台北に1週間の「プチ留学」

〈日文便り〉

今回は夏休み中に試みた中国語学習についてお話します。
中国語はずいぶん前から少しずつ学んでいるのですが、
実践の機会が少なくて上達しないので、思い切って台北に1週間だけの「プチ留学」をしました。

淡江大学が開講している夏期プログラムに参加したのですが、
午前中は中国語の授業、午後は文化プログラムという構成でした。

〈写真1〉 中国語教室

写真1は中国語の授業風景ですが、
「学校から書店までどうやって行きますか」
のような道案内の会話を学んだ時のホワイトボードです。
私は日本語教育が専門ですから、
同じような内容の日本語の初級授業を以前はずいぶんやったことがあり、
自分が以前は教師としてやったことを今度は学習者の席で学ぶという興味深い体験でした。

午後の文化プログラムでは、さまざまな中華文化を自分の目で、手で体験するというものでした。
たとえば中華風組紐で作る吉祥結び(写真2)、

(写真2)組紐

「蝶豆花」という花の煮汁を使った染色(写真3)、

(写真3)染色

折紙(写真4)など、伝統工芸を体験しながら背景にある中華文化を学んだり、

(写真4)折紙

龍山寺(写真5)の見学で外に出かけることもありました。

(写真5)龍山寺

日本文化の多くは中国から伝わっていることもあり、
組紐、染色、折紙にしてもお寺見学にしても、
日本にも類似のものがあって珍しいものではないのですが、
先生が中国語でしてくださる説明を理解するには、既有知識による推測が大いに役に立ちました。

中国語の授業や文化プログラムでのクラスメイトは、
日本人のほかにベトナム人、インドネシア人、タイ人などですが、
こんな機会でもなければ出会わなかったような方たちとの出会いがあったのも楽しかったです。
私は言語教育が専門なので、以前から思っていることですが、
外国語を学ぶのに、その言語のネイティブ・スピーカーと会話するのはもちろん有益ですが、
学習者同士でその言語を使って会話するのもとてもいい練習になります。
初級者にとっては、(プロの言語教師ではなく)一般のネイティブ・スピーカーとの会話はハードルが高く、うまく話せない徒労感を感じてしまいますが、
相手が自分と同様のノン・ネイティブ・スピーカーであれば、
話す速度もゆっくりだし、会話の内容も単純なので、緊張せずに会話に加わることができます。

実は、私が中国語を学んでいるのは、中国語ができるようになりたいという理由だけではなく、
外国語を学ぶとはどういうことなのか、人はどのように言語ができるようになっていくのか、
私自身の研究者としてのテーマを自ら経験したり、観察したりしてみたいという理由も大きいのです。
そういう意味では、今回の「プチ留学」は、実り多い1週間でした。

(YO)