常の刑事責任を問えない状態で、殺人や放火など重大な他害行為を行った人の社会復帰を促進することを目的として新たに創設された処遇制度」

です。(法務省ホームページより)

うーん、とても難しそうです。制度自体が難しいところもあるかもしれませんが、重大な犯罪行為を行った精神障がいのある人の社会復帰の支援なんてとっても難しそう・・・と思う人もいるかもしれません。

精神障がい自体にもまだまだ世の中に偏見が多く残っており、さらに重大な他害行為を行ったという、言わば二重のハンディのある人への支援ということになります。

この制度で中心的に活躍する「社会復帰調整官」というお仕事は、①精神保健福祉士を中心とした資格所持者で精神障害者の保健及び福祉に関する高い専門的知識があり、②精神保健福祉に関する業務経験が8年以上がある、がなれる条件となっています。大学を卒業して、精神保健福祉士の資格を取ったとしてもすぐになれる職種ではありません。

それでも、武野先生は、仮想の事例などを使って、社会復帰調整官がどのように活動を行い、重大な他害行為を行った精神障がいのある人を社会復帰に導くのか、大変わかりやすくお話ししていただきました。聴講した学生たちも真剣に聞き入っていました。

この制度の対象である精神障がいの方が利用する指定医療機関が全ての都道府県にあるわけではなく、そのサポートのために広域で出張することもあったり、他害行為を行った精神障がいのある方を受け入れることをためらう福祉施設への調整をしたり、と社会復帰調整官の仕事にはもちろん苦労もあるそうです。ただし、だからこそ、専門性をもって行われるべき仕事であることもわかりました。

また、「福祉」というと、高齢者、障がい者、児童分野といったイメージがありますが、最近は今回の講演内容である司法分野や就労支援など、さらに福祉の専門職が活躍する分野が拡がっていることを感じた講演でした。

武野先生、ありがとうございました。