留学のすゝめ【森秀樹先生】

留学のすゝめ

人は環境を通して学ぶ。

これは幼児教育だけでなく学校教育でも、さらには生涯学習でも続く、私たちにとって大事な学びです。

そんなことを最近あらためて強く感じています。

実はこの1年間は、8ヶ月以上にわたって入院をすることになってしまいました。そしてまだ入院生活が続いています(2023/01/15現在)。

なんだか歩きづらい、転びやすい状態が続いていて、さらに立ち上がるのが難しくなってしまい、検査をしたところ、脊髄に炎症がおきているということで入院生活がはじまりました。無事に治療も終わって、リハビリだけになると、入院生活を振り返る余裕が出てきました。そうなると周りをみる目が変わってきます。色々なものやことが新しく見えて、そこから沢山の発見が出てきます。

医学生から研修医、専門医まで現場で徒弟的に学び育てていく医師の教育システムは、専門職を育てるとても優れたシステムにみえました。後輩が先輩から学ぶだけでなく、後輩に教えることで先輩の学びにもなります。もちろん時間もかかりますし、課題もありますが、教育分野の専門職もこんなふうに学べると、と思いました。

電子化されたカルテの情報を、その患者に関わる医療スタッフで瞬時に情報共有できる仕組みも素晴らしいです。あっという間に、医師や看護師、リハビリに関わってくれている専門職の方まで、患者の情報が共有されてます。医療を進めていく上でも重要なのですが、患者にとっても、自分に関わってくれているスタッフの皆さんが自分で説明しなくても知ってくれているので、かなり便利ですし、安心感もあります。患者とその家族にも一部情報を共有したり、またまた教育での情報共有にも参考にならないかと思ってしまいます。

医療技術の進化で、様々な検査が数値と画像の情報で結果が出てきます。客観的な評価としては、とても信頼できると患者視点からも納得できますが、反面、それらの情報ばかりが重視されて診察されていないか不安にもなります(決してそうではないと思いますが)。教育データの活用は、教育現場でも今後広まっていきますが、先程の情報共有だけでなく、データをどう活かしていくか、少なくとも子供たちがデータだけで評価されていると感じないようにすることは重要かもしれません。

医療に関わる技術にも驚かされます。これは一部でしかありませんが、MRIなど、体のなかを開けずに外からみる技術には驚かされます。リハビリにもロボット技術で動きをサポートするなど、新しい技術がどんどん導入されています。スタッフの方々は新しい技術を取り入れていくことは大変だと思いますが、患者からすると少しでも今までよりも良い治療をしてもらえると思うと、とても心強いです。これも、教育分野でもと考えてしまいます。

他にも入院中に考えることはたくさんあります。
ふと、この感じはどこかで経験したことがあったような、と考えたときに思い出したのが、今から25年前のボストンでの経験でした。2年半のボストンでの仕事と生活は、色々な学びの機会になりました。英語という言語の学びだけでなく、もちろん専門分野の学びもありますし、アメリカ文化のなかでの学びもあります。そして、新しいものを知るだけでなく、今までのものの見方を変える機会にもなります。私の場合は、日本語や日本文化、日本的仕事などあらためて考える機会にもなりました。

留学のすゝめという今回のタイトルは、新しい環境に身を置いて、環境から学んでいることを意識してみようというお薦めです。異国文化のなかに入っていく海外留学は、その絶好の機会です。それだけでなく新しいアルバイト、大学でのプロジェクトも授業も、どんなことでも、新しい環境のなかでの活動は学びの機会になります。ちょっと留学するつもりで、どこにいてもどんな時でも過ごすことができたらと最近考えています。

環境から学ぶために、もう一つ大事なことは、余裕です。余裕がないと、周りに目がいきません。
そうすると、学びには余裕が1番大切なのかもしれません。

入院で余裕が持てるというのも変な話ですが、この話はまた別の機会に!

*本記事は、決して入院をおすすめしているものではありません

森 秀樹