2021年度 紀要論文紹介・1:性的マイノリティの自己受容とカミングアウトの関連性の検討

今回,大学院附属の生活心理研究所が発行している研究紀要の最新号に,2019年度修了生・田中みどりさんの修士論文の研究をまとめたものが掲載されました。

田中 みどり・今城 周造(2021). 性的マイノリティの自己受容とカミングアウトの関連性の検討 昭和女子大学生活心理研究所紀要 23, 59-74.

紀要論文の掲載に際して,田中さんに紀要論文の内容や研究で苦労したことなどをインタビューしました。在学生や心理学専攻への進学を考えている方には,大学院における研究活動の紹介となれば幸いです。

2019年度の修論発表会の風景

Q1.現在のお仕事を教えてください。

現在は、児童発達支援放課後等デイサービスで、発達が気になるお子さんや発達障がいをお持ちのお子さんの療育に携わっています。

また、今年度から教育相談室の就学相談で知能検査(田中ビネーⅤやWISC-Ⅳ)の実施も担当しています。

 

Q2.紀要論文の内容(研究テーマ)を教えてください。

性的マイノリティ当事者が、カミングアウト(自分の性的指向などを他者に打ち明けること)をできることは、「自分が性的マイノリティであることをどの程度受け入れることができているか=自己受容」と関連があるのではないかと仮説を立てました。

そして、「カミングアウトを誰にどの程度①行っているか、②できると思っているか、③しようと思っているか」ということや、「カミングアウトそのものをどのようにとらえているか」ということと、「自己受容」の関連を調査しました。

カミングアウトに関しては、カミングアウト自体は可能だがあえてしようとは思わない場合も検討する必要があったため、新規に質問紙を作成しました。

 

Q3.研究テーマを決めた理由について教えてください。

LGBTへの関心が、一段と高まっている現在でも、性的マイノリティの方たちが自身の性自認や性的指向に関することで、誰にも相談できずに悩んでいたり、学校や職場で不適応を起こしていたりする話をよく耳にしていたので、このテーマで研究することを選択しました。

「他者に打ち明けられない」ことについて、どのような要因が背景にあるのか明らかにすることで、当事者の置かれている現状や心理的な状態に寄り添っていくことができるのではないかと考えたからです。

 

Q4.研究を行う上で大変だったこと,研究をして良かったと思うことを教えてください。

研究を行う上で大変だったことは、個人情報の取り扱いや倫理的配慮の点に特に気を遣う必要があったことです。特にこのようなことに気を使わなければいけない研究テーマだったために、試行錯誤を繰り返しました。

しかし、大変だった一方で、調査にご協力いただくすべての方が嫌な思いをすることなく安心して回答いただけるようにするにはどうすればよいかについて向き合うことができたということが、研究をして良かったことだと思います。研究を行うことで、今後の臨床活動においても気をつけなければならないことを学ぶ機会を得ることができたと実感しました。

 

Q5.最後にこれから大学院を目指す方に一言お願いします。

大学院の生活では、先生方からご指導いただいたり、仲間と支えあったりする中で、たくさんのことを学び、感じることができました。

大学院を修了して、社会人2年目となりましたが、「大学院のときに、先生がおっしゃっていたことはこういうことだったのか!」とハッとする瞬間がたくさんあります。

研究は自分で進めていかなければならないため、道のりを長く感じてしまうことも多々ありました。しかし、研究を通じて得たことは臨床活動においても役立つと感じています。これから大学院進学を目指される皆さんには、ぜひ自分の研究したいことに突き進んでいっていただきたいと思います!

(2019年度修了生 田中 みどり)


同じ紀要に卒業論文をまとめた卒業生のインタビューを学科ブログで報告しています。