10/1(土)に行われた日文公開講座「日本語 食うか喰われるか」
今回も引き続き皆様から頂いたご質問にお答えしていきます。
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Q:嶺田先生への質問です。今は関東(特に東京)での言葉が標準語と呼ばれていると思いますが、その「標準」は何を基準にしてのものなのでしょうか。もし中古時代にそのような概念があれば、朝廷のある関西の言葉が標準語とされるのでしょうか?
A:標準語と共通語の違いについては、いろいろ意見もありますので、ここでは私の意見を書きます。標準語は、明治政府ができ、その近代化の過程で「標準語」の必要性が叫ばれました。東京が中心であるため、東京の人が公的場場面で使うことば(東京語)を、公的機関で使用することが推奨されました。言文一致小説の中で使われたり、また大正時代の終わりごろから始まったラジオ放送に受け継がれたりしました。明治のころは「普通語」「通用語」と言われていたらしいのですが、岡倉由三郎が「Standard Language」の訳語として「標準語」を使い、上田万年の「標準語に就きて」が発表され、東京語に基づいた「標準語」の必要性が論じられました。明治政府の標準語化は「方言撲滅」に傾きましたが、一方で、地域の文化の重要性も叫ばれ、標準語化政策は完遂はしませんでした。
国立国語研究所は1951年に地域社会の言語生活調査を行い、全国どこでも通じるようなことばを「全国共通語(略して共通語)」とし、何らかの方法で国として制定された規範的なことばを「標準語」とし、そういう意味での標準語は日本にはまだ存在していない、としています。私も、どこへ行っても通じることばのことを、授業では「共通語」ということばを使っています。あえていえば教科書のことばは「標準語」的でしょうか。
ご質問にあるように、都がどこかで「標準」の考え方は異なると思います。講座でも少し触れましたは、「万葉集」は都のことばではないことばを使った歌は、別立てされています。「標準的」という概念はあったのかもしれません。もし、平安時代の都である京都が、日本の首都であったら、もしかしたら私たちの「共通語」は「京都語」だったかもしれません・・・。(嶺田先生)
Q:「召し上がる」は「めし(飯)」と関係している、というお話がありましたが、「お召し物」の「めし」も関係するのでしょうか。もしくは食べる、着るという日常的な動作に広く使われるようになったのでしょうか。
A:食品を「召し上がる」、着物を「お召しになる」などの「召す」はともにつながります。究極的には「見る」とつながるようなのですが、具体的物理的に動作をそのものずばりで指す代わりに、「対象をこちらの範囲に引き寄せる」といったイメージでしょうか。「召す」には他にも治めたり呼んだり、いろいろな意味で使われますが、直接着たり食べたり、という代わりに「それをこちら側にもってくる」という感じで表現している、と考えるとつながりが見えやすいかと思います。(須永先生)
Q:LINEのように短文テキストから忖度するコミュニケーションで身体情報(文の筆跡、電話の息遣い等)が失われて、個人の識別が難しくなると考えています(←なりすましを見抜けない)。コミュニケーションで日常的にお互いだけが知っている情報以外に、やりとりのムードなどでその人である、とわかる部分はあるのでしょうか(言い回しとか?)
A:仰る通り、メールやLINE、そして現在の様々なプラットフォームによる「文字によるコミュニケーション」では、相手からの情報が限られ、感情的な面だけでなく、それが本人が発信したものであるか確定できない点が心配な点としてあげられるかと思います。
そもそも、ことばがメッセージの伝達上役立ってくれるのは、伝達全体の2割程度といわれています。…ということは対面では8割は非言語的要素(息遣い、表情、手紙であれば筆跡など)に大いに頼っているということになります。
LINEは互いにアカウントを交換する手続きで本人であるかがある程度担保されますが、その他のSNSではなかなかそうはいきませんよね。
2020年代の今、インターネット上の情報の6割には偽情報の危険があると、インターネット情報に詳しい専門家が言っているのを耳にしましたが、まずはURLなどで出所をきちんと見極めることも大切だと思います。
ことばの面では、例えば使用する「語彙」でもだいぶ判断がつくように思います。昔、ある先生に対し「〇〇先生って尖っててかっちょいいよね」という書き込みがあったのを思い出します。当時でさえ「かっちょいい」という若者ことばを使う若者はいなかったことから、ちょっといたたまれない気持ちになりました。書き込みをした方はいわゆる「コーホート語(ある一定の生年の世代が昔若者だったときに使用していたことば。今の若者は使用しない。)」であったことに気づかず、若者になったつもりで書き込んだのだと思います。若者ことばではなくとも「尖ってる」も、当時の若者はあまり使わない表現だったように思います。
「語彙」は本人の興味によって豊富な部分、貧弱な部分が良く出ます。
今回いただいたご質問も、全く匿名ではありますが、頂戴した世代、性別、もしかしたら職業まで、なんとなくわかるような気がするのは、私だけでしょうか。(宮嵜先生)
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質問はまだ続きます。次回もお楽しみに!
(清水)