授業紹介「日本文学Ⅰ(近代A)子どもの風景」

<授業風景>

皆さんは10年前の5月17日、どこで何をしていましたか。
例えば昭和女子大学の日本語日本文学科に集う人でも、
その中の同じ学年クラスにいる人でも、ひとりひとり違う答えをするでしょう。
作家も同じです。
皆、異なる子ども時代を体験していますから、作品に描かれる子どもの世界も変わってきます。
この「子どもの風景」は、子どもの登場する作品を取りあげて、時代の影響や作家の体験、
個性がどのように作品世界の〈風景〉を作りあげているのか、味読する授業です。

前期は、①井上靖「グウドル氏の手套」:曾祖父の妾だった女性との土蔵での暮らし ②宮本輝「泥の河」:戦後10年大阪のうどん屋の少年と、男客を相手に生活を営む母子家庭、舟の家の少年との夏の出会いと別れ ③庄野潤三「夕べの雲」:昭和の中流家庭の両親と子どもたちのユーモラスなやりとり 3作品を読んでいます。
成長の過程や、それにともなう喜怒哀楽に触れ、さらにそれらを作家たちがいかに表現しているのかを丁寧に追って、人間なるものを考えていきます。
後期は、①谷崎潤一郎「二人の稚児」②樋口一葉「たけくらべ」③夏目漱石「夢十夜」の「第三夜」を取りあげます。

選んでいる作品にも耳馴染みのないものがあるでしょう。
どんなにすぐれた作品でも、読む人がいなくなれば、廃れてしまいます。
佳作を次の世代に受け継ぐ〈継承者〉になってほしい、私のささやかな願いです。

(笛木美佳)