今年度も大学院附属の生活心理研究所が発行している研究紀要が発刊され,2020年度修了生・三輪可那子さんが行った修士論文の研究をまとめたものが掲載されました。
三輪 可那子・藤崎 春代(2022)母親の養育態度と娘が母親に向ける感情・認知の関連 ―思春期から青年期にかけての変化に注目して― 生活心理研究所紀要,24,99 – 109.
掲載に際し,三輪さんに紀要論文の内容や研究で苦労したことなどをインタビューしました。
在学生や心理学専攻への進学を考えている方にとって,大学院における研究活動の紹介になれば幸いです💡
現在のお仕事を教えてください
児童精神科と精神科のあるクリニックで働いています。
WISC※1やP-Fスタディ※2といった心理検査をとったり、カウンセリングやプレイセラピー(遊戯療法)※3を行っています。
※1 ウェクスラー児童用知能検査(Wechsler Intelligence Scale for Children)。子どもの知的機能を包括的に捉える知能検査の1つ。
※2 絵画欲求不満テスト(Picture Frustration Study )。欲求不満場面が描かれた絵に対する反応を分析することで,性格傾向を把握する投映法検査の1つ。
※3 遊びを通じて行う子どもを対象とした心理療法。心理療法は一般的には言葉を用いて行うが、子どもの場合は自分の気持ちを言葉で表現することが十分にできない場合があるため、遊びを通じたやり取りを行う。
紀要論文の内容(研究テーマ)を教えてください
母親の養育態度※4のタイプ別に見られる娘が母親に向ける感情や認知の違いをテーマとしています。
また、自分を確立しようともがいている思春期から、社会に出始めて自分らしさを磨き始めた青年期にかけての母親への感情や認知が変化も今回の研究テーマとしています。
※4 親から子どもへの関わり方。
研究テーマはどのようにして決めましたか?
学部生の頃から母娘関係に関心があり、大学院でも母娘関係を題材にしたいと考えました。母娘関係において一番に重視したのが母親の養育態度だったので、養育態度を軸に考えていました。
当初、養育態度と母娘関係の関連について何を研究したいのか自分ではまとまりませんでした。しかし、ゼミの先生に漠然とした印象を率直に伝え話していくなかで、テーマを明確にしていくことができました。
研究を行う上で大変だったこと,研究をして良かったと思うことは何ですか?
研究を行う上で大変だったことは、テーマを決めることです。
自分の中では「母娘関係をやりたい」という気持ちは強かったのですが、そこから具体的に何を研究したいのかという点がなかなか定まりませんでした。
研究して良かったことは、研究したことが今の仕事でも活かされていることです。
自身の研究もそうですが、研究を書く上で読んだ本や論文も実践の中で使えることが多くあります。当時は少し面倒に感じることもありましたが、今はやっていてよかったと思います。
最後にこれから大学院を目指す方に一言お願いします。
心理学の大学院は授業だけでなく、実習や研究も行うので正直とても大変です。
しかし、大学院は学部に比べて人数が少ないため、同期や先生との距離がとても近く、愚痴を言ったり相談をすることもできます。
大変ではありますが、同期や助けてくれる先生方もいらっしゃるので、心理学を専門的に学びたいと思っている方がいたら、ぜひ自分が学びたいと思える大学院に進学できることを願っています。
(2020年度修了生 三輪可那子)