〈暮れゆく秋〉

<日文便り>

文化の日が過ぎ、7日は暦のうえでは早くも立冬である。一日一日が年の瀬に向かってゆくこの十一月は、秋のなかでももっとも味わい深い時節の感がある。

早朝の冷たく透き通った大気、昼下がりの黄金色に輝く陽ざし、夕陽に淡く染まる空、斜陽に照らされた街並み、それらは瞬く間に夜の闇に覆われ光や色を消し去ってゆく……。一年の季節の移り変わりとともに、一日の時の移り変わりにおいても、景色や景色を映し出す光は刻々と変化し、うつろう季節の情趣を感じさせてくれる。兼好が「折節の移り変はるこそ、ものごとにあはれなれ」(『徒然草』第十九段)と述べるように、ものの情趣は季節の移り変わりにこそ身にしみて感じられるものである。

秋は、春に種をまき、暑い夏の盛りに手塩にかけて育てた農作物を収穫する実りの秋でもあり、民間ではさまざまな感謝祭が行われる。宮中祭祀としては、古来陰暦十一月の下の卯の日(三卯のある年は中の卯の日)を新嘗祭として、天皇が新穀を神々に供えて収穫を感謝する祭儀が行われており、昭和二十三年以降は勤労感謝の日として制定されている。

十一月の祭としては、近く酉の市も行われる。今年は一の酉が十一月十一日、二の酉が勤労感謝の祝日二十三日とかさなっており、三の酉が今年はないことから、両日は大勢の参拝者で賑わうことが予想される。

二の酉が終われば、本格的な冬の到来である。うつりゆく秋の風情を味わう日も残り少なく、それだけに晩秋の一日一日のうつりゆきを目や耳や肌で感じながら過ごしていきたい。

霜月や日ごとにうとき菊畑         高浜虚子

月かけて晴れぬく空や酉の市    久保田万太郎

晩秋や風樹の中の一ベンチ     大野林火

山茶花の一輪咲て秋暮れぬ     正岡子規

(ks)