1月24日(水)の「ソーシャルワークの理論と方法」の授業に厚生労働省老健局高齢者支援課の石毛雅之課長補佐を外部講師としてお招きしました。当日は、対面とオンラインのハイブリッドでの授業でした。
今回の授業テーマは、「地域包括ケアシステムとまちづくり~柏市の取組を参考に~」で、冒頭に、日本には100歳以上の方8.6万人おり、そのうちの88%が女性で、今年100歳になられた方が4万人、最高齢の方の年齢は119歳というお話から始まり、日本の少子高齢化の現状を強く印象づけられました。
その後、そうした少子高齢化の進展の中で打ち出されてきた国の様々な政策について、コンパクトにわかりやすくまとめられた資料をもとに概略を説明して頂きました。政策を立案されている立場におられるということもあり、授業のみならず、国家試験対策等にも活用できる貴重な授業資料でした。さすがです!
次に、石毛課長補佐が2年間半にわたって出向されていた千葉県柏市での主な取組みについての紹介がありました。「フレイル予防」、「生活支援体制」、「社会参加」に関する取り組みです。フレイルは、「Frailty(虚弱)」の日本語訳で、 健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下が見られる状態のことを指しますが、適切な治療や予防を行うことで要介護状態に進まずにすむ可能性があると言われていますように、その予防が大切です。
柏市では、柏発の「フレイルチェック」などの周知・啓発活動とともに、電子マネーのWAONと提携して、「かしわフレイル予防ポイント制度」として、運動やスポーツなどの健康づくりや、ボランティアなどの社会参加をすることでポイントがたまる制度を実施しているということでした。
そのほかにも、生活支援体制整備事業として、高齢者の社会参加のあり方として、「いきがい就労」等を実施し、高齢者が支援を受ける側ではなく、生活支援の担い手として社会参加を促している仕組みについて説明して頂きました。
特に、柏市内にある「豊四季台団地」を中心とした取り組みでは、地域住民を主体に、柏市だけでなく、東京大学やUR都市再生機構や柏市社会福祉協議会からなる実行委員会を組織した街づくりと併せて、高齢者の就労・社会参加を促進する取り組みが多様に行われていました。
はじめにも触れたように、人生100年時代を迎える中で、定年退職後の従来の生活と今後の定年後の生活は大きく変わってくると言えます。就労という社会への参加の仕方に加えて、柏市のように、高齢者のニーズあわせた多様な社会参加の仕方(いきがい就労として福祉の現場をはじめとして地域の多様な困りごとの解決、助け合いに参加する)の促進は、高齢者本人の生きがいや介護予防になるだけでなく、現在求められている「地域共生社会の実現」にもつながっていくことでしょう。今回の授業内容は、今後の地域のあり方とそこでの生き方を考える上での大きな示唆になったと思います。
最後に、授業後の学生の感想からは、やはり「フレイル予防」のためのポイント制のことや高齢者の社会参加に関する柏市の取組みに関するアイデアや考え方に高く関心が寄せられてたことがわかりました。それとともに、石毛課長補佐が国(厚労省)の立場と出向先の自治体(柏市)の両方の立場から、事業や政策立案に関する取り組みについて説明をして下さったことから、そうした政策立案や地域づくりの重要性について、改めて関心をもったこともわかりました。
本学科でも年々公務員(福祉職)としての就職が増えています。今日の授業を受けた学生の中から、将来地域づくりに公務員としてかかわる学生が誕生するかもしれません。また、近年では民間企業も福祉分野への参入が増加しています。その意味でも、民間企業に就職することになったとしても今回の学びは役に立つと思いますし、ぜひ福祉を学んだことをあらゆる分野で強みにしていってほしいです。
(北本佳子)