日本の伝統工芸を今も引き継ぐ匠の町・谷中で行われた第3回目の東京社会調査研修は、職人さん達の温かいお人柄、さりげないお心遣いと熱い本物の魂に触れる一日となりました。
最初にお話を伺ったのは、提灯のほかに、太鼓、神輿や石碑など様々なものに江戸文字といわれる字体や家紋を書き入れる手描提灯職人・小林静山堂四代目の小林豊孝さんです。とても気さくな方で、提灯製作と文字入れの過程について説明された際に「字を書くことは絵を描くようだ」という印象深い言葉を聞かせていただいただけでなく、ご自身のこれまでの歩みや生き方と地元谷中への思いもたくさん語っていただき、大いに有意義な時間を過ごさせていただきました。
次にお訪ねしたのは、纏(まとい)の製作と補修以外に、山車人形、菊人形などの頭・手足・小道具もお作りになる人形師・五代目面六田口人形店の岡本史雄さんご夫妻とご子息です。大変明るいご家族で、ユーモアを交えながら纏と人形の製作工程を事細かに教えてくださり、またお仕事に対するこだわりと姿勢から(「商売と趣味は違う!」という言葉が忘れられません)ご夫妻の出会いやアメリカでの展示にまつわるエピソードまでの面白いトークも、仕事や人生についていろいろ考えさせられました。
今回の社会調査研修を通じて、谷中というコミュニティの奥深さを知ることができたのみならず、これをきっかけに後継者が少なくなっているといわれる職人さん達の素晴らしい世界をより多くの人に伝えていかなければと強く感じました。
(記事:現代3年高井・夏野)