特別授業 昭和女子大学×フィレンツェ大学Exchange day―江戸川乱歩「白髪鬼」をめぐって [2021年06月08日(火)]

<授業風景>

フィレンツェ大学(イタリア)のディエゴ・クチネッリ先生との共催で、
COIL型授業を5月12日(水)にzoomで行った。
COILとはCollaborative Online International Learningの略であり、今回の日伊をつなぐオンライン授業は、従来の留学による国際化に加え、キャンパスの国際化を一層推進するグローバル教育の新たな取り組みである。

日本の大学での留学経験も豊富で、現在はフィレンツェ大学において日本文学を専門に研究されているディエゴ先生は、翻訳家の顔も持ち、日本文学のイタリア語版を多数出版されている。

今回は、その一つである江戸川乱歩「白髪鬼」(1931年:イタリアでの出版は2020年)を題材に、
昭和女子大学とフィレンツェ大学の学生との間で議論を行った。

具体的には、山田の担当する3、4年生対象の授業(日本文学Ⅱ(近代A) 中・短編小説を読む)の学生と、ディエゴ先生の担当する大学院の授業(イタリアで日本の文芸作品を翻訳する)の院生との交流であり、
5つに分けられた場面ごとのグループで意見を出し合った後、その内容について順に発表した。

授業の後半では、受講生同士で為された議論を受け、ディエゴ先生が「白髪鬼」の解説を行った。
作品の読解だけでなく、イタリアでの日本文学の受容状況や、ディエゴ先生が翻訳する際に心がけていることなど、話題は多岐にわたり、受講生同士の議論も含め、密度の濃い90分となった。
受講生も強く関心を惹かれたようであり、授業後には興味深い声も多く聞かれたため、一部を紹介したい。

両国の学生間での議論については、次のような感想が上がった。

イタリアの学生さんの意見には、聴覚的表現が多いという意見があり、内容だけでなく細かな表現まで注目していて、読みの深さに驚いた。

日本の学生は江戸川乱歩の文体に注目した人が多かったが、Dさんは人物を客観的に考察しており、双方の視点からとても面白い議論ができました。

イタリアの大学生と合同で授業を行うことはなかなかない機会だと思うので、とても貴重な体験ができました。まず、グループワークではフィレンツェ大学の学生さんの意見を元に話し合いましたが、前回の授業で私達があげた考えと共通する部分もあれば、なるほど! と思わされるような新鮮な考えもありました。

私は普段、このような場で学ぶ機会がほとんどないので、とても貴重な経験になりました。日本の文学は日本だけのものとして読んでいましたが、日本文化の一つとして、世界に広まっていっているのだなと実感しました。外国の方と今回のようにグループワークを通して意見交換をする機会はZOOMを使用したオンライン授業ならではのことであるし、オンライン授業であるからこそ実現することが出来たと思います。また、このような機会が授業内でも授業外でもあると面白いと思います。

 

ディエゴ先生による講義については、次のような感想が上がった。

翻訳する際に、翻訳する国の言語を学ぶだけではなく、その当時の自国の言語についても精通していないと正しく訳せない、また訳すときに小説になるようにニュアンスを確認しなくてはならないというお話が印象的だった。一作の本が海を渡るという事は、私が想像していたよりも多くの、目に見えない苦労があることに気が付いた。

ディエゴ先生の講義は大変興味深い内容であり、特に翻訳までのプロセスは私が想像していたものよりも何倍もの手間暇がかかっていること、沢山の時間をかけて作品をイタリアの人に届けているということに、とても感動しました。近代文学だけではなく、最近の作品も読まれていることにも驚きました。

ディエゴ先生が授業内でおっしゃっていた「一番初めに直訳をして、作品にある語を理解する」と言っていたところが印象に残りました。語というものは単純に「内容を伝えるためのパーツ」であるとともに「ある特定の雰囲気を感じさせるためのもの」であることも改めて認識しました。

翻訳はただ自言語に訳すだけではなく、原本が持つ雰囲気や作家の文体まで意識して取り組まなければならないと知り、想像以上に大変なものだと思った。ディエゴ先生のお話にあった、「乱歩が作った文の枠組みを意識して言葉を埋めていく」という方法が、独特の感覚で興味深く感じた。また、和歌や俳句も訳されているというお話があったが、五七五または五七五七七のリズムや、掛詞などはどのように表現されるのか気になった。

上記からも窺えるように、受講者が大いに刺激を受ける貴重な機会となった。
今後もこのような場を積極的に設けていきたい。

(山田夏樹)