6月15日(土)特殊研究講座「動物園の動物たちのこころを探る―動物園学入門―」

京都市動物園の田中正之先生に「動物園の動物たちのこころを探る―動物園学入門―」と題した講義をしていただいた。田中先生は動物園に勤務する、日本では大変珍しい心理学者である。京都大学霊長類研究所で長くチンパンジーの研究をなさり、その後動物園にフィールドを移され、この4月から京都市動物園の生き物・学び・研究センターのセンター長として働いていらっしゃるという。

講義では、動物園の歴史から始まり、動物園における研究の意義、そして、先生が実際に動物園でなさっている研究のお話をうかがった。テナガザルやマンドリルといった霊長類が画面上にばらまかれた数字を順番に押していく実験では、彼らの知性に驚かされた。そしてそれ以上に、彼らが親やきょうだいのまねをしながら数字を覚えていくプロセスに、動物たちの複雑で生き生きとしたこころの存在を感じた。また、人工保育のゴリラの赤ちゃんを母親のもとに返すプロジェクトもビデオで紹介していただいたが、動物園の方々の様々な心配りのなか、母子が互いに受け入れ合っていく光景に心を動かされた。

大学の授業では人のこころの勉強が中心なので、動画や写真を用いての動物の心理のお話は大変興味深かった。人の仲間である動物園の動物たちが、私たちと同じこころをもち、家族や仲間と関わりながら暮らしていることを改めて認識した。これからの動物園が、動物たちのこころの理解を深めることができる場となるとともに、動物たちの種族としての生き残りにとって大切な場所として機能し、ますます充実することを期待したい。

文責:松澤正子