授業紹介「失語症学」

今回は「失語症学」の授業についてご紹介します。

失語とは,大脳の言葉の働きを司る言語中枢が損傷を受けたために一度は正常に獲得された言語機能がうまく働かなくなる状態のことをいいます。原因は,脳梗塞や脳出血などの脳血管障害,交通事故や転倒等による頭部外傷,脳炎,脳腫瘍などです。生まれつき話せない,あるいは精神的なダメージで話せない,といった病態とは異なります。

失語になると,話す障害のみならず,ことばを聴いて理解する能力や文字の読み書きという,ことばのあらゆる側面が障害されます。そのため,障害が重篤な場合は,生活上必要な意思疎通においても重大な障害を及ぼします。

失語の症状は,損傷を受ける脳の部位によって,流暢型,非流暢型,孤立症候群などに分類されるため,適切に病態を理解するためには,大脳に関する正確な知識が必要となります。失語症学では,大脳の機能と仕組みを理解し,脳の各部位の損傷によって,どのようなタイプの言語障害が生じるのか,そのメカニズムについて学びます。また,各種検査の目的,内容,方法を理解し,言語症状を正確に捉えるための技術を学びます。そして,検査結果に基づいた訓練計画の立案,訓練の実践など,言語聴覚士として働くために必要なスキルを身につけます。

失語は,外見からではわからない,目に見えない障害といわれます。学生の皆さまには,本授業を通じて,失語そのものの知識のみならず,失語のある人の日常生活を支えるための方法についても理解を深めてほしいと願っています。